引き出し不可能な通貨スワップ資金
もし読者の皆さんの名義で38兆ウォン(約2兆9400億円)が預けられた通帳があるのに、「引き出し不可能」と書かれていたらどんな気持ちがするだろうか。ここにそんな通帳がある。先月30日に開設された300億ドル規模の韓米通貨スワップの通帳だ。
一般に中央銀行は通貨スワップを行った場合、それを運用して収益を上げる。韓国銀行が米連邦準備制度理事会(FRB)から300億ドルを受け取れば、韓国はウォン建てで38兆ウォン(1ドル=1266ウォンで計算)をFRBに預けなければならない。韓国銀行はこの300億ドルを引き出し、ドル資金が必要な銀行に通常より高い金利で貸し出すことになる。しかし、米国は38兆ウォンを受け取ってもそれを一切引き出さない契約だという。巨額の資金をまったく運用しないというのだ。韓国の市中銀行に預ければ1年に2兆ウォン(約1500億円)の利子が付くにもかかわらずだ。
韓銀の関係者は「米国が38兆ウォンを一度に韓国の銀行に預けたり、韓国の国債購入に充てれば、韓国の金融市場に混乱をもたらす。(米国が)政策的見地から韓国市場に配慮したものだ」と説明した。
ならば、米国は純粋に韓国に配慮する破格の対応をしてくれたのか。
世界的金融危機の渦中でドルの基軸通貨としての地位を守り、米国債の処分を防ぐための布石ではないかとの分析も聞かれる。
韓国の外貨準備高(2122億ドル=約20兆8400億円)は依然として世界6位で、このうち米ドル資産は64.4%を占める。万一韓国が流動性危機に追い込まれ、米国債を売り始めれば、他国による米国債売却の導火線となり、世界の金融市場が大混乱に陥ってしまう。先月30日に米国と通貨スワップ協定を結んだ韓国、ブラジル、シンガポールは外貨準備高が6位、7位、8位の国々だ。国際社会では友好国といえども、片手で肩を組み、片手で計算機をたたいていることを常に忘れるべきではない。
趙義俊(チョ・ウィジュン)記者
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