大阪ひき逃げ:容疑者、逮捕まで大胆生活

大阪府警本部を出て送検される吉田圭吾容疑者(右)=大阪市中央区で2008年11月6日午後0時40分、梅村直承撮影
大阪府警本部を出て送検される吉田圭吾容疑者(右)=大阪市中央区で2008年11月6日午後0時40分、梅村直承撮影
ひき逃げ事件で使われた車両。底部には捜査のために張ったとみられる数字や付せんがあった=大阪市中央区で2008年11月5日午後3時22分、梅村直承撮影
ひき逃げ事件で使われた車両。底部には捜査のために張ったとみられる数字や付せんがあった=大阪市中央区で2008年11月5日午後3時22分、梅村直承撮影

 大阪・梅田の死亡ひき逃げ事件で殺人容疑などで逮捕された吉田圭吾容疑者(22)。事件後、勤務先に突然の退職をわびる手紙を残して姿を消す一方、夜の繁華街でホストとして働き、酒を飲み、笑いながら友人とラーメンをすするという凶悪事件を起こした容疑者とは思えない大胆な生活を送っていた。

 「遅刻は多かったが、仕事はしっかりやっていた」。吉田容疑者が勤務していた大阪市此花区の建築会社社長はそう振り返る。約3年前に働き始めた吉田容疑者。金に困っていたのか1カ月半分の給料を前借りしていた。

 一方、居住していた同区内のマンション周辺での評判はすこぶる悪い。関係者によると、ごみの分別はせず、飲んで大声で騒ぐなど近所からの苦情が絶えなかったという。

 事件前日の10月20日は「体調が悪い」と欠勤した。事件当日も出社せず、携帯電話は着信拒否状態で、同社の郵便受けには「辞めようと前から思っていた。違う道を行く」との手紙を残していた。“反省”とも見られる手紙が届いたのは5日後の26日。封筒には犯行車両の鍵と一緒に「勝手なことをしてすみません」と走り書きした便せんが入っていた。

 車の鍵は複数あり、従業員らが持っていたという。社長は吉田容疑者について「こんなひどいことができる子じゃない。『がんばって一人前になる』と言っていたのに、信じられない」と話した。吉田容疑者が無免許だったことを知っていたか報道陣から問われると、「気持ちが動揺して、うまく説明できない」と言葉を濁した。

   ◇

 吉田容疑者逮捕直前の5日午前3時35分。茶髪の吉田容疑者は白いシャツ、ストライプ入りの黒いスーツでミナミのラーメン店を訪れた。男性店員(31)によると、50席あるカウンター席のほぼ中央に知人男性と座り、酒のにおいをさせながら、終始談笑して630円のラーメンを食べたという。

 その20分後。同店が公開した防犯ビデオには、店から出た吉田容疑者に捜査員が近付き、突然走り出して転倒、捜査員が追いかける様子が映っていた。

 「待て」「もう逃げられんぞ」。怒声が飛び交うなか、吉田容疑者は十数人の捜査員に360度取り囲まれた。必死の形相で振り払おうとする吉田容疑者。しかし捜査員にもみくちゃにされ抵抗できない。「確保しました」。大声が聞こえた後、捜査員の輪の中で吉田容疑者はがっくりと肩を落としたという。

    ◇

 捜査本部は6日午後、吉田容疑者を殺人と自動車運転過失傷害、道交法違反(無免許運転)の容疑で送検した。

毎日新聞 2008年11月6日 12時02分(最終更新 11月6日 13時30分)

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