「我が国が侵略国家だったというのはぬれぎぬ」と主張する論文を書き、航空自衛隊の田母神(たもがみ)俊雄・前航空幕僚長(60)が更迭された問題で、田母神前空幕長が懲戒処分の手続きの一つである「審理」の場で、「議論したい」との意向を防衛省に伝えていたことがわかった。だが、防衛省は「時間がかかる」として処分手続きに入らないまま、3日付で定年退職とした。
この問題では、浜田防衛相らが給与返納や減給処分などになる一方、当事者本人が処分されないことが際だっていた。インド洋での給油活動継続を目指す特措法改正案が審議されている国会で論文問題の追及をかわすために、退職を優先させた可能性がある。民主党などは異例の定年退職を問題視しており、経緯が国会で問題になりそうだ。
防衛省は当初、「前空幕長が処分手続きに応じない」と説明していた。
防衛省によると、懲戒処分の手続きでは、対象者の意見を聴く「審理」が開かれる。事実が明らかな場合は本人が審理を辞退することで、手続きが簡略化される。過去のケースでは辞退が大半だったという。だが、田母神氏は「審理は辞退しない。(審理の場で)懲戒に当たるか徹底的に議論をしたい」として、自身の考えを説明したい意向を省側に伝えてきたという。
田母神氏の定年は、延長しても誕生日から半年後の09年1月までだった。審理には通常10カ月程度かかるとされ、防衛省側は「延長期限までに審理が終わらない」として処分手続きに入らなかったとしている。