政府見解に反する論文問題で航空幕僚長を更迭された田母神(たもがみ)俊雄空将(60)は3日夜、東京都内で記者会見し=写真・梅田麻衣子撮影、「国家国民のために信念に従って書いたことで断腸の思い。日本は決して侵略国家ではない」と改めて持論を展開。「むしろこれを契機に活発な論議を願う」と、国会への参考人招致に応じる考えを明らかにした。
田母神氏は「これほど大騒ぎになるとは予想していなかった。日本もそろそろ自由に発言ができる、という私の判断が間違っていたかもしれない」と述べつつも「今回のことが政治に利用され、自衛隊全体の名誉が汚されることは本意ではない」と複雑な心境を明かした。他の複数の自衛官が論文に応募したことについては「紹介はしたが、『書きなさい』とは言っていない」と釈明した。
更迭理由となった政府見解との食い違いについては「政府見解は検証されるべきだ。一言も反論できないようでは、北朝鮮と同じ」と述べた。さらに「戦後教育による『侵略国家』の呪縛が、自衛隊の士気を低下させ、安全保障体制を損ねている」などと信念を語った。【本多健】
政府見解に反する論文を発表した田母神俊雄・前航空幕僚長を、政府は処分もせず3日付で退職にしたが、幕引き優先の対応で、問題があいまいなままになる恐れは否めない。
防衛省が調査をわずか3日で打ち切った理由は、「本人が事情聴取に応じない」。応じない、で果たしてすむ問題なのか。インド洋給油活動を延長する新テロ対策特別措置法改正案などの国会審議で野党に攻め手を与えないよう早期の事態収拾を図るための取って付けた理由という印象が残る。調査する側の内局官僚(背広組)と自衛官(制服組)の間で常に指摘される不和が、「遠慮」につながった可能性もある。
一方、田母神氏が一民間人になったことが逆に、早期収拾の障害になる可能性もある。国会には「制服組は答弁しない」という不文律があるが、そのしばりがなくなるからだ。田母神氏は3日「国会で参考人招致があれば積極的に応じる」と強調しており、同氏が再び持論を展開すれば、国会の紛糾は必至。【松尾良】
毎日新聞 2008年11月4日 東京朝刊