戦時中の日本の侵略を否定する内容の論文を執筆して更迭された、防衛省の田母神(たもがみ)俊雄・前航空幕僚長(60)が昨年、空幕長に就任した後、空自の隊内誌に同様の趣旨の文章を執筆していたことがわかった。浜田防衛相は更迭の理由として「政府見解と異なる意見を公にするのは空幕長として不適切」と述べたが、その文章が出た時点では省内で問題にはならなかった。空自は「個人の一つの考え方という受け止め方だった」としている。
文章は空自幹部らが購読する「鵬友」の昨年5月号に掲載された。幹部らが個人の研究を発表する場で、誌面で「発表された意見などは公的な見解ではない」と断っている。田母神氏は巻頭で「日本人としての誇りを持とう」と題し、「戦後教育の中で我が国の歴史と伝統はひどい無実の罪を着せられてきた。その代表的なものが、日本は朝鮮半島や中国を侵略し残虐の限りを尽くしたというものである」とし、「ウソ、捏造(ねつぞう)の類であると証明されているが、多くの日本国民はそれを事実として刷り込まれている観がある」と書いている。
「南京大虐殺」に触れ、「混乱の中で本当の民間人が巻き添えになったことはあったかもしれない。しかし日本軍が中国の民間人を組織的に虐殺したことは全く無かったのである」と主張している。
また統合幕僚学校長だった04年に同誌に書いた文章でも同様の歴史観を主張。隊員にも一般の月刊誌への投稿を勧めていた。田母神氏の文章は政府見解とは異なるが、空自幹部によると、「『こうした考えもある』として発表したという認識だった」という。浜田防衛相は10月31日夜、報道陣に「かなり思い切ったことを言う方だな、というのは聞いていた」と語っている。(川端俊一、樫本淳)