2008年6月15日号
 
 
  取調べの全過程可視化法案
参院 野党の賛成で可決

 被疑者に対する取調べの全過程を録音・録画(可視化)することを義務付ける法案(民主党提案)が6月4日、参議院本会議で、民主党、日本共産党、社会民主党の賛成多数で可決されました。全過程可視化法案が国会で可決されたことは初めてであり、大きな意義をもっています。
 志布志事件や氷見事件などによって、冤罪事件が社会問題になるもとで、密室での「自白」強要への批判が強まり、取調べの全過程可視化を求める世論が広がっています。一方、警察・検察は、「自白」したところを録画することや取調室に窓をつけることなど、一部「可視化」にとどめようと必死です。しかし、一部「可視化」では、「自白」強要はなくならず、逆に冤罪を生むことになります。
 今後、審議は衆議院に移ります。与党は、一部「可視化」を主張しています。冤罪の実態を知らせ、街頭宣伝や地元国会議員への要請など世論を広げ、与党を包囲するとりくみを強めましょう。

 
  宮城・自衛隊国民監視差止め裁判
自衛隊の監視 違憲だと強調

 陸上自衛隊東北方面情報保全隊により直接監視され被害を受けた原告26人が、国を相手に監視の差止めと損害賠償を求めた訴訟の口頭弁論が5月19日、仙台地裁で行われました。
 今回は裁判官交代による弁論更新という裁判手続きでしたが、裁判所に重大な裁判内容を充分理解し認識してもらうため、弁護団は準備書面を全部読み上げました。とくに、名古屋高裁の自衛隊イラク派遣違憲判決にふれ、監視行為の違憲・違法性を強調しました。
 原告を代表し、後藤東陽氏、安孫子麟・元東北大教授の2人は「国民の平穏、自由な日常生活を精神的に著しく圧迫し、萎縮させる力を及ぼす」と即時中止を強調しました。
 これまで国は、問題の監視報告書について、認否を拒否し、裁判所も容認する態度をとってきました。弁護団が、「認否の必要なし」との国側の答弁書について反論、「今後の立証計画にも関わる最重要論点なので再度認否を明らかにせよ」と迫りました。裁判長は「民事訴訟の実務上、争うかどうか明らかにしてほしい」と国側に言ったところ、国側代理人は「勧告ですか」と切り返していました。結局、6月27日までに国側は答弁書を提出することになりました。
 報告集会では、名古屋高裁判決も力にし、毎回傍聴席を満杯にしながら、元気なたたかいを全国に発信していこう、自衛隊に監視されるのでなく私たち国民が自衛隊を監視していこうなど確認し合いました。

 
  長野・蒲原沢国賠裁判
控訴審が結審 8月20日判決

 蒲原沢国賠裁判の控訴審が5月14日、東京高裁で結審し、8月20日に判決が言い渡されることが決まりました。
 1995年、長野県小谷村蒲原沢で土石流が発生、翌年その復旧工事にあたっていたところ、再び土石流が発生し、作業員ら14人が亡くなり、うち3遺族が発注元の国と県を相手取り、謝罪と賠償を求めています。
 一審では、「土石流の発生は予見できなかった」と、国などの責任を認めない不当判決が出されました。
 弁護団は、土石流が発生した場所は崩れやすい地形であり、当時悪天候で近隣の工事が中止されているなど事前に危険性が高まっていることを知り得たとして、国などの責任を明らかにしてきました。
 県本部では、当日、公正判決や証人採用を求める署名3190筆(累計2万6397筆)を高裁に提出、勝利判決にむけて署名の推進など運動を広げています。

 
  東京・痴漢えん罪西武池袋線小林事件
最高裁で逆転無罪を
病床の小林さんを支えて家族が力合わせて訴える

 突然、痴漢の犯人に間違われた痴漢えん罪西武池袋線小林事件・小林卓之さん。被害者女性も逮捕した男性も、犯人の顔や犯行時の手を目撃しておらず、物的証拠もありません。しかも、逮捕した男性は、犯人はお尻の隠れるハーフコートを着ていたと証言しましたが、小林さんは当時、お尻の出るジャンバーを着ていました。また、小林さんは7年前から膠原(こうげん)病強皮症を患っており、指が曲がらず、被害者が主張するような行為はできないことを担当医が証言しました。しかし、裁判所は、ほかの指なら可能だとして、東京地裁も東京高裁も1年10月の実刑判決を言い渡しました。
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 こうしたなか、逆転無罪をめざして最高裁への上告趣意書作成に心血を注いで頑張っている最中、小林さんは5月1日に脳梗塞で倒れました。現在も病院で検査・治療にあたっています。2月の東京高裁での控訴棄却後、全国の救援会のみなさんからの励ましや、最高裁への上告後、署名や上申書などが次々と届き、5月15日には、「小林さんとご家族を励ますつどい」を計画、5月20日には最高裁統一要請行動に参加して大きく運動を進めようという矢先でした。
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 「励ますつどい」は、練馬区内の人びとや痴漢冤罪でたたかう事件関係者など50人が参加者しました。病院から奥さんも駆けつけ、「まだ絶対安静で検査がつづいています。小林はみなさんによろしくお願いしますと申していました」と病状の報告があり、参加者も最高裁で無罪を勝ちとることが、小林さんが一日も早く元気になることだと支援を強めていくことを確認しました。
 5月20日の最高裁統一要請行動では、娘さんがどしゃぶりの雨のなか、他事件の人たちとともに宣伝行動に参加。要請行動では、応対した書記官に、一、二審のあまりにも理不尽で正義に反する有罪判決に対し、病気の父を救うため最高裁が無罪判決を出してほしいと涙を流して訴えました。
 小林事件は、3月にテレビ朝日やTBSなどで放映され大きな反響を呼び、5月24日付の『週刊ダイヤモンド』(経済誌)でも「裁判がオカシイ」という特集で、「捕まれば無実の証明は至難 人生を狂わす痴漢冤罪の恐怖」と題して大きく取り上げられています。
 支援する会では、地元練馬を中心に痴漢冤罪西武池袋線練馬駅事件と力をあわせて運動を広げ、最高裁が破棄自判の無罪判決を出すよう頑張る決意です。全国のみなさんのひきつづくご支援をよろしくお願いいたします。

 〈要請先〉〒102―8651 千代田区隼町4―2 最高裁第1小法廷・才口千晴裁判長
 〈激励先〉〒113―0034 文京区湯島2―4―4 平和と労働センター 国民救援会東京都本部気付