もうじき、テレビ受像器はテレビが見えなくなるそうです。で、どうすればいいかというと、 チデジ対応の受像器を買うのだそうです。チデジ、、、、? なんか汚い響きでいやですね。買う気にはなりません。
チデジになったら、どんないいことがあるのでしょう。画素数が多くなるのだそうです。テレビの画面がワイドになって画面に登場する人がみんな太ってしまったのは、随分昔のことです。それをいまさら高解像と言われてもぴんと来ません。BS、CSではすでにずっと以前から高精細ワイド画面です。
チデジになったら、何ができるようになるのか実のところよく分かっていません。電波の届かないところでもテレビが見えるようになればすごいのですが、そんな訳はありません。iPhoneやiPodのポッドキャストなら、朝、家を出る前にiPhoneを充電がてらMacにシンクロしておくと、地下鉄の中でも電波の届かないエリアでも、CNNニューズを見ることができますが、チデジはそれはできないでしょう。あくまで電波が届かなければ、テレビじゃあない。
チデジなら、いつでも好きな映画が見れるようになるでしょうか?iTuneなら、音楽や映画をダウンロードして好きなときに見ることができますが(アメリカなら映画もiTuneで9.9ドルでダウンロードできる)、チデジでは放送番組を録画するだけでしょうね。iTuneなら好きなときに止めたり早送りできますが、チデジでは放送中のトイレ休憩はコマーシャルを待ちましょう。
チデジなら、自分で録画しなくても話題のシーンが自動的に録画されるでしょうか?これも無理でしょうね。話題のシーンは必ず世界の誰かが YouTubeにアップロードしてくれています。その検索も簡単です。そのYouTubeは、iPhoneでいつでもどこでも見ることができます。
チデジになったら、アナログの時よりもチェンネルの切り替えが早くなるのでしょうか。むしろ逆です。最近、ホテルでテレビを付けるとチャンネルの切り替えが非常に遅いのは、チデジのせいです。圧縮されているからなのか、チデジはチャンネル切り替えに時間がかかります。
結局、チデジになって不便なことはあるけれど、便利なことは何もみつかりませんでした。あえてメリットといえば、NHKの紅白歌合戦で投票が出来ることでしょう。それも電話かネットが必要です。何れにしても紅白の投票には興味がありません。
それなのに、このチデジ普及のために国は年間数百億の予算を組み国債を発行し、放送局は設備投資にお金を掛け、庶民はチデジ対応テレビを買わされます。アナログ放送は終わるのです。チデジの最大の目的は、全国津々浦々まで雑音のない電波を届けるためだそうです。電波のない平和な住処は、日本にはどこにもあってはならないようです。日本では、電波の届かないところに住むことは許されないのです。全国津々浦々に高速道路と新幹線を、というのと同じ発想です。
そのチデジのおまけが、ワンセグです。チデジは解像度が高いのが売りの筈ですが、ワンセグの解像度はとても低くて、大きくして見ることが出来ません。それで、携帯電話で見るのだそうです。携帯の小さい画面でテレビを見たい人って、本当にいるのでしょうか。私は、画面は大きい方がいいです。MacBookAirがPCのノートパソコンより素晴らしいのは、薄くて軽くて賢いことに加えて、画面とキーボードがフルサイズであることです。
いつでもどこでも好きな番組が見られるユビキタス・ネット社会に遅れて出てきたテレビ放送のチデジテレビは、まるで時代を間違えて出てきた戦艦大和のようです。 戦争末期、米軍が空母と戦闘機で攻めてきているのに、日本軍は巨艦・戦艦大和を作り、役に立つことなく沢山の兵士を巻き添えにして海の藻屑となりました。 アナログからディジタルに替わっても、衛星放送が地上波になっても、結局、テレビ放送は進化しませんでした。
映画「Always3丁目の夕日」の世代にとって、テレビはいまや重要文化財あるいは重要無形文化財です。誇るべき昭和戦後の文化です。家族全員をテレビ受像器の前に釘付けにして、それぞれの家庭のお茶の間に小劇場が生まれました。人々はテレビ放送によって自由を奪われ時間を拘束されましたが、家族はテレビの前にひとつに集まりました。インターネットは、個人をテレビから開放して、家族の単位を個々人に分解してしまいました。
インターネットが次に果たすべきことは、テレビが果たしてきた役割を受け持つことではないでしょうか。個々人を解体・分断するのではなく、人々を家族や友達の中に返すことだろうと思います。そのテクノロジーは、既に近いところまで来つつあります。MacのiChatでは、別のところにいる複数の人(家族とか仕事仲間)が同じ画面で同じ映画やドキュメントを見ながら、互いの顔と目を見て話をすることが出来ます。帯域が不十分であることとセキュリティーのために使える環境が限られていますが、もうすぐに一般に使えるようになることでしょう。
ネット犯罪も防ぐためのテクノロジーの開発が急務です。今のネット社会では、ひとりバーチャル(虚構)のネットの世界に入り込んで、自分の存在を隠して匿名で他人を攻撃する人たちがいます。その人たちは自分の卑劣さや犯罪性に気づきません。韓国で女優が相次ぎネット攻撃に傷つき、自殺したとのニュースがありました。ウィキペディアや2チャンネルに匿名で書き込みをして他人を攻撃する人たちもいます。自分の名前を隠して匿名で一方的に人を攻撃することが、いかに卑怯で病的な変質者のテロ行為であるかは自分では気づかないのでしょう。匿名ですから、折角の友達や家族も注意をしてくれません。テレビでもワイドショーや政治討論番組で、芸能人や政治家を攻撃するレポーターや評論家がいますが、彼らは自らの顔を出して発言をしているのですから、傲慢さが過ぎると視聴者から批判が出てきて番組から降ろされます。しかし匿名のネット書き込み者は救いがありません。
こんなネット時代には、家族揃ってみるアナログテレビが懐かしい。東京タワーは、「Always三丁目の夕日」とリリー・フランキーさんの小説で、久しぶりに注目を集めましたが、チデジのせいでついにその役割を終えるそうです。高さは周りのビルや新しいタワーに負けても、昭和の重要文化財としていつまでも東京の夜空に輝き続けて欲しいと願います。
|