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ふるさと@おおさか:奈良県 大阪在住者のリフレッシュエリアにも /大阪

 ◇県外就業者の8割が通勤

 企業の本支社や官公庁の拠点が集まる大阪府。そのお隣・奈良県は、県外就業率が29・3%(05年国勢調査)で全国トップだ。県外への就業者約18万人のうち8割を超える約16万人が、毎日大阪へ。江戸時代、生駒山を越えて歩くお伊勢参りの人々でにぎわったといわれる大阪-奈良間は、今や高速道や鉄道網が整備され、1時間ほどで気軽に通勤することができる。

 生まれも育ちも奈良市という会社員、里見和美さん(40)は、同市内のマンションで夫と暮らし、大阪市のオフィスまで毎日電車で通う。子どものころは、奈良から大阪に出かけることを「すごい都会へ行くようで、怖いような感じもあった」。

 一方で、奈良の代名詞たる東大寺や唐招提寺などの社寺には、身近過ぎて足を運んだことがほとんどなかった。ここ5年ほど、友人から「奈良に行きたい」とリクエストされて訪ねるように。「『京都より昔のままの落ち着きがあって好き』って言ってもらって」と、魅力を再発見している。

 大都市圏のベッドタウンゆえ、引っ越して来て奈良に根を下ろした人も。奈良県橿原市在住の会社員、寺岡慎一さん(49)は、吹田市生まれだが、高校2年生の時に父親が県内に家を買ったことで転入。約30年前の当時、幹線道路の脇に並ぶ店はほとんどなく、多感な青年の目には一段と田舎に映った。

 府内の大学に進み、同級生になった同県大和郡山市育ちの友人が、梅田の繁華街で「別世界みたいやなぁ」とこぼした言葉は、今も忘れられない。その後、府内に就職したが、結婚して選んだ住まいは県内だった。

 趣味の写真で、2人の子どもの成長や、変わりゆく地元の風景を切り取りながら、地域への愛着を感じている。「虫の音もすぐ聞こえるしね」

 行き来しやすい大阪との距離感は、奈良で自然を満喫したいという大阪の人の心をもとらえ始めている。里見さんは今年から、府内に暮らす友人ら数人と、明日香村の「棚田オーナー制度」を使って米作りに挑戦している。

 休日になると、棚田の周りは府内ナンバーの車が集結。「普段なら怖い虫も、全然平気」と、草取りや稲の育ち具合を確かめ、わらを集めてかかしも作った。友人らも子ども連れで棚田へ。「長靴を借りようと実家に行くと『わざわざ泥んこになるの』と親に言われた」と里見さん。それでも、自分たちで作る楽しみは新鮮。10月半ばに稲刈りを終え、もうすぐ脱穀と収穫祭がある。

 里見さんは「大阪は何でもあって便利だとは分かってる。けれど、通勤できるし、落ち着くし、なぜか離れられない」と話す。「遠きにありて思うもの」という古里だが、現代においては、身近でリフレッシュさせてくれる古里も貴重だろう。【青木絵美】

毎日新聞 2008年10月28日 地方版

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