航空観閲式に出席する田母神航空幕僚長(左手前)。右端は麻生首相=10月19日、茨城県小美玉市の航空自衛隊百里基地、林敏行撮影
自宅前で取材に応じる田母神航空幕僚長=31日夜、東京都目黒区、延与光貞撮影
「猛将」タイプと言われ、ストレートな発言をすることで知られる。今年4月には、空自のイラクでの活動を違憲と判断した名古屋高裁の判決について、お笑い芸人の言葉を引いて「『そんなの関係ねぇ』という状況だ」と記者会見で話し、物議をかもした。
自衛隊の関係者によると、田母神氏は以前から論文に書かれたような歴史観を周囲に語ることがあった。数年前、研修で田母神氏の話を聞いたことがある自衛隊幹部は「バランスの問題はあるが、驚きはない」と話す。別の幹部は「何か思いがあったのではないか」と心境を推し量った。
一方で「われわれ職員の一般的な考えとは違う。戦時中の日本がすべて正しいとは思わない。いろんな考えがあっていいとは思うが、柔軟なバランス感覚が必要だ」と違和感を語る防衛省幹部もいる。「何を考えていたのか」。更迭劇をやむを得ないとの見方を示す幹部もいた。
防衛省はインド洋での給油活動を継続する法案を抱え、論文が政治問題に発展すれば痛手は小さくない。別の幹部は「法案への影響がなければいいが」と頭を抱える。
自衛隊関係者では、陸上幕僚長出身で、94年発足の羽田内閣の永野茂門法相が、大臣就任直後に「南京大虐殺はでっち上げだと思う」と発言し、大臣を更迭されている。
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懸賞論文は、アパグループが今年5月に創設し、審査委員長は上智大名誉教授の渡部昇一氏が務めた。
グループ代表・元谷外志雄氏によると、論文は筆者の名前や肩書を伏せた形で審査した。元谷氏は「立派な論文。肩書のある立場で見解を示すのは勇気のいることだ」と話す。
アパグループは、経営するホテルとマンションの構造設計を手がけた建築士が耐震強度を偽装し、一連の耐震偽装問題でも話題となった。