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「沖縄ノート」訴訟 大阪高裁判決理由の要旨(1/2ページ)

2008年10月31日22時30分

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 「沖縄ノート」「太平洋戦争」をめぐる名誉棄損訴訟の控訴審で、大阪高裁が31日に言い渡した判決の理由要旨は次の通り。

 【判断の大要】

 1 「太平洋戦争」の記述は控訴人梅沢の、「沖縄ノート」の各記述は控訴人梅沢及び赤松大尉の、社会的評価を低下させる内容と評価できる。しかし、高度な公共の利害に関する事実にかかわり、もっぱら公益を図る目的のためと認められる。以上の点はおおむね原判決が説示する通りである。

 2 座間味島及び渡嘉敷島の集団自決は「軍官民共生共死の一体化」の大方針の下で日本軍が深くかかわっていることは否定できず、これを総体としての日本軍の強制ないし命令と評価する見解もあり得る。しかし控訴人らが直接住民に命令したという事実に限れば、その有無を証拠上断定することはできず、各記述に真実性の証明があるとはいえない。

 3 集団自決が控訴人らの命令によるということは、戦後間もないころから両島で言われてきたもので、各書籍出版のころは学会の通説ともいえる状況にあった。各記述は少なくともこれを真実と信ずるに相当な理由があったと認められる。また「沖縄ノート」の記述が意見ないし公正な論評の域を逸脱したとは認められない。したがって各書籍の出版は不法行為にあたらない。

 4 各書籍は昭和40年代から継続的に出版されてきた。その後の資料等により、控訴人らの直接的な自決命令については真実性が揺らいだといえるが、各記述やその前提とする事実が真実でないことが明白になったとまではいえない。各記述は歴史的事実に属し、日本軍の行動として高度な公共の利害に関する事実にかかわり、公益を目的とするものと認められることなどを考えると、出版当時に真実性ないし真実相当性が認められ、長く読み継がれている各書籍の出版等の継続が不法行為にあたるとはいえない。

 5 したがって控訴人らの本件請求はいずれも理由がない。

 【証拠上の判断】

 1 控訴人梅沢は、(村幹部らに)「決して自決するでない」と命じたなどと主張するが、到底採用できない。村の幹部が軍に協力するために自決すると申し出て爆薬等の提供を求めたのに対し、玉砕方針自体を否定することもなく、ただ「今晩は一応お帰り下さい」と帰しただけであると認めるほかはない。

 2 (座間味島住民の)宮平秀幸は、控訴人梅沢が自決してはならないと厳命したのを聞いたなどと供述するが、明らかに虚言であると断じざるを得ず、これを無批判に採用し評価する意見書、報道、雑誌論考等関連証拠も含めて到底採用できない。

 3 梅沢命令説、赤松命令説が(戦傷病者や戦没者遺族への)援護法適用のために後からつくられたものであるとは認められない。

 4 (略)

 5 時の経過や人々の関心の所在、本人の意識など状況の客観的な変化等にかんがみると、控訴人らが各書籍の出版等の継続により、人格権の重大な不利益を受け続けているとは認められない。

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