2008/10/30
10:30 am
中河内くん、古川雄大くんが歩道で踊っていた。
昨日の深夜、多摩の稲城、川崎街道沿いの小さなアパートの前だった。
寒い、北風がぴゅうぴゅう吹いていた。
ここで「2ステップス」の最後シーンの撮影が終わった。
隼人(マサくんの役名)の部屋を訪ねた巧(雄太くんの役名)に隼人が初めて本音で語る場面だ。
「好きでもないし、踊りたくもねえが、俺にはお前のダンスは踊れない」かっこいいセリフだ。
巧もそれにこたえ「僕は自分のダンスを踊る・・・(?ちょっと違ってるかも)」
ここから二人はお互いにぶつかりあうことから、
自分の内面の悩みに向かい、ひたむきにレッスンに励むようになる、大事なシーンだ。
そこも、二人ともきちんと芝居が出来たのだろう、
きついスケジュールだったこの12日間、
やりきった満足感もあっただろう、
夜の歩道で、クランクアップの乾杯を待つほんの一瞬の間、
二人は、体がダンスを踊りだし、ステップを踏んでいた。
上島さんが二人に花束を渡し、僕が上島さんに花束を渡した。
みんなの拍手が夜空にそーっと響いた。深夜、住宅街で大きな音を立てられない。
監督補の川野さん、カメラの長野さん、助監督の水内さん、制作の野村さん、大勢のメンバーに恵まれた。
いいチームだ。
めちゃくちゃ冷える中、上島さんのあいさつで乾杯した。
「続編を作りたい」みなさん、ちょっと笑顔になった。
「いい映画が出来たと思う、思いのたけは全部フィルムの中に込められた」
全員がうなずいた。
上島さんの、日本にダンス映画を残したい。
今まで日本にはこれと言ったダンス映画がなかった、
ダンスを目指す人すべてがこの映画観ておかなきゃ、という映画作る、
この志が映画を動かしたエネルギーだ。
このエネルギーは膨大な熱量になって燃えた。
上島さんの言葉を聞いて、僕もうなずいた一人だった。
池袋の芸術劇場「テニミュ氷帝戦」の場あたり稽古が終わった瞬間、
古川くんは着替えはじめるのもそこそこにロケ隊の待つ「2ステップス」の撮影現場に向かった。
出待ちのファンには目をやらず、車が走り始めたときには彼はもうすでに台本を読んでいた。
何度も読み返し、納得したように顔を上げたので、聞いてみた。
映画の撮影どうだった、確かはじめてだよね、
超気持ち良かった、今日初めてダンス少しできたと思う、
それってテニミュのこと、
そう、撮影でへこんでたんです、
そうね、上島さんはトップフダンサー並べてへこましてやる、って言ってたよ、
そうなんです、ずーっとへこんでたんです、でも自分のダンスちょっと変われたかもしれない、
なんか、今日テニミュで踊ってて感じたんです、少しできるようになったかなって。
うれしくなった。
21:00頃、中河内くんの道路工事現場の撮影の最中に飛び込んだ。
そこでも聞いてみた。
マサくんも、気持ち良かったです。
スタッフのみなさん、すごく動いていて、リラックスして芝居できました、長野のダンスの先生も来てくれたし。
中河内クンの妙に似合う現場作業員の衣装に感心し、こういうバイトってやってた、って聞いたら、
近いのやってました、道路工事の現場の警備員、ほとんどこういうかっこしてました、という。
数々のバイトしながらダンスを踊るお金を作り、
少年時代からこの道一筋に飛び込んだ彼のファイティングスピリットを僕は尊敬する。
彼のキャリアがこの映画の出発点だ。
みんな、明日の仕事がある、
マサくんの、飲みてぇーっ、とい叫びには残念ながら僕もゆうたくんも答えられなかった。
ゆうたくんは「テニミュ」のゲネプロ→初日本番だし、マサくんも「セブンサムライ」の稽古、上島さんも池袋に入る。
僕は、映画の前売り券の発売日、大事な日だ。
古川くんと上島さんが僕の車に座り、深夜の中央高速、上り線を飛ばした。
ジャガーの室内、二人に抱かれた花がちょっと薫った。