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イタリア:ナチス虐殺、独政府に賠償命令 遺族9人に1億2500万円--伊最高裁

 【ローマ藤原章生、ベルリン小谷守彦】第二次大戦中、ナチス占領下のイタリアで起きた住民虐殺事件をめぐり、イタリアの最高裁に当たる破棄院の刑事第1法廷は21日、ドイツ政府に、原告の2人の犠牲者の遺族9人に総額100万ユーロ(約1億2500万円)の賠償金支払いを命じた。また虐殺に加わった当時のドイツ人将校(85)=ドイツ在住=の終身刑を確定させた。

 ◇人道犯罪に厳罰の流れ

 過去の戦争での人道犯罪で、被害国側の裁判所が加害国側に賠償を命じるもので、専門家は「人道犯罪に厳しい目を向ける国際法の潮流に従った判決」と指摘。大戦中の旧日本軍の人道犯罪に対する日本政府への責任追及にも、今後影響を与える可能性がある。

 事件は1944年6月、イタリア中部トスカーナ州の町チビテッラで起きた。パルチザンによってドイツ兵3人が殺された報復として、女性や子供、司祭ら203人が暴行の末、銃殺された。当時、ヒトラーはドイツ人1人の死にイタリア人10人の処刑で報いるよう命令。イタリアでは44年までのナチス駐留下、市民約1万人が犠牲になった。

 裁判は06年に始まり、1審、2審ともドイツ政府の補償義務を認めていた。

 独伊は47年、イタリアのドイツへの賠償要求放棄を確認した講和条約を締結。61年には2国間協定も結んでいるが、破棄院は今回、「ドイツ政府の免責は強制連行に関するもので、人道に反する罪は含まれない」と、原告側の主張を受け入れた。

 ドイツ外務省報道官は「判決を理由に政府が個人に補償することはできない」と、判決の受け入れを拒否する一方、「道義的責任は認識している」と述べ、原告への補償金支払いの可能性を示唆した。

 国際法の専門家によると、米国や欧州では今回同様、ナチスの戦争犯罪に関して現ドイツ政府の責任を認める判決が出ている。フィレンツェ大のアントニオ・カセーゼ教授(国際法)は伊レプブリカ紙に対し、「一国の司法が他国の罪を問えないというのが、国際法の原則。しかし現在は、人道上の罪は例外という解釈が優位に立っている」と指摘。ドイツの戦後補償問題に詳しいブレーメン欧州法政治学センターのフィッシャーレスカーノ氏(国際法)は「人道犯罪に厳しい視線を注ぎ、人権保障を充実させてきた国際法の潮流に沿うものだ」と評価した。

毎日新聞 2008年10月23日 東京夕刊

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