脳内出血を起こした東京都の妊婦が8病院に受け入れを断られた後に死亡した問題で、県内12カ所の「周産期母子医療センター」認定病院のうち、産科医が24時間体制で常駐している病院は半数以下の5カ所にとどまっていることが29日、毎日新聞のまとめで分かった。夜間・休日の当直を複数の産科医が務める病院はゼロだった。病院からは「医者の数が足りず、いつまで24時間体制を維持できるか分からない」との声も上がり、妊婦と新生児を取り巻く厳しい環境が浮き彫りとなった。【青木純】
周産期とは、妊婦が出産する前後の時期を指す言葉。周産期母子医療センターは、高度な医療の提供や、平日と夜間・休日の機能の格差解消などを目的に整備が進められており、中核的な役割を担う「総合周産期母子医療センター」と、地域の医療機関のサポートに力点を置く「地域周産期母子医療センター」の2種類ある。国の指針は「総合」病院について、「24時間体制で産科を担当する複数の医師が勤務していること」が望ましいとしている。
東京都の問題では、最初に受け入れを断った都立墨東病院は「総合」に認定されていたが、同病院は当初、「土曜日で1人当直なので受け入れられない」と拒否していた。
県内で「総合」に認定されているのは、仙台赤十字病院(仙台市太白区)の1カ所。県医療整備課などによると、同病院の産婦人科医は6人で、夜間・休日の当直は1人。人手が足りない場合には、病院近くにいる医師を呼び出す「オンコール」で対応するという。
一方、国の指針が産科の医療従事者について「24時間体制を確保することが望ましい」としている「地域」認定病院で、当直がいるのは▽仙台医療センター(同市宮城野区)▽東北公済病院(同市青葉区)▽NTT東日本東北病院(同市若林区)▽仙台市立病院(同)--の4カ所。いずれも当直は1人で、NTT東日本東北病院のように「3人の医師で当直を回しており、負担が重い。現場は情熱だけでやっているのが実態」という病院もあった。
また「お産は深夜、早朝までかかることがあり、医師2人で昼間の診療と当直の両方をやるのは不可能。定時で帰宅する医師はまずいない」という県立こども病院(同市青葉区)のように、当直を置かない「地域」認定病院も7カ所あった。このうち6カ所が、夜間・休日は「オンコール」で対応。05年から産科医が1人になっている東北厚生年金病院(同市宮城野区)は、夜間・休日の対応は行っていないという。
各病院は十分な体制が構築できない要因として「きめ細かい診療をするようになったのに、産科医の数が増えていない」(仙台医療センター)、「産科医はリスクが大きいとされ、なり手が減っている」(NTT病院)など、産科医不足を指摘している。厚労省は各地の周産期母子医療センターの現状を調査中で、県も近く調査に乗り出す予定という。
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【県内の周産期母子医療センターの産科の状況】
医師の人数 夜間・休日の態勢
仙台赤十字病院 6 当直1人、オンコール1人
県立こども病院 2 オンコールで対応
公立刈田総合病院 1(+院長1) オンコールで対応
みやぎ県南中核病院 1 オンコールで対応
仙台医療センター 8(+非常勤1) 当直1人、オンコール1人
東北公済病院 8 当直1人
NTT東日本東北病院 3 当直1人(オンコールの場合あり)
仙台市立病院 7 当直1人
大崎市民病院 4 オンコールで対応
石巻赤十字病院 3 オンコールで対応
気仙沼市立病院 2 オンコールで対応
東北厚生年金病院 1 平日昼間のみ対応
オンコール……病院近くの自宅などで待機し、呼び出しに応じて出勤
毎日新聞 2008年10月30日 地方版