【カイロ=田井中雅人】シリア国営通信によると、イラク国境に近いシリア東部アブカマルで26日、米軍がイラク側から越境攻撃し、子供や女性を含む民間人8人を殺害した。米軍がシリア領内を攻撃するのは極めて異例。シリア政府は米国の駐シリア臨時代理大使を呼び米軍の「侵略」に強く抗議、イラク政府にも調査を求めた。
米軍はヘリコプター4機で領空侵犯。着陸した2機から降りてきた米兵らが建設中の建物内を攻撃したという。
一方、AP通信などによると、米軍当局者も匿名を条件に、米軍の特殊部隊が越境攻撃したことを示唆。シリアが北アフリカなどからイラクへの武装勢力の供給拠点となっている、と指摘した。
イラク中部バクバで今月中旬、シリアから流入したとみられる武装勢力7人がイラク治安部隊に拘束される事件があり、イラク駐留米軍は「シリアが外国人武装勢力のイラク流入に十分な対策を講じていない」として、国境付近の警戒を強化する意向を示していた。
ただ、シリアを「テロ支援国家」に指定する米国とシリアの対立は最近、緩和の兆しが見えていただけに、今回の越境攻撃には唐突感も漂う。
米アナポリスで昨年11月に開かれた中東和平をめぐる国際会議には、シリアのメクダド副外相が参加。シリアは、米ブッシュ政権による敵視政策や国際的孤立からの脱却をめざしてきた。
また、シリアとイラクも06年、四半世紀ぶりに国交を回復。シリアは今月、駐イラク大使を着任させるなど「雪解け」ムードにあった。イラクのジバリ外相も「シリアの国境管理強化により、イラクへの武装勢力の流入が大幅に減り、イラクの治安改善につながっている」とシリア側の対策を評価していた。