「無防備地域宣言」をご存じですか?「自治体の長などが特定の地域について無防備を宣言すれば、そこを攻撃することは許されない」。ジュネーブ条約追加第一議定書という世界のほとんどの国が承認している戦時国際法の規定です。
この議定書を研究していた軍事評論家、林茂夫さん(故人)を99年に取材しました。増加する一方の民間人犠牲者を何とかしようとNGOも協力して77年に議定書が作られた経緯や、日米安保の強化に対抗する地域からの取り組みとして「無防備地域宣言」を盛り込んだ条例の有効性を熱く語ってくれました。
皮肉なことに、当時は「戦争放棄の憲法9条があるため、戦時法である議定書が国会承認される見込みがない」という状況でした。
ところが、議定書は04年6月、有事法が整備されたことで国会承認され、その1カ月後、林さんは亡くなりました。
いま、「無防備宣言」を盛り込んだ平和条例の制定を求める直接請求署名が、大阪府寝屋川市と京都府精華町で進められています。天国の林さんはエールを送っていることでしょう。【湯谷茂樹】
毎日新聞 2008年10月14日 大阪夕刊