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 医療への信頼
    

 【福井新聞のコラム】 …東京の妊婦が7カ所の医療機関で診療を断られ出産後に亡くなった。昨年8月には奈良県の妊婦がたらい回しで死産したばかりだ▼さらに驚くべきことに、今回は地方でなく巨大都市・東京で、しかも緊急対応の指定医療機関で起きている。その病院では産科医の退職が相次ぎ、当直は研修医1人だけだった……ことわざに「子に過ぎたる宝なし」という。家族の笑顔の根源は「安心して産める」環境あってこそである。(10月23日付「越山若水」)全文
 【東京新聞のコラム】…彼女はどんな思いだったのか。脳内出血を起こした東京都内の三十六歳の妊婦さんのことである。七カ所の医療機関で受け入れを断られた後、帝王切開で出産したが、三日後に亡くなった▼緊急時の受け入れ先として、東京都から指定を受けていた病院が最初に、当直医が一人のため「対応できない」と応答していた。患者からすれば何と悔しく、むごい言葉だろう▼産科の医師不足が、簡単に解消できるとは思わない。とはいえ、悲劇を繰り返さないようにする対策がないとも思えない。まなじりを決して取り組むか、否かである。(10月23日付「筆洗」)全文
関連情報 
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 【写真】妊婦が救急搬送された都立墨東病院=22日午前10時52分、東京都墨田区で共同通信社ヘリから


 【47コラム】総務省消防庁が発表した、昨年の救急搬送受け入れ状況に関する調査について、各地の結果がどうだったかというニュースが「47NEWS」加盟社サイトにいろいろ掲載されている。
 
 中には47回も拒否されたケースもある。拒否の理由は「医師不在」「専門外」が多いという。最近の小児科医不足も影響していると思われる。

 それにしても、こうした事実が国民に医療への不信感を植え付けていることは間違いないだろう。一部の開業医らの富豪ぶりや、脱税などの違法行為が明るみに出ることが不信感に輪をかける。

 いまはほとんど見られなくなった医師像を思い起こさせるのは、小津安二郎監督の名作映画「東京物語」(1953年)だ。尾道から上京してきた主人公夫婦の長男は東京・荒川近くで開業医をしている。上京の翌日、両親を東京見物に案内しようとしていると、具合の悪い息子を抱えた父親が往診を頼みに来る。「うかがいましょう」。長男は即答し、両親に「ちょっと気になる患者があるんです」と説明。見物は取りやめになったことを伝える。一緒に連れて行ってもらうつもりだった孫は駄々をこねる─というストーリー展開だ。
 
 映画のほかのシーンを見ても、この長男の家は、貧しいわけではないが、生活はかなり質素で、最近の開業医のイメージとはだいぶ違う(もちろん、当時も豊かな医師はいたのだろうが…)。それはたぶん、国民健康保険の施行(1959年)の前と後の違いなのではないだろうか。一般的に、戦後日本の医師は国民健康保険で豊かになったといわれているはずだ。

 それとともに、医師のイメージは変わり、患者の医療への信頼も変化した。「東京物語」の長男のような医師をいま都会で探すことは難しいだろう。それは時代の変化かもしれない。では、現代に適した医療の改善策はあるのだろうか?(「47NEWS」スタッフ・小池新)

新聞社のコラムから
 四国新聞 7月5日付「一日一言」 東奥日報 6月26日付「天地人」 四国新聞 3月26日付「一日一言」

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