東京・品川駅前で明治期に創業した老舗「京品ホテル」(東京都港区、小林誠社長)が、経営の悪化などを理由に廃業を決め、20日付けで従業員約130人を解雇した。経営破綻(はたん)した米証券大手リーマン・ブラザーズ(リ社)の日本法人子会社「サンライズファイナンス」(サ社、港区、民事再生手続き中)が債権者だったこともあり、従業員労組が反発し、解雇に反対し職場を占拠して独自に営業を続ける構えだ。
労組などによると、5月8日に小林社長から廃業と全員の解雇が告げられた。「がらんどうにして売却することが相手との約束」と、営業譲渡ではなく廃業と説明した。債務の累計は約60億円に上り、サ社が分散していた債権を買い取り一本化したことが分かった。
従業員らは個人加盟の労働組合「東京ユニオン」に加入し、京品ホテル支部を結成、解雇の撤回を求めてきた。小林社長との交渉以外にも、「経営に影響力を持つ実質的使用者だ」とサ社にも団交を求めたが拒否され、リ社の破綻で交渉は更に難しくなった。21日には東京地裁に地位保全の仮処分を申請、ホテル内の飲食店で自主営業をする予定だ。
小林社長は「これ以上経営を続けるのは無理だ。解雇についてもきちんと説明している。リ社の破綻は関係ない」と話している。一方、組合の金本正道支部長は「昨年も8000万円の利益が出ており廃業は納得できない。放漫経営であり、労働者を債権回収の犠牲にするな」と訴える。
京品ホテルは1871年に旅館として開業、戦後米軍の接収や火事などに遭いながらも営業を続けた。【東海林智】
毎日新聞 2008年10月20日 20時40分(最終更新 10月21日 8時41分)