中国・重慶市で9月19日、有害物質メラミン入りの粉ミルク事件の発覚を受け、検査のために子どもを連れて病院に殺到した人々=ロイター
【北京=坂尻顕吾】北京五輪を終えた中国で、中央や地方政府の幹部更迭が相次いでいる。いずれも被害の大きい事件や事故、不正疑惑などの責任を問われた形だ。各地で広がる民衆の不満に火がつけば「共産党一党支配」の正統性が揺らぎかねず、更迭の背後には胡錦濤(フー・チンタオ)指導部の強い意向がうかがえる。
農村改革をテーマに、12日に終わった共産党の第17期中央委員会第3回全体会議(3中全会)。突然、文化省次官だった于幼軍・中央委員の解任が決まった。深セン(センは土へんに川)市長時代の不正疑惑が取りざたされ、北京の消息筋は「来年3月の全国人民代表大会ですべての肩書が剥奪(はくだつ)されるだろう」と予測する。
山西省で9月上旬に発生した土石流災害では、同省人民代表大会常務委員会で孟学農省長らの解任が決まった。死者が250人以上に広がり、そもそも鉱山会社の違法採掘を摘発できなかったことが理由とされたが、委員会には胡氏の側近とされる李源潮(リー・ユアンチャオ)・党中央組織部長がわざわざ北京から駆けつけ、「党と政府のイメージを大きく損なった」と発言した。
有害物質メラミン入り粉ミルク事件でも、発端となった「三鹿集団」本社がある河北省石家荘市の党委書記や市長が解任、閣僚級の幹部も食品検査態勢の不備を指摘されて事実上、更迭された。党関係者は「閣僚のクビを切ってでも態勢を立て直す姿勢を示さなければ、子育て中の両親の怒りは鎮まらない」と語る。
胡指導部が厳しい姿勢で臨むのは、これ以上、民衆の不満が拡大すれば政権批判につながりかねないと懸念しているためだ。北京外交筋は「中国は五輪成功を掲げて社会問題を力ずくで抑え込んできた。そのタガがはずれた今、ちょっとした事件や事故で抑えていた民衆の不満に火がつくことを最も恐れている」と指摘する。