(cache) 野中広務　差別と権力　魚住昭　講談社文庫

2008-04-21

野中広務　差別と権力　魚住昭　講談社文庫

自民党関係 | 23:50 |

野中広務差別と権力 (講談社文庫)

作者: 魚住昭
出版社/メーカー: 講談社
発売日: 2006/05/16
メディア: 文庫

感想文を書く糸口がつかめなかったのでほったらかしにしていた。

今日、改めて書いてみようと思ったのには、２つのきっかけがあった。

1つ目は、以前放送の『ＴＶタックル』での

政治評論家の三宅氏と元参議院議員、平野貞夫氏の

やりとりの中で、参議院の過半数を取った小沢民主党による

公明党潰しの戦略について言及されていたことである。

番組構成は、公明党の政教分離問題を、参議院議員で問題にすることで

自公連立与党に揺さぶりをかけていくだろうと流れだった。

その流れのなかで橋本政権時代の野中広務氏による

公明党への対策が三宅氏からちょこっと語られていた。

その対策というのはこの本に実に詳しく、政治家ならではの凄まじい搦め手である。

以下、適当にまとめて紹介したい。

1996年の自民党橋本政権時代、小選挙区比例代表制が導入されて、

旧公明党系衆院議員は、衆議院において大幅に議席を減らした。

しかし、一方で一人区では全国に600万票あるといわれる創価学会票が、

当落を決する重要性をもつことが明らかとなった。

よって与野党の議員が学会詣でを始めるようになり、その影響力は今も変わっていない。

そこで、池田大作氏主導のもと、公明党議員が小沢新進党に

漸次合流し、政権奪還をもくろむという話が進みはじめた。

それに対して野中氏は、「静穏保持法」という法律を持ち出して、

公明党議員の小沢新進党への合流を、力ずくで阻止したのである。

「静穏保持法」という法律は、政党事務所周辺で拡声器の使用を禁ずる法律である。

公明党の本部と池田氏の私邸のある信濃町は、この法律によって

右翼の街宣車から守られていたのだが、公明党が、新進党に合流すると

信濃町に、衆参議員のいずれかが所属することが存在条件の政党事務所がなくなり、

池田氏の私邸が、街宣活動の餌食になるということを

野中氏が調べ上げて、指摘し、合流をとめたという話である。

新進党への公明党の合流を、誰も気づかなかった「静穏維持法」を持ち出して

ご破算にしたところに、野中氏の政治家としての執念と迫力を感じた。

他にも、学会発行の『聖教グラフ』の表紙の定番は、

外国の要人と（マルローとか）と映る池田氏の写真なのだが、その背景に映りこんだ

ルノアールやマチスの有名絵画を野中氏は創刊号から調べさせた。

それらを、学会の届け出資産と照会し、資産として届け出のない絵が存在すると

それとなくほのめかして、学会に恐怖感を植え付け、それを糸口に容喙していったという。

このような搦め手の手法で、野中氏が学会との太いパイプを強引に作り上げたらしい。

凄まじい情報収集能力と因縁のつけ方である。

私は、こういう迫力ある駆け引きに関する政治家の逸話が結構好きである。

役人相手の賭け麻雀でわざと負けて貸しを作るようなことも得意だったらしい。

2つ目は、元大本営参謀で、伊藤忠元会長の瀬島龍三が95歳で亡くなったことだ。

この本の著者、魚住昭氏は共同通信社会部時代に

『沈黙のファイル　瀬島龍三となんだったのか？』を共著で上梓している。

私は、この本を読んで、元大本営参謀の過去を

戦後に己の武器として生きぬいた瀬島龍三に興味を持ち、

保阪正康氏の『瀬島龍三　参謀の昭和史』や読んだり

未読だが瀬島龍三自身の回想録『幾山河』を購入したりした。

『野中広務　差別と権力』の佐高信による解説に、

社会部長の魚住氏が、『沈黙のファイル』の取材に行ったら、

瀬島氏から＜俺のところへ取材を申し込むのは、大体、社長か編集長だ。

君は社会部長じゃないか、帰れ＞と意味ことを言われ、

「こんな尊大な人にあったのは、初めてだった」

と思ったという逸話が紹介されている。

戦争責任を感じていればひっそり暮らすだろうに。

どういう神経で生きていたのだろう。かなり興味がある。

大本営参謀としての瀬島龍三については、『台湾沖航空作戦の電報にぎりつぶし』や

『東京裁判へのソ連検事証人としての出廷の経緯』、『労働力提供の密約』などいまもなお

謎と疑惑につつまれているようだが、今後、真実が明らかになれば面白い。

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野中広務 差別と権力 魚住昭 講談社文庫

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