第二京阪道路(京都市伏見区−大阪府門真市)の建設予定地に位置する北巣本保育園(門真市)の野菜畑を撤去する大阪府の行政代執行が16日早朝から始まった。保育園側は2週間後に近くの保育園と合同でこの野菜畑を使ったイモ掘り行事を控えており、職員ら約50人が「子供たちの野菜を奪わないで」と反対の声をあげたが、府は代執行を強行。園児らが育てた野菜を刈り取り、敷地の立ち入り禁止措置を取った。
■写真で見る■ 壊されていく畑を必死で守ろうとする保育園関係者
橋下徹知事は「府はこれまで誠実に交渉してきた。供用開始が遅れると通行料で6億、7億円の損害が出る。申し訳ないが理解していただきたい」とコメント。「イモ掘り行事まで待ってほしい」という要望には「なぜ2週間早くイモ掘りをしなかったのか。もっと早く園児を喜ばせる方法があったはずだ」と保育園側の対応を批判した。
これに対し、野菜畑の所有者で同園理事の松本剛一さん(49)は「イモがちゃんと育つにはあと2週間はかかるし、そもそも代執行の通知があったのは10日前で行事変更にも無理があった。府の都合で子供の気持ちを踏みにじったのは許せない」と怒りを隠しきれない様子だった。
代執行はこの日、午前7時半から開始。府職員ら約100人がシャベルやカマなどで園児らが今春から育ててきたサツマイモやトマトなどを刈り取った。作物は段ボールに入れられ、府が保管。園側の要望があれば返却されるという。
保育園の職員や保護者らは「子供たちが育てたお野菜です」などと記されたプラカードを掲げ「子供たちの野菜を奪う権利が橋下知事にあるのか」と声をあげ、あたりは一時騒然となったが、府は周囲をフェンスで囲い、敷地内を立ち入り禁止とする措置を取った。野菜畑には登園前の園児も立ち寄っていたが刈り取られた野菜を前に涙ぐむ場面も見られた。
野菜畑は約20年前から園児用の菜園として利用。第二京阪の建設のため、平成15年から用地買収の交渉が始まっていたが、保育園側は「大切な食育の場」と拒絶していた。
府は今月6日、強制的に撤去させる代執行令書を保育園側に交付。園側は立ち退き取り消しを求めた裁判を起こした。訴訟はまだ係争中で、大阪高裁が30日に決定を出す予定となっているが、府は高裁決定を待たずに代執行に踏み切った。
【関連記事】
・
橋下知事、負担金を「まけてとはいえない」 第2京阪道の整備促進
・
橋下知事“迷走” 府庁舎問題3案で
・
大阪市議会改革は進むか 議会改革めぐり府と市で格差拡大
・
橋下知事“保護者として”学テ説明会に参加 市教委を批判
・
橋下知事「県民の感覚尊重」と理解 東国原氏不出馬で