カンボジア、タイ国境線にあり、世界遺産に登録されたクメール寺院プレアビヒア周辺地帯の主権論争に関連し、カンボジア軍当局者は15日、両国軍が係争地の2カ所で同日、銃撃戦を交わしたと述べた。寺院周辺での両国軍の交戦は10月3日以降、初めて。両国は戦闘発生で相手国の責任を非難している。
タイ陸軍報道官によると、戦闘は現地時間の午後2時半ごろ発生、約40分続いた後、終わった。カンボジア兵士1人が死亡、タイ兵士4人が負傷したと述べた。複数のタイ軍兵士が死亡したとの情報もある。
戦闘に参加した両国軍兵力の規模は分かっていない。3日の衝突では兵士3人が負傷していた。
カンボジア軍当局者は15日、同国軍兵士はタイ軍の領土侵犯を防ごうとしたが、タイ軍がいきなり発砲してきたと主張、激しい銃撃戦になったと述べた。タイ陸軍報道官はカンボジア軍が最初に銃撃したと反論した。AP通信によると、タイ軍は全国の空軍基地で戦闘機に待機態勢を命令した。
一方、タイ軍当局者はCNNに対し、事態悪化を防ぐためカンボジア軍と緊急協議を開くことを計画していると述べた。
カンボジア国防省は14日、タイ軍が領有権を争う地帯から撤収したと述べていた。同地帯から約1キロ退いたとしていたが、タイ軍が兵力数百人を再配置し、にらみ合いが続いていた。カンボジアのフン・セン首相は13日、タイのソムポン副首相兼外相と会談、タイ軍のカンボジア領侵入を指摘し、カンボジア時間の14日正午まで撤退しない場合、「戦争」が発生すると警告していた。
カンボジア政府はこれまで論争解決のため、タイに事務レベル協議を呼び掛けると共に、国連安全保障理事会や国際司法裁判所への問題提起を示唆していた。
11世紀に建立された同寺院は国際司法裁判所が1962年、カンボジア領と認定したが、周辺の領有権争いは続いた。カンボジアは昨年、寺院の世界遺産登録を単独申請。タイ政府は6月、これにいったん同意したが、政局絡みで野党が強く反発、国内世論でも反対論がくすぶり、結局は撤回した。登録は7月に決定したが、外相が辞任に追い込まれる影響も出ていた。
7月中旬には、寺院境内に無断で侵入したとしてタイ人僧侶ら3人が拘束され、タイ軍が兵士を動員して解放を要求、カンボジア軍が増派で対抗するなど緊張が高まっていた。一触即発の場面もあったが、交戦には発展しなかった。8月には対じしていた両軍が撤収作業を開始している。カンボジアは兵士約800人を動員、タイ側は約400人を展開していた。