【バンコク藤田悟】カンボジア・タイ国境にあるヒンズー寺院遺跡「プレアビヒア」近くで15日、両軍の銃撃戦が発生した。カンボジア兵士2人が死亡、6人が負傷し、タイ兵士7人が負傷した。両国は互いに相手側が最初に発砲したと非難し、両国関係は急速に険悪化している。
銃撃戦が起きたのは寺院から約2.5キロ西の地点で、約1時間にわたって銃やロケット弾を撃ち合った。今月3日にも同じ地点で銃撃戦があり、兵士3人が負傷した。カンボジア軍によると、国境を侵犯したタイ兵士10人を拘束した。タイ側は否定している。
タイ外務省は、バンコク駐在のカンボジア大使代理を呼び抗議した。ソムポン外相は「用のないタイ国民はカンボジアから出国するよう」呼びかけた。事態がさらに悪化すればカンボジアからタイ国民を緊急避難させるという。
遺跡付近は国境線が未確定で、両国が領有権を争っている。13日にカンボジア側がタイ兵士の「国境侵犯」を非難して撤退を要求したのに対し、タイ側がこれを拒否し、約80人だった兵員を500人に増強。両軍が国境付近でにらみ合う状態となり、緊張が高まっていた。
事態悪化の背景には、カンボジア側がタイの内政混乱に乗じて攻勢をかけ、優位に立とうとしたことがある。一方、タイ政府にとってカンボジアとの対立は国民の目を国内問題からそらす材料になることもあり、真っ向から対決姿勢を打ち出した。
毎日新聞 2008年10月15日 20時08分(最終更新 10月15日 23時09分)