【カブール栗田慎一】日本人男性医師が第三者から卵子の提供を受け、インド人女性に代理出産を依頼して7月に女児が誕生したものの、女児が出国できなくなっている問題で、インド政府は、代理出産に関する法律の未整備が問題を複雑にした背景とみて、代理出産した女性への謝礼を含めた現金授受を禁じる新法の制定に着手した。2カ月以内に草案を公表し、国民から議論を募る。
新法草案は、腎臓など臓器売買を防ぐため現金授受を禁じた法律と類似の内容になるとみられる。保健省幹部は「(今回の日本人医師の女児の問題と)同じ問題が続発する恐れがある」と法制化の理由を述べ、今回の問題が、インド政府に代理出産に関する法整備を迫る結果となった。
インド政府はこれまでも、商業目的の代理出産を認めないとしてきた。しかしインドの代理出産する女性に支払われる平均的な謝礼は約60万円前後と、欧米などの外国人にとっては安価であることから、依頼が年2000件にも及ぶなど商業化も誘発していた。日本人医師も代理出産した女性らに、地元の人々にとっては高額な「報酬」を支払ったとされる。
一方、インド外務省幹部は毎日新聞に対し、近く女児に旅券や渡航証明書を発行するか否かの結論を出すと述べた。新法制定を政府が決めたことで、女児は特例的に旅券を受給できる可能性が強まった。
しかし、日本人医師の弁護士は「女児出国には親権者の確定も不可欠」としており、旅券が発行されても女児の帰国にはさらに時間がかかる可能性もある。
毎日新聞 2008年10月15日 東京朝刊