10月1日、マウスコンピューターとiiyamaは合併し、iiyamaはマウスコンピューターの一事業部として液晶ディスプレイ等の販売を行なっていくこととなった(存続会社はマウスコンピューター)。両社の合併は今年(2008年)の3月31日付けで発表されていたもので、マウスコンピューターでは現在「合併記念キャンペーン」を10月31日まで開催している。 iiyamaの前身となるイーヤマ販売、その基となったイーヤマと言えば、Windows 3.xの登場で大画面が求められた時に、それまで高嶺の花だった17型や20型といった大型CRTディスプレイを、いちはやく一般ユーザーにも手の届く価格で販売したことで知られる。その後、ディスプレイの主流がCRTから液晶へと移行する波に乗り遅れて苦境に陥り、マウスコンピューターの持ち株会社であるMCJの傘下に入っていた。 一方、マウスコンピューターは、BTOやホワイトボックスPCのイメージが強く、大手流通業者と組んだOEM販売で実績を上げている。最近の話題では、わが国のPCベンダとして初めてネットブック「LuvBook U100」を発売したことが挙げられる。先月末には第2弾となる「LB-G1000」を発表するなど、日本勢のなかでは珍しくネットブックに積極的な会社だ。 合併したiiyamaの将来と、ネットブック市場への姿勢を中心に、マウスコンピューターの代表取締役である小松永門(ひさと)社長に話をうかがった。 ●積極的に再生を狙うiiyama
まずマウスコンピューターとiiyamaの合併だが、その背景には存在感を高める海外メーカーがあるという。それまでマザーボードやグラフィックスカードといった、パーツでは大きな存在であったものの、ディスプレイや完成品PCメーカーとしてはあまり大きな存在ではなかった台湾のメーカーが、低価格のワイド液晶ディスプレイとネットブックのヒットを契機にわが国でも存在感を増しつつある。 こうした動きに対し、国内のPCベンダとして生き残りを果たすには、経営の効率化が欠かせない。マウスコンピューターとiiyamaが合併することで、間接部門の統合といった効果のほか、iiyamaの飯山事業所をマウスコンピューターのBTO拠点として活用するなどして資産効率を高め、事業の競争力を向上させることが合併の目的だという。 また、液晶ディスプレイはPCに不可欠な周辺機器であり、PC事業を展開する上でのコア事業に数えられることも、合併価値を高めるとのことであった。iiyamaブランドのディスプレイには、国内ブランドとしての安心感、日本語メニュー構成の使いやすさ、高い価格性能比など、マウスコンピューターと通じるものがあり、両社のシナジー効果が期待できる。 ではマウスコンピューターの一事業部として、iiyamaはどのような事業展開を目指すのか。当面、力を入れるのは24〜26型の大型液晶ディスプレイで、単体ディスプレイとして販売するほか、マウスコンピューター製の本体とのバンドル販売を強化する方針だ。 iiyamaは、単体ディスプレイとして、欧州で高い知名度があり、引き続きこの路線を堅持する。と同時に、この数年でやや後退した感のある国内販売のテコ入れが急務だ。広告展開の強化、メディアへの露出増大など、まずディスプレイブランドとしての復活を目指す。 主力とする24〜26型クラスの下のサイズについては、環境対策を強化したエコディスプレイなどテーマ性のある製品企画、あるいはLEDバックライトの採用など新しい技術のいち早い投入を行いたいとしている。 小松社長によれば「一言で言えば、先端でありながらバリュープライスがiiyamaの特徴」ということだ。
バンドル販売についても、こうしたイーヤマブランドディスプレイの性格に合わせた形となる。つまり、小型から大型まで、マウスコンピューターのPCに付属するディスプレイのブランドがすべてイーヤマになるというのではなく、標準でバンドルされるディスプレイに対し、差額を追加することでイーヤマブランドの大型ディスプレイに変わる、というイメージだ。逆に、サードパーティ製ディスプレイのバンドルがなくなるわけでもなく、ユーザーに好きなディスプレイを選択してもらえるようにする点には変わりはない、ということであった。 現在、デスクトップPCの分野では、大手を中心にディスプレイ一体型が目立つようになっている。もしマウスコンピューターが一体型を手がけるのであれば、それはイーヤマブランドになる可能性が高い、ということであったが、だからといって今すぐにディスプレイ一体型を手がける予定はないという。現時点で検討されているのは、ディスプレイと一体化できるような小型の、しかしセパレートタイプのPCを展開することのようだ。VESAのマウント互換にすることで一体化が可能だし、分離型の方がPC側のスペックを変更しやすいという利点がある。 iiyamaの液晶ディスプレイは、現時点では大手量販店の店頭や通販サイトでも見ることができないという寂しい状態にあるが、これらも早い時期に改善されるだろう。一時はPCユーザーの間に確固とした地位を確立していたブランドだけに、その存在感を取り戻してほしいと思う。 ●位置づけの異なるネットブック2機種 さて、国内ベンダとして初めて投入したネットブックだが、最初のモデルとなった「LuvBook U100」を投入して2カ月あまりが経過した。国内ベンダの多くがネットブックに尻込みする中、発売に踏み切ったのは社員からも欲しいという声があがるほどで、市場のニーズが高いと見て取ったからだという。 しかし、そんな同社でさえ販売数量の見込みが控えめすぎて、初期において十分な供給ができなかった。発売当初のニーズは、マウスコンピューターが想定していた販売台数の10倍近かったのではないかと見ている。つまり、発注した製品が十分に届かなかったわけではなく、発注自体も需要に対して少なかったようだ。それほど、圧倒的な勢いで注文が集まったらしい。 気になるのは、こうしたネットブックのヒットが、上位ノートPCの市場を侵食したのではないか、ということだ。マウスコンピューターの製品では、12.1型液晶を採用するm-Book PRシリーズが、携帯性の点で最も近い製品となるが、意外なことに売上げに影響はほとんど見られないという。m-Book PRシリーズはCore 2 Duoプロセッサを採用し、価格が2倍以上の129,780円からとなるせいか、両者は住み分けているのだろう。 マウスコンピューターの販売ルートは、エディオングループやノジマ、あるいはコジマといった量販店に加え、自社のオンラインショップによるBTO販売がある。つまり全国から注文を受けられるわけだが、現時点でネットブックの購入者は、圧倒的に東京を中心とした関東圏で占められているという。正確な統計はないそうだが、感覚的には6割程度が首都圏在住者らしい。通勤/通学時間の長い首都圏に持ち歩きPCの需要が高いからなのか、理由はハッキリしないが、逆に言えばまだ今後も市場の伸びが期待できる、ということだろう。
そうした需要を見越したわけではないのだろうが、同社は9月19日に2機種目となるネットブック、「LB-G1000」を発表した。 両方白い筐体なので、ちょっと見ただけでは違いはわからないが、ボディの形状やインターフェイスの配置などは異なっており、ODM/OEMしているベンダーは異なっているようだが、これについては教えてもらえなかった。 ご存じのようにネットブックはCPUとチップセットに選択肢が事実上存在せず、差別化のポイントはストレージデバイスのほか、ディスプレイサイズと筐体サイズ、それからくるキーボードの大きさと配置などに限られる。 LB-G1000は、LuvBook U100と同じ10.2型ディスプレイを採用しており、筐体サイズはほぼ同じだ。主な変更点はHDD容量が2倍(160GB)になったこと、標準バッテリが3セルから6セルになり、バッテリ駆動時間が4.5時間になったこと、の2点だと言っていい。比較的大きな筐体ということもあり、6セルバッテリは無理なく収まっている。 この近似したスペックから、てっきり筆者はLB-G1000はLuvBook U100の後継となるのだと思っていたのだが、両者は併売されるのだという。店頭ルートやオンラインショップにおいて、パッケージ販売される主力が新しいLB-G1000になる一方で、LuvBook U100はBTO対応のシステムとして販売が継続される、ということだった。おおざっぱに言えば、LG-G1000がマス販売向け、LuvBook U100はBTO中心に応用向けという位置づけのようだ。 ハードウェアスペックでの差異化が難しいネットブックでBTOとはどういうことなのかと思ったら、企業ユーザーからネットブックにWindows XP Professionalを乗せて欲しい、というリクエストが寄せられているのだという。通常ネットブックに使われているWindows XP Home Editionは、MicrosoftのいうULCPC向けの低価格ライセンスを適用して搭載されている。これを他のOSにすると、OSのライセンス料だけでも割高になってしまうのだが、それでも構わないのだという。こうした顧客向けに、Officeアプリケーションの有無、HDD容量の変更などのBTOオプションを含めて、カスタマイズ対応するのがLuvBook U100になる、ということであった。現に、このモデルはインタビュー後の10月7日に製品として発表されている。Professional化に伴う差額は2万円だ。 ネットブックの位置づけについては、「コンテンツやデータを作るのであれば従来のPC、Webをベースにインターネットを楽しむのであればネットブックという使い分けになるのではないか。ネットブックはガジェットデバイス的な位置づけと言っても良い」と言う。 東芝が正式に国内市場に参入するなど動きの激しいネットブック市場だが、まだまだ広がりを見せそうだ。この市場にいち早く先鞭をつけたマウスコンピューターが次に何をするのか見守っていきたい。
□マウスコンピューターのホームページ (2008年10月14日) [Reported by 元麻布春男]
【PC Watchホームページ】
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