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ノーベル賞:物理学賞・南部陽一郎さん、87歳ながらかくしゃく /大阪

 ◇PC持参で歩いて阪大へ

 日本出身者としてノーベル賞受賞時の年齢が最高齢のシカゴ大名誉教授、南部陽一郎さん(87)=米国籍=は、大阪に縁の深い研究者だ。大阪市立大名誉教授で、03年10月からは大阪大の「招へい教授」も務める。約10年前から、帰国すると阪大理学部(豊中市)に通って研究を続けている。毎年2回、春と秋にそれぞれ1~2カ月ほど滞在し、セミナーなどで学生にも直接指導している。

 阪大理学部長の東島清教授によると、南部教授は飾らない人柄で、周囲に気を使わせることを嫌う。「迎えの車を出そうと言っても断るでしょう」

 南部さんほどの年齢の学者になると、パソコンを使いこなせず、論文を他人にタイプさせる人が多い。だが南部さんは、バッグを肩に、ノートパソコン持参で1人で歩いてキャンパスに現れる。そしてパソコンで論文を書き、インターネットでの検索もこなす。

 昼食は大学の近くで弁当を買い、理学部内のサロンで食べる。学生と一緒に弁当を食べる「昼食会」では、研究の話はあまりせず、有名な学者の裏話を明かしたり、戦争当時の思い出などを気さくに話すという。

 大学院生の堀田暁介さん(26)は「私たちにとっては雲の上の偉大な人。一緒に写真を撮らせてもらい感激しました。優しく穏やかな方です」と話す。

 東島教授は「自らの業績を語らない謙虚な方。居心地が良いようにこちらもあえて特別扱いをしないようにしています」と話している。【日野行介】

 ◇「磁石テーブル見て」--大阪市立科学館

 大阪市立科学館(大阪市北区)に、「磁石のテーブル」という展示物がある。南部さんの理論「対称性の自発的破れ」を、目に見える形で示す装置だ。南部さんも05年12月、同館を訪れ装置に触れた。考案した学芸員、斎藤吉彦さん(52)は「難しい装置なので来館者にあまり見てもらえなかったが、これを契機に興味を持ってもらえるのでは」と笑う。

 来館は、斎藤さんが05年、面識のない南部さんに「磁石のテーブル」についての論文を送ったのがきっかけ。南部さんは「ぜひ見たい」と返信し、同年末の帰国時に1人で科学館に現れた。

 装置は、球形の方位磁石1000個を円卓の盤上に並べたもの。楽しそうに装置で実験した南部さんは、館内にあるアインシュタインの像にふらりと近寄ると、隣に腰かけ肩を組んだ。後日、斎藤さんに送られてきたメールには、「私自身いくつかの問題を考えました」と、装置を見て浮かんだ疑問が6点、記されていた。

 「誰もが認めるえらい人なのに、われわれのような素人の話にも真剣に付き合ってくれる。すごい人、すばらしい人です」と、斎藤さんは振り返った。【中本泰代】(写真はいずれも斎藤吉彦さん提供)

毎日新聞 2008年10月10日 地方版

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