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発信箱:流通していていいのか=磯崎由美

 またも幼い命が犠牲になった。三重県伊勢市の村田由佳さん(47)は9月9日、弁護士に「兵庫県でミニカップ入りこんにゃくゼリーを食べた1歳男児が脳死状態」と知らされ、全身の力が抜けていくのを感じた。

 村田さんの長男龍之介君は7歳だった。昨年3月、学童保育所でおやつに出されたこんにゃくゼリーをのどに詰まらせ亡くなった。両親が泣き暮れる日々から立ち上がり、実名を公表し提訴したのは、12年も前から窒息死が相次いでいたと知ったからだ。法の不備で製造中止はかなわず、裁判は和解した。

 国民生活センターは9月30日、兵庫の男児を17人目の死亡例として発表した。数字は被害の一部に過ぎないだろう。実際、村田さんは龍之介君の葬儀で参列者から統計に上っていない死者がいると聞き、のち事実が確認できた例もある。子や孫に与えてしまい、自分を責め、泣き寝入りしている家族もいる。だが、問題は子どもや高齢者が口にすると危険な「おやつ」が流通していることだ。

 龍之介君の事故後、業界は袋に警告を表示して販売を続けた。1年後に繰り返された今回の事故で、マンナンライフはミニカップ型の製造中止を決めた。だが製品自体の危険性は認めず、既に流通しているものは回収しないという。消費者保護の精神からはほど遠い。

 「餅はどうするのか」「交通事故の方が多い。車も製造中止か」。そんな批判も村田さんの耳に届く。「私も龍之介を失うまで消費者被害を身近な事とは感じていなかった。どうか皆さん机の上だけで考えず、もしわが子や孫が口に入れてしまったら、と想像してください」(生活報道センター)

毎日新聞 2008年10月8日 東京朝刊

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