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遠距離介護、独りで背負わないで

 NPO(民間非営利団体)のパオッコと住友生命社会福祉事業団は10月5日、東京都港区で「働きながら故郷の親を介護する」をテーマに遠距離介護セミナーを開催した。

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 「お悩み軽減ディスカッション」と題して、熊本市地域包括支援センターの若宮邦彦氏と太田差惠子パオッコ理事長が、仕事をしながら遠距離介護をする男性と女性から話を聞いた。
 Tさん(50歳代・男性)は東京在住で、熊本市に要支援1の父と障害者1級の母がいる。東京と大阪で働く兄弟と順番を決めて帰省している。若宮氏は現在、Tさんの両親を担当するケアマネジャーだが、「大都市に住む方からの相談が増えている。そばにいられないというプレッシャーが共通してある」と指摘。「介護関連機関につながないと、介護者がつぶれてしまう」と述べた。
 東京在住のSさん(40歳代・女性)は、認知症で要介護5の父親が高松市にいる。特別養護老人ホームに入居しており、帰省は1−2か月ごとだ。母は亡くなっており、兄弟はいない。自分の仕事の転機と親の介護が重なり、葛藤してきたという。

 仕事をしながらの介護では、休暇の取得が壁になるという。2005年に育児・介護休業法が施行されても、休みを取るのは難しいという。太田理事長は育児休暇などへの理解が進んでいるとし、「まず、会社の介護休業の規定などを調べ、職場の理解を得ることも大切では」と述べたが、会場からは「中小企業では配慮してもらえず、職場に根回しをしても介護休暇を取りにくい」との意見も出た。
 距離の離れた親とのコミュニケーションのあり方もテーマとなった。若宮氏は、「親と子の連絡は電話になるが、お互いに心配を掛けないように問題を直接話さない」と指摘。地域包括支援センターでも親と子の情報の共有化などを支援していく考えを示した。
 Sさんは父親の介護で精神的に追い詰められ、ショートステイ施設に入居させようと考えたが、思いとどまった。「間違った考えだが、父とのきずなが切れるのが怖かった」という。父との仲は悪かったが、介護と濃密なやりとりを通じ、等身大の父が見えてからは、仲を直せたという。

 まとめとして若宮氏は、「自分の生活を投げ出して、思いだけで介護をやろうとしてもうまくいかない。いろいろなサービスを活用してほしい」と訴えた。太田理事長は、介護は順位付けをすべきだとし、「自分が倒れれば介護などできない。一番大切なのは自分。次に同居の家族。その次に親なのではないか」と語った。

 続いて、「遠距離介護と仕事の両立」というテーマで、元日本テレビアナウンサーで日テレ学院長の石川牧子氏が講演した。
 石川さんは、仙台市に住むパーキンソン病になった母親を10年前に亡くすまで、7年間東京と往復しながら介護し、5年前に父も看取った経験を話した。「介護はどんな人の人格も壊してしまう」。父親が介護に疲れ、母を言葉で責め、時には手が出たという。「介護には出口が見えない。それが人を疲れさせる」。

 仕事を辞めないでよかったと、母を介護した当時を振り返る。「仕事を辞めさせたという負い目を、お母さんはずっと持ち続ける」と家族からも反対された。行政の担当者にも、「再就職は大変。お金がなければ、面倒を見られませんよ」とアドバイスを受けた。
 母親を特養ホームに預けた時、施設の人に「母には必ず声を掛けてください」とお願いした。病院嫌いの父は自宅療養にした。5人のヘルパーに情報を共有してもらうため、「引き継ぎノート」を置いた。父の人となりを聞くよい機会となった。父親は、親せきが集まって思い出話に花を咲かせる中、事切れたという。
 「介護は自分独りで背負わない。行政などの仕組みに頼るべき。旅行など休みを入れた方が長続きする」と指摘したほか、現実問題として、遺言もしっかり決めておくなど、残された者への配慮も必要だとした。


更新:2008/10/08 21:00   キャリアブレイン


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