社会
日本人3氏にノーベル物理学賞 素粒子理論の礎築く
南部陽一郎・米シカゴ大名誉教授=7日、米シカゴ(ロイター=共同) |
小林誠・高エネルギー加速器研究機構名誉教授=7日夜、東京都千代田区 |
益川敏英・京都大名誉教授=7日夜、京都市北区 |
【ストックホルム7日共同】スウェーデンの王立科学アカデミーは七日、二○○八年のノーベル物理学賞を、素粒子物理の「標準理論」と呼ばれる理論体系構築に重要な貢献をした南部陽一郎・米シカゴ大名誉教授(87)=東京都生まれ、米国籍=と、小林誠・高エネルギー加速器研究機構名誉教授(64)、益川敏英・京都大名誉教授(68)の三人に授与すると発表した。
日本人のノーベル賞受賞は、〇二年の小柴昌俊東京大特別栄誉教授(物理学賞)と田中耕一島津製作所フェロー(化学賞)以来で計十五人。物理学賞受賞者はこれで七人となる。日本人による共同受賞は初めて。しかも授賞枠の三人を独占したのも初となる。理論物理学は日本が得意とする分野で、一九四九年の故湯川秀樹博士、六五年の故朝永振一郎博士に次ぐ受賞。
授賞式は十二月十日にストックホルムで開かれ、賞金一千万クローナ(約一億四千万円)は南部氏に二分の一、小林、益川両氏に四分の一ずつ贈られる。
南部氏の授賞理由は「素粒子物理学と核物理学における自発的対称性の破れの発見」。小林、益川両氏の授賞理由は「クォークが自然界に少なくとも三世代以上あることを予言する、対称性の破れの起源の発見」。
三氏が提案した「対称性の破れ」という概念はそれぞれ、宇宙が現在のような姿であることを説明するのに欠かせない理論となっている。
南部氏は、物質を構成する最小単位を扱う素粒子論で半世紀余り世界をリード。長く米国で研究生活を続け、七〇年に米国籍を取得した。特に南部氏が提唱した「自発的対称性の破れ」は、本来質量を持たない素粒子が、質量を獲得するための基本的メカニズムとして注目されてきた。
南部氏は、米シカゴの自宅で「毎年のことで期待していなかった。ちょっと驚いた。大変光栄です」と話した。
小林、益川両氏は、ともに京都大助手だった七三年、素粒子のクォークは少なくとも六種類あり、互いに変身し合うという「小林・益川理論」を発表。当時はクォークがまだ三種類しか見つかっていなかったが、残る三種類は、その後の実験ですべて見つかった。
また小林・益川理論は、クォークが変身し合うため、物質を構成する「粒子」と電気的性質が反対の「反粒子」の振る舞いに差が出る「CP対称性の破れ」という現象を矛盾なく説明した。
都内で記者会見した小林氏は「突然のことで大変驚いている。信じられない気持ちです」。益川氏は京都市内で「昨年までは絶対受賞はないと思っていたが、今年はある程度は予測はしていた」と語った。
クォーク 物質を構成する基本粒子である素粒子の一群。アップとダウンの「第1世代」、チャームとストレンジの「第2世代」、小林・益川理論が予言した「第3世代」のトップとボトムの計6種類がある。原子核の中の陽子や中性子は、クォーク計3個から成る複合粒子。電子やニュートリノなど「レプトン」と呼ばれる素粒子も3世代、6種類ある。世代数が増えるほど重く、不安定になる。宇宙の大部分の物質は安定な第1世代の粒子だけでできている。素粒子には、このほか電磁気力を媒介する光子など4種類の粒子がある。さらに質量を生み出すヒッグス粒子(未発見)があると考えられている。
◆ ◆
南部 陽一郎氏(なんぶ・よういちろう)1921年1月18日、東京生まれ。旧制福井中学、旧制一高を経て42年東京大理学部物理学科卒。50年から56年まで大阪市立大教授。同教授時代に米プリンストン高等研究所に1年間滞在した。56年に米シカゴ大に招かれ、58年から同大教授。91年から名誉教授。文化勲章(78年)やイスラエルのウォルフ賞(94年)、米国のベンジャミン・フランクリンメダル(2005年)など受賞。1970年に米国籍取得。米科学アカデミー会員。シカゴ在住。87歳。
小林 誠氏(こばやし・まこと)1944年4月7日、名古屋市生まれ。63年愛知県立明和高卒、名古屋大理学部物理学科入学。故坂田昌一教授の研究室に入り、同大大学院で博士号取得。72年京都大理学部助手。79年高エネルギー物理学研究所(茨城県つくば市、現・高エネルギー加速器研究機構)助教授、85年から教授。2003年4月同機構素粒子原子核研究所長となり、06年6月から同機構名誉教授。07年10月から日本学術振興会理事。つくば市在住。64歳。
益川 敏英氏(ますかわ・としひで)1940年2月7日、名古屋市生まれ。58年名古屋市立向陽高卒、名古屋大理学部物理学科入学。故坂田昌一教授の研究室に入り、67年同大大学院で博士号取得。名大、京都大で助手、東京大原子核研究所助教授を経て80年京大基礎物理学研究所教授。90年京大理学部教授、97年から2003年3月まで基礎物理学研所長。同年4月から京都産業大教授、京大名誉教授。仁科記念賞、学士院賞などを小林誠氏と共同受賞。01年にはともに文化功労者に選ばれた。京都市在住。68歳。
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