松本哉のインタビュー

松本哉
松本哉

統一地方選挙の後半戦、JR高円寺駅周辺が騒がしかった。杉並区議選挙に出馬した松本哉が率いる一団が、自分たちの街を取り戻すため、連日連夜、サウンドシステムとDJで大音量の音楽を流したり、駅近くの路上でイベントをしたりと、路上を開放させ選挙活動をしていたのだ。彼が街を騒がせたのは、これが初めてではない。大学時代から現在にいたるまで、「法政の貧乏くささを守る会」の結成から始まり数多くのデモを行なうなどの活動をしてきた。(詳しい経歴は、本人のホームページ参照)そんな素人の乱5号店の松本店長に店先で話を聞いた。

gyaku:ちょっと気になったんですが、ここは薬屋さんだったんですか?

松本(M):化粧品屋さんがやめたあとに、そのまま貸してもらったんです。

g:面白いですね。商品棚がそのまま棚になってる。

M:助かりますよ。

g:『素人の乱』って何ですか?

M:難しいなあ。『素人の乱』っていうのは、最初始はインターネットラジオから始まったんですよ。インターネットラジオを始めた人がいて、その人はもともと俺の友達で、それからもう一人山下くんっていう古着屋の店長もいて――

松本哉

gあのビデオをやってる人ですか?

M:そうそう。あのひとも友達で、それがきっかけで最初に1号店を始めたんですよ。それをやっているうちに、もうひとつ場所が空いたから2つに分けて、他にやる人がでてきたら3号店、4号店って増えていった感じで。だから結局『素人の乱』って名前はあるけど、みんなが好き勝手にやってるような感じ。

g:じゃあ、お店はみんな別々で、同じ名前でやっているだけ?

M:そう。全部独立採算でやってる。

g:ここの通りを乗っ取っていっているような感じですけど。

M:やたら最近増えたよね。

g:カフェもありますが、コーヒーは面白いところから仕入れていますよね。

M:サパティスタね。

g:びっくりしました。フェアトレードコーヒーなのに一杯200円なんて。

M:あのコーヒーはいいですよ。だって悪いところには金が1円も流れないんだから。イレギュラーから仕入れてて、あそこはドイツの会社から仕入れてる。それで、サパティスタに直接行くわけ。悪いやつらは一度も経由してないから、同じ200円でも意味が全然違う。

g:ところで、なぜ高円寺で?

M:それはもう、たまたまです。インターネットラジオやっていた人がこの隣に住んでいたから。最初はなんてことない商店街だったんですよね。それで、この商店街でもさびれてきて空き店舗がたくさんあるから、若い人でも入れたらちょっと盛り上がるんじゃないかという話が出ていたらしいです。それでちょうど、向かいの古着屋さんの知合いづたいで紹介してもらって店を始めました。何か縁があるのかな?

g:お店の家賃もいろいろ工夫しているということを聞いたんですけど。

選挙

M:直接大家さんから借りているから、安い。それから、短期借りしたり。1号店の家賃なんて5万円でしたからね。4号店っていう3ヶ月だけ借りた店舗があって、そこは1万円でかりてましたよ。

g:こういう店をやりたい人に助言はありますか?

M:いや、ないです。勝手にやってしまえばいいと思います。

g:最近、この辺りも駅周辺を中心にかなり変わってきていますね。吉祥寺や下北沢のよういろいろな所で新しいビルが建ったり再開発が行われたりしていますが、この街はどうなっていくと思いますか?

M:街が変わるっていうのは誰かがやってるから変わるんであって、何もしないで放っておいたら大きいビルが建ったり、大きな道が通されて商店街もつぶされてしまうだろうし。でも、今のところ高円寺で店をやっている人たちや、この辺でうろうろしている人たちは大きな力があると思うんです。だから、なかなかそれはうまくいかないと思います。もっとみんなでがんばって、そういう動きをつぶして、そうならない様にもっと楽しい街にしていこうと思ってます。まだ、だいぶ頑張れるね。でも、最近ルックとかきれいになってきちゃったよね。

g:確かにパルはチェーン店が多くなってきましたね。

M:そう。ああいうの見るとあやしい感じがしてくるよね。でもこの通りにあった唯一の焼肉チェーン店はつぶれましたよ。

g:「3人デモ」のビデオを見たんですけど、あれは何だったんですか?

M:ただ歩いただけ。

g:許可を申請した時、公安は真に受けたんですか?

松本哉

M:そう。実はこれには裏があって。最初に放置自転車撤去反対の「自転車返せデモ」っていうのをやったんです。最初10人で申請したら、当日200人も来て大混乱。警察が足りなくて何でも好き放題やっちゃったから、すっかり警察が怒っちゃって。次にデモやる時には絶対許可が出ないような雰囲気だったんです。だから、警察に忠誠を誓って言うこと聞くってことを見せるために「3人デモやりたいんですけど」と申請。「嘘つけ。また100人くらい来るんだろ」って言われた。それでも「本当に3人なんです。」って言って。でも、向こうは絶対100人くらい来ると思っていたらしく、当日も機動隊も十数人用意してたんです。でもこっちは実際3人しかいなかった。1時間半歩くって申請したのに、普通に歩くのと同じスピードで行ったらから45分くらいで終わっちゃっうし。あきれてパトカーも途中で帰っちゃいましたよ。

g:で、選挙はどうでした?

M:選挙はおもしろかったですよー。作戦がすべて思いどおりにいきましたからね。街中大パニックにしてね。言いたいこと言って。

g:最終日の駅前はすごかったですね。後ろに他の候補者が大音量にして張り合って何かしてましたけど、物凄いコントラストでしたね。

M:あっちはマスゲームみたいで、何か恐かったよね。

g:結局最終日は結構人が集まってまいしたよね?あれは知合いですか?私の隣で、50歳くらいのおばさんが一生懸命踊ってましたけど。

M:いや全然。通りがかりの人ばっかり。

g:また次回出ますか?

M:まあ、気が向いたら。別に議員になろうってことじゃないですからね。なったらなったでやる事はあるんでしょうけど、それだけが目的ではないので。むしろならなくても良いくらい。デモをやると、いろいろな規制されたり警察からダメだって言われたりだとか、いやがらせもされるし。それじゃあ面白くない。選挙だと誰からも邪魔されないし、文句言われないから全部できる。それを考えたら、選挙は使えるなと思う。

g:供託金は返ってきたんですか?

M:そう。400票くらいで戻ってくることになってて、そのくらいは自信があったから。1000ちょっと入った。

g:外山恒一さんの選挙戦はどう見てましたか?

松本哉

M:あれは面白かったね。面白いんだけど、人間を作りすぎてるから、どうなんだろう。あれに賛同して集まってくる人はちょっと恐いと思います。俺は外山さん知ってるから面白かったけど。

g:今度、外山さんと一緒にイベントやるんですよね。(※5月13日終了)

M:そうそう。お互いに面白い選挙したから、どんなふうにやったか報告会。どんな風にやって、選挙で遊べるかとか。

g:これからまだお店は増えますか?

M:増えるんじゃないですか多分。ただ理想は他の街でもどんどんやって欲しいよね。でもそれを全部素人の乱がやるんじゃなくて、他の人達がどんどんテリトリーを広げていって、そういう違う街の軍団がつながっていけば、凄く街は面白くなって賑やかになっていくと思う。だって、中野にいっても街や店は知っていても、どんな人が何してるなんて分からないじゃないですか。それが、社会がよくならない理由だと思うんです。