柿本石油が営業停止 青森最大手、廉売競争負担か

チェーンが掛けられた柿本石油のセルフスタンド=青森市松森2丁目
 青森県最大手の石油小売り、柿本石油(青森市、柿本和夫社長)が6日までに、全25店舗で営業を停止した。代理人によると、既に従業員を解雇し、自己破産などの法的手続きを進めるという。取引先業者や顧客に説明はなく、「寝耳に水」の閉店に不安と怒りが渦巻いた。ガソリン安売りの先導役だっただけに、同業者は「廉売競争や店舗拡大の無理がたたったのでは」とみている。

 青森市の本社には6日朝から、取引業者が続々と駆け付けた。社屋には従業員が不在で、事情を説明する張り紙なども皆無。石油運搬車をリースしていた会社の幹部は「うわさも聞いていなかったし、寝耳に水だ」と嘆いた。

 代理人の弁護士が、行方不明になっていた柿本社長と連絡がついたのが6日夕。柿本社長は「手持ち資金が枯渇し、現金での仕入れが困難になった」として、法的整理を依頼したという。

 帝国データバンクなどによると、同社は1972年の創業で、資本金1800万円、従業員110人。スタンドはほとんどがセルフ方式で、青森県内に24カ所、二戸市に1カ所。2007年7月期の売上高は約96億円、純利益は約1300万円だった。

 青森では、安売りスタンドとして有名だった。今年3月には、ガソリン税の暫定税率の期限切れを前に、先行して1リットル当たり15円の値下げを断行して脚光を浴び、柿本社長は「顧客が2倍になった」と豪語していた。

 昨年だけで7店のスタンドを新規に出すなど急激な店舗攻勢も目立ち、積極経営を危ぶむ声もあった。商社関係者は「今はガソリンが売れない時代。廉価販売を続けていれば、逆ざやで苦しくなるのは当たり前だ」と指摘する。

 実際、台所事情は苦しく、製品を卸していた石油元売り会社は「支払いが滞りがちで、9月初めに契約を打ち切っていた」と話した。


◎「まるで夜逃げだ」憤るプリカ購入客ら

 柿本石油(青森市)の突然の営業停止で、青森県消費生活センターには6日、ガソリンのプリペイドカードなどを購入した利用客から問い合わせが殺到し、140件を超えた。

 関係者によると、柿本石油はガソリンを1リットル当たり3―1円安く買えるプリペイドカードや、洗車カード、灯油前払い券を発行していた。同センターへの相談の中には、30万円分の灯油前払い券を購入した市民からの電話もあったという。

 6日、本社に駆け付けたタクシー運転手(57)は「カードの残高は5000円以上ある。県内では断然安いのでよく利用していたが、夜逃げのようで許せない」と憤った。

 未使用残高は今後どうなるのか。青森財務事務所によると、柿本石油のような発行者が倒産などに追い込まれると、灯油前払い券は無効になるが、プリペイドカードや洗車カードは一定限度で返金される可能性がある。

 発行者は未使用残高が1000万円以上あった場合、3月末と9月末時点の残高の2分の1以上を保証金として法務局に供託するか、金融機関と保全契約を結ぶよう法律で定められている。財務局は所有者からの申し立てを一定期間受け付け、所有者への還付率などを保証金の範囲内で決定する。

 ただ、柿本石油は3月末時点で、残高のほぼ2分の1に当たる千数百万円を供託したが、9月末時点の分は届け出ていないという。
2008年10月07日火曜日

青森

経済



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