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秋葉原殺傷:「責任能力あり」精神鑑定、遺族らに通知

 東京・秋葉原の17人殺傷事件で、殺人容疑などで逮捕された静岡県裾野市の元派遣社員、加藤智大(ともひろ)容疑者(26)について、「事件当時に責任能力はあった」とする精神鑑定結果が出たことが分かった。東京地検が6日、被害者や遺族への通知を始めた。この鑑定結果を受け、加藤容疑者は拘置期限の10日、殺人、殺人未遂などの罪で起訴される見通しになった。

 同地検は、起訴前に約3カ月の鑑定留置を行い、精神鑑定を専門家に依頼していた。遺族らによると、6日午前、地検から電話があり、「責任能力があるとの鑑定が出た。10日に公判請求する」と伝えられた。

 警視庁万世橋署捜査本部の調べでは、加藤容疑者は6月8日午後0時半ごろ、千代田区外神田の歩行者天国の交差点にトラックで突入。通行人5人をはねて3人を死亡させ、さらに持っていたダガーナイフ(刃渡り約13センチ)で12人を刺し4人を死亡させた疑い。

 加藤容疑者は事件当日、重傷の女性(24)1人に対する殺人未遂容疑で現行犯逮捕され、6月20日、7人を殺害した殺人容疑で再逮捕された。さらに、9月30日、9人に重軽傷を負わせたとして、殺人未遂容疑などで追送検された。

 捜査本部によると、調べに対し、「人生のうっぷんのようなものが出てきてしまい、嫌になって事件を起こした」と動機を供述。「現実世界では嫌なことがあっても人に言えず、ネットに逃げ込んだが書き込みも無視された。現実でもネットでも孤独になり、ネット世界に自分の存在を気づかせようと思った」などと供述したという。

 被害者のタクシー運転手、湯浅洋さん(54)は「起訴されると聞いて安心した。(裁判で)裁かれる道が確定したので、少しでも納得できる結果が出ればと思う。他の遺族の人たちと協力し、裁判も傍聴したい」と心境を語った。湯浅さんは、トラックではねられた人を助けようとして駆け寄った際、後ろから刺され一時重体となっていた。【佐々木洋、古関俊樹、神澤龍二】

 ◇被害者重視示す…東京地検

 東京地検が被害者側に鑑定結果と起訴方針を通知した背景には、捜査当局が近年、被害者支援を最重要課題と位置付けていることがある。今年12月には遺族らが被告人質問などを行うことが可能になる「被害者参加制度」も始まる。今回の事件は同制度の対象にはならないが、検察として被害者重視の姿勢を改めて打ち出した形だ。

 加藤容疑者について、捜査当局は当初から「起訴に問題はない」との見方だった。▽仕事上のトラブルが発端という動機に不自然な点はない▽事前にナイフを購入したり、携帯サイトに「犯行予告」を書き込むなど計画性もある--などの証拠があったためだ。

 それでも精神鑑定を実施したのは、公判の争点が責任能力の有無に絞られる見通しだからだ。公判開始後に裁判所が精神科医に鑑定を依頼する従来のやり方では、「幼女連続誘拐殺人事件」の宮崎勤元死刑囚のケースのように裁判が長期化する恐れがあり、あえて起訴前の鑑定を選択した。

 来年5月に始まる裁判員制度では、裁判の迅速化が必要になる。鑑定実施から被害者への通知に至る今回の取り組みは、被害者支援と新制度への対応を強く意識したものといえる。【安高晋】

毎日新聞 2008年10月6日 12時59分(最終更新 10月6日 13時44分)

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