毎日新聞盗聴法誤報記事に関する公開質問状のその後


 1999年8月10日、深夜、毎日インタラクティブの誤報に関する公開質問状を出しました。公開質問状本文と以前の経過(1999/08/10〜1999/08/13)
これまでに毎日インタラクティブ、サイバー編集部から計4つの回答をいただいておりますが、残念ながら納得いく回答はいただけなかったため、8月14日、9月3日の2度にわたり、毎日新聞社宛に再度質問状を提出いたしました。

毎日新聞から9月9日になってようやく回答がありましたので、お知らせいたします。この回答へのコメントはまた別途検討いたします。

1999年9月9日

JCA-NET 印鑰 智哉(いんやく ともや)



質問状

                                                                      
1999年9月3日

毎日新聞読者室担当者様、

同封の内容の公開質問状を8月13日に配達証明で毎日新聞社宛にお送りしま
した。14日には配達されております。しかし、残念ながら、貴社からは何の
回答もありませんでした。読者からの質問を無視したものとして残念に思って
おります。

電話したところ、サイバー編集部に回され、そのサイバー編集部では責任が取
れないということで毎日新聞社宛にしたわけですが、担当部署を書かなかった
ことで返事が来なかったことと理解することにします(実際にはサイバー編集
部の田口様が確認する、と電話では聞いておりますが、その後何の返答もあり
ません)。

こちらとしてはどこの部署が責任取るかについては関心がありません。毎日新
聞としての責任を聞いているわけですが、ここ何度にも渡り、責任のたらい回
しをされ、こちらとしては電話代、郵送料、時間を無駄にせざるをえず、きわ
めて残念であるとともに貴社の対応に不満を感じております。

そこで今回は読者室責任者の方宛でお送りいたします。もし、読者室としてこ
の公開質問状に応えられない場合は、読者室責任者の責任において、責任ある
部署に送り、その部署から返答をするように対処をお願いいたします。「読者
室としては責任取れません」という返答は受け付けることはできません。

回答は以下の質問状では8月18日になっておりますが、今回は9月8日とさ
せていただきます。もし、8日までには回答が難しいという場合は、8日前ま
でにご連絡をいただけますようお願いいたします。 

JCA-NET セキュリティ委 員会
(担当 印鑰  智哉、いんやく ともや)
  tomo@jca.apc.org
 
毎日新聞盗聴法誤報記事に関する公開質問状

毎日新聞社殿、

1999年8月9日、貴社は Mainichi Interactive (http://www.mainichi. 
co.jp/) および、毎日新聞オンラインニュース速報にて以下のような報道を行
いました。

> <組織犯罪対策3法>参院法務委で自自公3党の 08/09 20:14
> 
>  犯罪捜査に電話やファクス、電子メールなどの傍受を認める通信傍受法案
> を柱とした組織犯罪対策3法案は9日夜の参院法務委員会で、自民、自由、
> 公明3党の賛成多数で可決された。同日夜の審議後、自民党が質疑打ち切り
> の動議を出したのに対し、廃案か継続審議を求める民主、共産、社民3党な
> どは採決に反対して退席したため、自民など3党で採決した。自民党などは
> 今国会で成立させる構えで、13日までの会期内成立は確実な情勢だ。(以
> 下、略)【小林 雄志】

この記事はまったく事実に基づかない重大な誤報です。

まず、この記事が発信された 8月9日20時14分時点では法務委員会はまだ動 
き始めたばかりで採択どころではありませんでした。現実に自自公が「採決」
と称している事態が起こったのはこの記事の出た40分も後です

その際も民主、共産、社民3党は退席した事実も存在しません。

もし、現場の記者を重視する方針を取っていれば、すぐにこの記事のおかしさ
は訂正できたでしょう。この件に関しましては毎日インタラクティブ編集長田
口さまから同封したような回答をいただき、さらに毎日インタラクティブの  
Website においても謝罪文が掲載されました。

この件に関して、毎日新聞社としてどのように責任をお考えかご回答ください。

次にこの記事の後貴社は22時8分に以下の記事を毎日インタラクティブ上で出 
されていますが、この記事もまた現場取材をしているのか疑わざるをえないひ
じょうに粗末な記事です。

> <組織犯罪対策3法>参院法務委で自自公3党の 08/09 22:08
> 
>  犯罪捜査に電話やファクス、電子メールなどの傍受を認める通信傍受法案
> を柱とした組織犯罪対策3法案は9日夜、参院法務委員会(荒木清寛委員  
> 長)の審議中に自民党議員が質疑打ち切り動議を出し、民主、共産、社民3
> 党が反対したが、自民、公明、自由などの賛成多数で可決された。これに対
> して民主、共産、社民3党は「審議中の暴挙で、採決は無効」と主張。民主
> 党は採決が覆らない場合は荒木委員長の解任決議案を提出、2党も同調する。
> しかし、自民党などは、同法案を11日にも本会議で可決、成立させる構え
> だ。(以下、略)【小林 雄志】

まず、「自民党議員が質疑打ち切り動議を出し、」とありますがこれは議場で
はまったく確認されていません。なおさら、「民主、共産、社民3党が反対し
たが」とありますが議場で確認されていない動議に反対しようがありません。
こちらでは確認しましたが、3党は動議を確認しておりません。

この件に関しまして、毎日インタラクティブ編集部の田口様からは編集部とし
ては職務上返答ができないということでした(同封の資料をご参考のこと)の
で、毎日新聞社として責任あるお答えをいただけますようお願いいたします。

さらに貴社は http://www.mainichi.co.jp/news/newsflash/10minutes/      
news09.html において、

> ■通信傍受法:自自公の議員に制度監視の重い責務=解説  8月10日 20:
>   50
> 
>  通信傍受法など組織犯罪対策3法は10日、参院審議の過程で浮かび上が
> ったさまざまな問題点を積み残したまま、成立した。参院法務委員会では、
> 与野党議員の怒号が飛び交う異常な状態の中で自自公が採決に踏み切るなど、
> 議論が尽くされたとはいい難い。自自公は通信傍受制度に対する重い監視の
> 責務を負ったといえる。 

という記事を発信されましたが、これもまた事実と異なります。この記事が発
信された段階ではまだ参議院本会議は始まっていなかったし、もちろん盗聴法
は成立していなかったのです。

こちらから問い合わせると、毎日インタラクティブ、サイバー編集部は当該記
事を削除したと言います。しかしこの誤報を出しておいて、単に削除すれば責
任を果たしたことになるとは到底いうことができません。

本来、公正であるべき報道機関がこのような誤報を繰り返し、ジャーナリズム
にとって、命取りであるべき盗聴法の成立を支援する結果になっていることを
強く憂うるものです。

わたしはこの誤報事件は必然的に起きたと感じております。つまり、貴社に事
実を厳しく検証して、市民の知る権利に配慮した形での公平な報道を行おうと
する確固とした姿勢が欠如していたから起きたと感じております。

そこで、貴社に以下の質問をいたします。8月18日の正午までに 郵便と   
FAX 03-3291-2876 で回答いただけますようお願いいたします。回答のない場 
合は回答のないことを Web http://www.jca.apc.org/ にて公開いたします。

1、これまで、こちらが指摘した記事(3件)に関して毎日新聞社としてその
記事をどのように認識しているのか?

2、どうしてこのような誤報記事が出されてしまったのか、その原因究明に取
り組まれること、その責任がいつ明らかになるのかその予定

3、2の結果に関する情報はどのように開示されるのか?




                                                                 1999年9月9日

                              <ご回答>

JCA-NET セキュリティ委員会
      印 鑰   智 哉 殿

                                               毎日新聞社社長室委員(広報担当)
                                                             恩 田  重 男
                                            TEL 03(3212)0125 FAX 03(3212)1609

 貴殿からいただきました公開質問状に対し、以下の通り、小職からお答え申し上げま
す。ご質問は「読者室担当者」宛にいただきましたが、毎日新聞社としての回答をお求
めですので、社長室委員(広報担当)から答えさせていただきます。なお、8月18日
までの回答を求められながら、同日までに回答しなかったことをおわびいたします。以
下の回答を、ダイレクトコートでご使用の場合は、「毎日新聞社社長室委員(広報担当)
の話」として下さい。

1、ご指摘の「毎日インタラクティブ」の2件の誤報記事については、すでに毎日イン
タラクティブ編集長からそれぞれ回答を差し上げましたように、出稿部(この場合は政
治部)が出した予定稿を、本来なら出稿部から「OK」が出た段階で出稿するべきとこ
ろを、社内の連絡ミスから、チェックが不十分のまま毎日インタラクティブに流れたも
のです。読者をはじめ関係者の皆様におわびするとともに、当該の記事を速やかに削除
したところです。今後、このようなことが二度と起こらないように努力して参る所存で
す。
 9日午後10時8分に流した原稿の「質疑打ち切り動議を出し」云々の記述について、
貴殿は、民主、共産、社民3党は動議を確認してない、とされていますが、この点につ
いて毎日新聞は「議事整理券を持った荒木清寛参院法務委員長が動議の提出、採決、可
決を判定した」とする参院議会事務局の見解に沿って報道いたしました。
                                   
 なお、こうしたいわゆる強行採決で採決のやり直しをしたという事例は、1994年
11月の301臨時国会の衆院税制特別委員会で、同月9日に採決したものを、強行採
決による騒音で「聴取不能」として2日後の11日に採決のやり直しをしたケースがあ
ります。今回もその後の与野党間の話し合いでそうした決着になれば、当然その段階で
動きをフォローしたわけですが、そのような事態には進展せず、結果的に荒木委員長解
任決議案も参院本会議で否決されました。
                                   
 今回の「組織犯罪対策3法案」審議については、毎日新聞は、動議提出、採決、可決
という事実について公正な報道をしたと考えていることを付け加えます。
                                   
2、毎日インタラクティブの2件の誤報原因については、「1」で説明したとおりです。
これらの原因の究明とともに、二度と同じような誤りをしないように、関係した各部署
の責任者で再発防止に最大限の努力をしていくことを確認いたしました。誤報の内容に
ついて、毎日インタラクティブのページ上でおわびをし、速やかに訂正・削除したこと
が周知されたことで、毎日インタラクティブ編集部ならびに毎日新聞の一応の責任を果
たしたと考えます。

3、毎日インタラクティブのページ上で誤報についてのおわびと訂正・削除をいたした
ことで、読者をはじめ関係者への毎日新聞としての謝罪も表明したと考えています。今
回の件に関して、さらに加えて開示するべき情報はないと考えております。

 終わりに、「組織犯罪対策3法」については、毎日新聞は今後も引き続き、取材・報
 道を続けていく所存でいることを申し添え、回答といたします。
                                   
                                   
                                                                          以上
(原文は FAX にていただきました。打ち間違いがあれば印鑰の責任です。)