MSN毎日インタラクティブ1周年、ネット・ジャーナリズムの可能性とは
2005/06/08
毎日新聞社は7日、マイクロソフトと共同で運営する「MSN毎日インタラクティブ」の1周年を記念し、国際シンポジウム「ネット・ジャーナリズムの可能性」を開催した。
登壇したのは、総務省情報通信政策局コンテンツ流通促進室長の奈良俊哉氏、コロンビア大学情報通信研究所所長兼教授のエリ・M・ノーム氏、オーマイニュース代表理事兼代表記者のオ・ヨンホ氏、マイクロソフト執行役MSN事業部長の塚本良江氏、NII国立情報学研究所情報基盤研究系教授の曽根原登氏、ほか。パネルディスカッションでは、甲南大学経済学部教授の佐藤治正氏がコーディネーターを務め、オ・ヨンホ氏、毎日新聞社MSN毎日インタラクティブ編集長の糟谷雅章氏が参加した。
毎日新聞社取締役デジタルメディア担当の河内孝氏 |
総務省情報通信政策局コンテンツ流通促進室長の奈良俊哉氏 |
コロンビア大学情報通信研究所所長兼教授のエリ・M・ノーム氏。「新聞社がこれだと提示しなくても、今ではコンピューターが、インターネット上のサーチエンジンで、ユーザーが求める事柄を探してくれる。ニュースの内容そのものも、この媒体のものでなければ、というほど差異が無く、米国の地下鉄には無料の新聞が置かれている。人々は、ニュースに対してお金を払いたくなくなっているのだ」 |
オーマイニュース代表理事兼代表記者のオ・ヨンホ氏。「参加型民主主義をメディアの中で実現してくれるのがオーマイニュース。全ての市民が記者であるというスローガンをたてると同時に、市民記者には正確さを求め、われわれは一日、市民記者の記事の裏取りにまわる」 |
ブログはジャーナリズムか、と近年論じられているとおり、主題となったのはネットジャーナリズムについて。一般的に、新聞紙の購読数が年々減り続ける現状について、「電子的な媒体に移行しているのではないか」という説があるが、エリ・M・ノーム氏は、「これは神話であり、そもそもニュース離れが起こっているのだ」と見る。
電報や電話、テレビ放送がジャーナリズムを変えてきたように、「今ではコンピューターが、インターネット上のサーチエンジンで、ユーザーが求める事柄を探してくれる。すなわち、新聞社がこれだと提示しなくても、コンピューターがそれらを代行してくれる。ニュースの内容そのものも、この企業のものを読まなければ、というものが無く、米国の地下鉄には無料の新聞が置かれている。人々は、ニュースに対してお金を払いたくなくなっているのだ」、と同氏。「それに対して(ニュースを提供する)コストは決して下がってはいない」と情報通信産業界不振の原因を挙げ、現状を向上させるには、新時代に見合うビジネスモデルの確立が必要だと指摘した。
その上で、「ブランド力、信頼性、ニュースを集めていく力」を、新聞紙に代表される既存メディアの強みとして取り上げたが、市民記者参加型のオンラインメディア「オーマイニュース」は、「これまでの5年間、訴訟されたり、訂正したものを数えてみれば、常勤記者が書いたものの方が多く、市民記者のものは10件に満たないし、シリアスなものではなかった。かえって普通の記者のほうが傲慢であり、誤報を出す恐れがある」と、オ・ヨンホ氏。オーマイニュースが2002年の韓国大統領選挙にも決定的な影響を示したとする。
しかしながら、「紙でもインターネットでも、読んだ人が考えて決めるのが良いと思うが、記者会見後の気の抜けた様子を動画で流すと、それだけでがらりと見る側の印象は変わってしまう。それがフェアなのかどうか」(糟谷氏)。一方で、新聞で特定企業の悪い点を書く場合でも、「周囲に反論の余地を与える、ということで、なんとか、表現方法で公的なバランスをとろうとすることもある」(佐藤氏)といった傾向が指摘されるなど、様々な議論が交わされた。
なお、塚本氏によれば、MSNインタラクティブは月間ユニークユーザー数1,200万人を突破、月間3億ページビューを記録しているという。
これについて塚本氏は、「PCと携帯電話両方をつかうユーザーが増えているが、欧米では、PCをコミュニケーションに利用しているのに対し、日本では、情報収集する場合が多く、コミュニケーションにはおおむね携帯電話を使用している。日本人は移動が多いため、細切れで情報を取得する傾向にある」と日本人ユーザーを分析。日本のライフスタイルにマッチするネットジャーナリズムをMSN毎日インタラクティブの目標に掲げた上で、「今年4月より開始したMSNビデオでは、ニュースなどを含む2〜5分の動画コンテンツを約3,000番組配信しており、これが新しい情報ニーズにあうのではないか」、と指摘する。
一方で、ネットジャーナリズムについては、「日本で、全てのユーザーが情報を発信し、ジャーナリズムをやるということは、すぐにはならないかもしれない」とし、「実現に向けてテクノロジーを提供していきたい」と語った。
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