2月5日 委員送付版

デジタル放送時代の
視聴覚障害者向け放送に関する研究会

報告書(案)

平成19年  月  日
目次

1 視聴覚障害者放送の必要性
 1の1視聴覚障害者の現状
 1の2制度的保障
 1の3高齢化の進展
 1の4ユニバーサルデザインの導入

2 放送のデジタル化による放送サービスの高度化
 2の1字幕放送機能の標準装備
 2の2音声サービスの高度化
 2の3携帯端末向けサービス
 2の4データ放送

3 視聴覚障害者向け放送の現状
 3の1総務省の取り組み
 3の1の1字幕番組・解説番組等制作費の一部助成
 3の1の2視聴覚障害者向け番組の放送努力義務化等
 3の1の3字幕放送普及行政の指針」策定
 3の1の4放送事業者への要請
 3の2字幕放送の現状
 3の2の1放送事業者による字幕拡充計画の策定
 3の2の2字幕放送時間の推移
 3の2の3字幕放送の利用状況と要望 
 3の3 手話放送の現状
 3の3の1 手話放送時間の割合の推移
 3の3の2 手話放送の利用状況と現状
 3の4解説放送の現状
 3の4の1解説放送時間の割合の推移
 3の4の2解説放送の利用状況と要望
 3の5障害者団体による取組み

4 海外の視聴覚障害者向け放送の現状
4の1アメリカの現状
 4の1の1制度概要
 4の1の2視聴覚障害者向け放送の実施率
 4の1の3その他
 4の2 イギリスの現状
 4の2の1制度概要
 4の2の2視聴覚障害者向け放送の実施率
 4の2の3その他
 4の3韓国の現状
 4の3の1制度概要
 4の3の2視聴覚障害者向け放送の実施率
 4の3の3その他
 4の4我が国と諸外国との比較
 4の4の1 言語と入力の特徴
 4の4の2生放送番組の比率
 4の4の3再放送番組の比率

5 字幕放送、手話放送、解説放送の制作上の課題
5の1字幕放送における課題
 5の1の1字幕放送番組制作上の課題
 5の1の2 人材育成
 5の1の3 緊急放送
 5の1の4ローカル局の現状
 5の2 手話放送番組における課題
 5の2の1 手話放送番組制作上の課題
 5の2の2 人材育成
 5の2の3 緊急放送
 5の3 解説放送における課題
 5の3の1解説番組の制作上の課題
 5の3の2 人材育成
 5の3の3緊急放送
 5の3の4デジタル放送のユーザーインターフェース

6 研究開発の現状
 6の1視覚障害者XML及び視覚障害者用受信端末の開発(マルチメディアブラウジング)
 6の2解説放送的サービスの充実に資する研究
 6の3視覚障害者向け放送ソフト制作技術
 6の4生字幕遅延補正方式

7 今後の視聴覚障害者向け放送の推進にあたっての提言

 7の1行政の役割
 7の1の1視聴覚障害者向け放送の推進に向けた枠組み
 7の1の2字幕、解説、手話番組制作費への助成のスキームの在り方
 7の1の3研究開発
 7の1の4高齢者への周知
 7の1の5 世論の喚起
 7の2今後の視聴覚障害者向け放送の普及に向けて
 7の2の1字幕放送、手話放送、解説放送
 7の2の2意見交換の機会の検討
 7の2の3広報の充実
 7の2の4利用者側の情報リテラシーの向上

はじめに

 平成9年11月、字幕放送へのアクセス機会の拡大に向けて、郵政省(当時)は字幕放送普及行政の指針として、「2007年までに字幕付与可能な放送番組の全てに字幕を付与する」という目標を策定した。その後、NHK及び民間放送事業者(広域を放送対象地域とする一般放送事業者)は字幕拡充計画を作成し、各自の目標を達成すべく、努力がなされている。総務省においては、平成13年9月から平成14年4月には「次世代字幕研究会」を開催し、字幕放送の拡充について検討をおこなった。さらにその後、在阪及び在名の放送事業においても字幕拡充計画を作成して達成に向けた努力がなされる等、官民一体となって、字幕放送の普及・推進に取り組んできた。

 今後、デジタル放送の進展、高齢化の進展、字幕放送の受信可能な端末の普及により、字幕放送、手話放送及び解説放送の利用者が増加することが予想されるところ、今後の技術・サービスの進展を踏まえた、字幕放送、手話及び解説放送拡充の推進に向けた施策の立案に資することを目的として、平成18年10月から「デジタル放送時代の視聴覚障害者向け放送に関する研究会」を開催した。

 「デジタル放送時代の視聴覚障害者向け放送に関する研究会」は、学識経験者、放送事業者、メーカー、障害者団体の代表者から構成され、平成18年10月から平成19年3月まで5回にわたり会合を開催し、字幕放送、手話放送及び解説放送の現状及び課題の把握、デジタル放送の進展、高齢化の進展等を踏まえた字幕放送、手話放送及び解説放送の普及方策や、字幕放送、手話放送及び解説放送の普及のための官民の役割について検討を進めてきた。

 本報告書は、その検討の成果をとりまとめたものであり、今後の視聴覚障害者向け放送の普及に向けた取り組みにおいて活用されることを期待する。

1 視聴覚障害者向け放送の必要性
1の1 視聴覚障害者の現状
  放送は、国民生活において、報道、教養、教育、娯楽、生活関連情報等を恒常的に入手できる手段として、今や欠くことのできない基幹的なメディアとなっている。これは、視聴覚障害者にとっても同様である。
  厚生労働省「平成13年身体障害児・身体障害者実態調査」によると、聴覚・言語障害者は34万6千人、視覚障害者は30万1千人となっている。
  これらの人々が、放送の効用を享受できるようにするためには、字幕放送、手話放送、解説放送の普及が重要となる。

(以下、棒グラフの説明。聴覚・言語障害者 及び 視覚障害者 の人数を示している)
聴覚・言語障害者
昭和26年 10万人 
昭和30年 13万人
昭和35年 14.1万人
昭和40年 20.4万人
昭和45年 23.5万人
昭和55年 31.7万人
昭和62年 35.4万人
平成3年 35.8万人
平成8年 35万人
平成13年 34.6万人

視覚障害者
昭和26年 12.1万人 
昭和30年 17.9万人
昭和35年 20.2万人
昭和40年 23.4万人
昭和45年 25万人
昭和55年 33.6万人
昭和62年 30.7万人 
平成3年 35.3万人
平成8年 30.5万人
平成13年 30.1万人

出典 厚生労働省 平成13年身体障害児・身体障害者実態調査結果

1の2 制度的保障
1) 放送法
  放送法(昭和25年法律第132号)第1条では、「この法律は、左に掲げる原則に従って、放送を公共の福祉に適合するように規律し、その健全な発達を図ることを目的とする」とされ、その第1号には、「放送が国民に最大限に普及されて、その効用をもたらすことを保障すること。」と放送法の目的が規定されている。これには、放送が全国において受信できるようにするだけでなく、視聴覚障害者が放送を利用できるようにすることも含まれている。
  この目的に基づき、平成9年の改正において、それまでテレビジョン多重放送において同時に放送されるテレビジョン放送の補完的利用となる放送番組をできる限り多く設けるべきとする努力義務規定が改正され、視聴覚障害者向けの字幕番組及び解説番組の放送努力義務が規定された。

【放送法第3条の2 第4項】
国内放送の放送番組の編集等
第3条の2  
4  放送事業者は、テレビジョン放送による国内放送の放送番組の編集に当たっては、静止し、又は移動する事物の瞬間的影像を視覚障害者に対して説明するための音声その他の音響を聴くことができる放送番組及び音声その他の音響を聴覚障害者に対して説明するための文字又は図形を見ることができる放送番組をできる限り多く設けるようにしなければならない。

2) 障害者基本法
  我が国における障害者のための施策に関する基本的事項を定めた法律である心身障害者対策基本法(昭和45年法律第84号)は、平成5年、障害者の自立と社会、経済、文化その他あらゆる分野への参加を促進するため大幅に改正され、法律名が障害者基本法と改められた。その後、障害者の自立と社会参加の一層の促進を図るための改正が行われ、平成16年に改正法が公布された。  
  同法第19条においては、情報の利用におけるバリアフリー化について規定されている。
 
情報の利用におけるバリアフリー化
第19条  国及び地方公共団体は、障害者が円滑に情報を利用し、及びその意思を表示できるようにするため、障害者が利用しやすい電子計算機及びその関連装置その他情報通信機器の普及、電気通信及び放送の役務の利用に関する障害者の利便の増進、障害者に対して情報を提供する施設の整備等が図られるよう必要な施策を講じなければならない。
2  国及び地方公共団体は、行政の情報化及び公共分野における情報通信技術の活用の推進に当たっては、障害者の利用の便宜が図られるよう特に配慮しなければならない。
3  電気通信及び放送その他の情報の提供に係る役務の提供並びに電子計算機及びその関連装置その他情報通信機器の製造等を行う事業者は、社会連帯の理念に基づき、当該役務の提供又は当該機器の製造等に当たっては、障害者の利用の便宜を図るよう努めなければならない。

3) 障害者権利条約
  平成13年12月、「障害者の権利及び尊厳を保護・促進するための包括的総合的な国際条約」決議が国連総会でコンセンサス採択されたことを受け、平成14年7月、ニューヨークにおいて本条約について検討するための障害者権利条約アドホック委員会第1回会合が開催された。
  その後、8回にわたるアドホック委員会開催により、本条約案の検討が行なわれ、平成18年12月13日、第61回国連総会本会議において、障害者権利条約及び議定書が採択された。
  同条約は、障害者の人権及び尊厳を保護・促進するための包括的総合的な国際条約であり、前文及び本文50条からなり、併せて個人通報制度及び調査制度に関する選択議定書も設けられている。同条約では、締約国に対し、全ての人に保障される権利が障害者にも等しく保障され、障害者の社会参加を進めるよう努めること、また条約の実施状況を監視する国際モニタリングにおいて、本条約独自の委員会を設置すること等が規定された。
  障害者が自立生活を送り、他者と同様に社会のあらゆる面へアクセスすることを可能にする「アクセシビリティ」については、同条約第9条で規定されている。
  今後、我が国においては、本条約の署名、締結に向けて、国内法令の見直しが必要かどうかも含め、検討が行われることとなっている。

Article 9 Accessibility

1. To enable persons with disabilities to live independently and participate fully in all aspects of life, States Parties shall take appropriate measures to ensure to persons with disabilities access, on an equal basis with others, to the physical environment, to transportation, to information and communications, including information and communications technologies and systems, and to other facilities and services open or provided to the public, both in urban and in rural areas. These measures, which shall include the identification and elimination of obstacles and barriers to accessibility, shall apply to, inter alia:
(a)Buildings, roads, transportation and other indoor and outdoor facilities, including schools, housing, medical facilities and workplaces;
(b)Information, communications and other services, including electronic services and emergency services.
2. States Parties shall also take appropriate measures to:
(a)Develop, promulgate and monitor the implementation of minimum standards and guidelines for the accessibility of facilities and services open or provided to the public;
(b)Ensure that private entities that offer facilities and services which are open or provided to the public take into account all aspects of accessibility for persons with disabilities;
(c)Provide training for stakeholders on accessibility issues facing persons with disabilities;
(d)Provide in buildings and other facilities open to the public signage in Braille and in easy to read and understand forms;
(e)Provide forms of live assistance and intermediaries, including guides, readers and professional sign language interpreters, to facilitate accessibility to buildings and other facilities open to the public;
(f) Promote other appropriate forms of assistance and support to persons with disabilities to ensure their access to information;
(g)Promote access for persons with disabilities to new information and communications technologies and systems, including the Internet;
(h)Promote the design, development, production and distribution of accessible information and communications technologies and systems at an early stage, so that these technologies and systems become accessible at minimum cost.

 ※長瀬修・川島聡 仮訳 平成19年1月29日
第9条 アクセシビリティ
1 締約国は、障害のある人が自立して生活すること及び生活のあらゆる側面に完全に参加することを可能にするため、障害のある人に対し、他の者との平等を基礎として、都市及び農村双方において、物理的環境、輸送機関、情報及びコミュニケーション(情報コミュニケーション技術及び情報コミュニケーションシステムを含む。)並びに公衆に開かれた又は提供される他の設備及びサービスへのアクセスを確保するための適当な措置をとる。このような措置は、アクセシビリティにとっての妨害物及び障壁を明らかにし及び撤廃することを含むものとし、特に次のことに対して適用する。
(a) 建物、道路、輸送機関その他の屋内外の設備(学校、住居、医療設備及び職場を含む。)
(b) 情報サービス、コミュニケーションサービスその他のサービス(電子サービス及び救急サービスを含む。)
2 締約国は、また、次のことのための適当な措置をとる。
(a) 公衆に開かれた又は提供される設備及びサービスのアクセシビリティに関する最低限度の基準及び指針の実施を発展させ、公表し及び監視すること。
(b) 公衆に開かれた又は提供される設備及びサービスを提供する民間主体が、障害のある人に係るアクセシビリティのあらゆる側面を考慮することを確保すること。
(c) 障害のある人が直面するアクセシビリティに係る事項についての訓練をすべての利害関係者に提供すること。
(d) 公衆に開かれた建物その他の設備において、点字表示及び読みやすく理解しやすい形式の表示を提供すること。
(e) 公衆に開かれた建物その他の設備のアクセシビリティを容易にするためのライブ支援及び仲介者(案内者、朗読者及び専門職の手話通訳者を含む。)を提供すること。
(f) 情報への障害のある人のアクセスを確保するため、障害のある人に対する他の適当な形態の援助及び支援を促進すること。
(g) 障害のある人が新たな情報コミュニケーション技術及び情報コミュニケーションシステム(インターネットを含む。)にアクセスすることを促進すること。
(h) 情報コミュニケーション技術及び情報コミュニケーションシステムが最小の費用でアクセシブルになるために、早期の段階で、アクセシブルな情報コミュニケーション技術及び情報コミュニケーションシステムの設計、開発、生産及び分配を促進すること。

1の3 高齢化の進展
 我が国の高齢化の現状をみると、平成17年10月1日現在、65歳以上の総人口は、過去最高の2,560万人となった。また、総人口に占める65歳以上の高齢者の割合は、昭和25年には5%に満たなかったが、昭和45年に7%を超え、平成6年に14%を超え、平成17年10月1日には20.04%と初めて20%を超えた。

(以下、表の説明 )
1950年 65歳以上 4114000人 総人口 83200000人
1955年 65歳以上 4748000人 総人口 89276000人
1960年 65歳以上 5350000人 総人口 93419000人
1965年 65歳以上 6181000人 総人口 98275000人
1970年 65歳以上 7331000人 総人口 103720000人
1975年 65歳以上 8866000人 総人口 111940000人
1980年 65歳以上 10648000人 総人口 117060000人
1985年 65歳以上 12469000人 総人口 121049000人
1990年 65歳以上 14927000人 総人口 123611000人
1995年 65歳以上 18276000人 総人口 125570000人
2000年 65歳以上 22040000人 総人口 126926000人
2005年 65歳以上 25672000人 総人口 127768000人
2010年 65歳以上 29412000人 総人口 127176000人
2015年 65歳以上 33781000人 総人口 125430000人
2020年 65歳以上 35899000人 総人口 122735000人
2025年 65歳以上 36354000人 総人口 119270000人
2030年 65歳以上 36670000人 総人口 115224000人
2035年 65歳以上 37249000人 総人口 110679000人
2040年 65歳以上 38527000人 総人口 105695000人
2045年 65歳以上 38407000人 総人口 100443000人
2050年 65歳以上 37641000人 総人口 95152000人
2055年 65歳以上 36463000人 総人口 89930000人

※ 各年10月1日現在人口。2005年までは、総務省統計局「国勢調査報告」人口による。
2010年以降は、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口 平成18年12月推計」総人口、年齢区分別人口「出生中位 死亡中位 推計」による。

また、全国の難聴者数に関し、社会福祉法人全国社会福祉協議会の「補聴器普及および音環境に関する調査研究報告書」(平成6年3月)には、我が国の難聴者は約600万人(人口の約5%)である旨記述され4ている。今後は、加齢による老人性難聴や弱視・失明等からの中途視聴覚障害者が増加することが予想される。
なお、聞こえの実態について、同居者がいる60歳から74歳の男女600名を対象としたアンケート結果は次のとおりである。

(以下、アンケートの結果)
1 テレビ聞こえの自己評価の結果
食事の用意の音や家族の雑談など周囲が少し騒がしいとテレビの音量が聞き取れなくなる。56.8%
テレビの音量が、番組や内容によっては普段の音量で聞き取れないことがある事を最近経験する。 45.3%
テレビの話し手がひとりの場合に比べて、特にバックに音楽や環境音などが流れている場面でよく聞き取れない。44.8%
テレビの話し手が普通の早さで話す場合に比べて、特に早口の場合よく聞き取れない。41.2%
家族とテレビを見ているとき、みんなが聞いているボリュームではもの足りないので、もう少し音量を上げたい。38.8%
テレビの話し手がひとりの場合に比べて、特に複数の人が次々に話し出すような場合でよく聞き取れない。37%
家族の人から、このごろ自分が聞いているテレビの音量が大きすぎると思われているようだ。33.3%
テレビで何を言ったのかよく聞き取れなくて、家族の人にたずねたいと思ったり、あるいは推測して自分で判断したりする。32.8%
自分の好みの音量でテレビの音を聞きたくてイヤホンやヘッドホンなどを工夫してみたことがある(工夫してみたいと思う)11/1%
家族や知人などが、私が補聴器をつけてみたらいいのにと思っているように、このごろ感ずることがある。6%

2 日常生活で聞こえにくいと感じる程度と音・声の種類
テレビの音声 49.4%
電話の受話器から出る相手の声 41.9%
家族が、離れた場所に居る自分を呼ぶ声 40.1%
電車やバスの中で、次の駅や停留所、事故などの情報を案内する放送 37.9%
公衆電話の受話器から出る相手の声 36%
駅のホームで、次の電車の行き先。事故などの情報を案内する放送 33.4%
デパートやスーパーの店員が、商品などについて説明する声 33.1%
ラジオの音声 28.5%
医師や看護師が、病気などについて説明する声 23%
役所・郵便局・病院などの窓口の人が自分を呼ぶ声 21.1%
来客を知らせるチャイムやインターホンの音 20.8%
旅館・ホテルの客室で、誰かがドアをノックする音 14.9%
電話の呼び出しの声 13.6%
コンサートなどでの音楽 7.5%
目覚まし時計の鳴る音 7.2%

出典:「高齢者の聞こえの自己評価と補聴相談対象候補者の検討」(大沼直紀、水野映子 つくば技術短期大学テクノレポート No.8 March 2001)

 さらに、高齢化の進展とともに、一人暮らし高齢者も増加傾向にある。
  平成16年現在では、65歳以上の者のいる世帯数は全世帯数の38.6%となっているが、そのうち65歳以上の者の単独世帯が20.9%を占めている。
  放送は、高齢者が災害等の緊急情報を確実に入手したり、日常生活における余暇時間を充実したりするために重要な手段である。高齢者が放送の効用を享受するために、今後ますます、視聴覚障害者向け放送に対する社会的ニーズが拡大することが予想される。

1の4 ユニバーサルデザインの導入
  平成16年12月、総務省は、「いつでも、どこでも、なんでも、だれでも」簡単にネットワークにつながるユビキタスかつユニバーサルなネット社会を2010年までに実現すべく、uJapan政策を策定した。
  同構想には、1)2010年までに国民の100%が高速または超高速を利用可能な社会に、2)2010年までに国民の80%がICT(Information Communications Technology)は課題解決に役立つと評価する社会に、3)2010年までに国民の80%がICTに安心感を得られる社会に、という3つの目標が策定された。そのうち、2)の目標の政策パッケージの「ユニバーサルデザインの導入促進」の一部である「情報アクセシビリティの確保」には、次のとおり記載されている。

・情報アクセシビリティの確保
  ホームページ等のコンテンツに関するアクセシビリティを確保するため、情報アクセシビリティに関するガイドラインのJIS化や国際提案を行うとともに、情報アクセシビリティの確保に必要な体制のモデルの普及を進める。
  また、字幕番組等の普及方策、新たな普及目標等を検討する。

(以下、フロー図の説明)
1)ユビキタスネットワーク整備により、2010年までに国民の100%が高速または超高速を利用可能な社会に
具体的施策
有線・無線のシームレスなアクセス環境の整備(電波開放、固定・移動融合、通信・放送連携等)
ブロードバンド基盤の全国的整備(ディバイド解消、地域情報化、デジタル放送、競争政策等)
実物系ネットワークの確立(電子タグ、センサーネット、情報家電、アイティーエス、ユビキタス端末等)
ネットワークコラボレーションの基盤整備(プラットフォーム、相互運用性、高信頼性、電子商取引等)

(2)ICT利活用の高度化により、2010年までに国民の80%がICTは課題解決に役立つと評価する社会に
具体的施策
ICTによる先行的社会システム改革(社会 経営革新、制度改革、電子政府自治体 等)
コンテンツの創造 流通 利用促進(流通 決済 、デジタルアーカイブ、コンテンツ創造、ソフトパワー等)
ユニバーサルデザインの導入促進(エージェント技術、ユーザーインターフェース、情報アクセシビリティ等)
ICT人材活用(人材育成、ベンチャー促進、教育改革、市民参加等)

(3)利用環境整備により、2010年までに国民の80%がICTに安心感を得られる社会に

国際戦略
国内にとどまらず、国際的な市場やネットワークを視野に入れた政策を推進(アジア・ブロードバンド計画の推進によりアジアを世界の情報拠点に)
技術戦略
重点分野の研究開発や標準化を戦略的に推進するとともに、持続的発展に向けたイノベーションを促し、国際競争力を高める

以上の施策によって、2010年には世界最先端の「ICT国家」として先導
(ここまで)

また、平成18年1月、IT戦略本部は、誰もが主体的に社会の活動に参画できるIT社会を目指し、IT新改革戦略を策定している。さらに、同年7月には、これを具体化する施策をまとめた重点計画2006を策定している。
IT新改革戦略の中では、デジタル・デバイドのないIT社会の実現に向けての目標として、次のとおり記載されている。

【目標】
2010年度までに、高齢者・障害者・外国人を含む誰もが身体的制約、知識、言語の壁を越えて、安心して生活できるように、以下のユニバーサル化を実現する。
・平等な情報へのアクセス(情報アクセスのユニバーサル化)
・自律的で円滑な移動(移動のユニバーサル化) 
・自由自在な意思疎通(コミュニケーションのユニバーサル化) 

 このように、近年では、人的デバイド解消は、視聴覚障害者向けサービスという面に加え、ユニバーサル化の実現という視点から、より広い国民に向けたサービスとして、その普及が急がれるものとなっている。

2 放送のデジタル化による放送サービスの高度化
2の1 字幕放送機能の標準装備
アナログテレビジョン放送では、字幕を見るために、専用の受信機あるいはチューナーが必要であるが、地上デジタルテレビジョン放送では、社団法人電波産業会が策定している地上デジタルテレビジョン放送運用規定において、字幕受信機能は、地上デジタルテレビ受信機能の標準仕様とされている。
 
2の2 音声サービスの多様化
アナログテレビジョン放送では、1つの放送チャンネルにつき主音声と副音声の2音声のみ多重することが可能であるため、副音声を用いてステレオ放送や二ヶ国語放送を行う場合には解説放送を行うことができず、モノラル放送の場合のみ、副音声を用いて解説放送を実施することが可能となっている。
地上デジタルテレビジョン放送では、1放送チャンネルにつき8音声まで多重することが可能となり、CD並みの高音質や、5.1チャンネル放送を楽しむことが可能となった。このように、複数音声を利用することによって、ステレオ放送の場合にも、解説放送を実施することが可能となった。

2の3 携帯端末向けサービス
地上デジタルテレビジョン放送の携帯端末向けサービス「ワンセグ」は、平成18年4月から開始された。現在、「ワンセグ」は、固定受信向けのテレビジョン放送と同一の番組をそのまま放送する「サイマル放送」として行われている。なお、「ワンセグ」受信可能な携帯端末では、字幕受信機能が装備されているものが多く、字幕放送が実施されている場合には、携帯端末で字幕放送を視聴することが可能となっている。
これにより、外出先等で音量を消してテレビを見る際に、字幕を利用して地上デジタルテレビジョン放送を利用することが可能となり、ユニバーサル化及びユビキタス化が促進されることが期待される。

2の4 データ放送
地上デジタルテレビジョン放送では、映像、音声に加え、文字や図形、静止画を組み合わせたデータ放送の提供が可能となった。これにより、番組内容の詳細情報、ニュース、天気予報等の情報を、データ放送を通じて入手可能となっている。
特に番組に連動したデータ放送では、放送されている番組内容をL字型画面(脚注1)で見ることができる番組もある。例えばスポーツ番組では、選手の詳細データ、競技の途中経過、これまでの成績等を、ニュース番組では、ニュース、天気予報、その他番組内コーナーの情報等をみることができる。
また、各放送局では、地震、気象情報、ニュース等の字幕スーパーを表示、大きな地震情報や津波警報の最新情報は地図画面を表示する等、L字型画面やデータ放送のニュース画面で逐一情報提供をし、字幕化するのと同程度に情報の文字化が行われている。
脚注1 テレビの通常画面に文字情報を表示しているアルファベットのLの字型の画面のこと。

3.視聴覚障害者向け放送の現状
3の1 総務省の取組み
テレビジョンン放送の電波に重畳して文字や音声を伝送する文字多重放送・音声多重放送は、昭和57年から放送が開始され、その放送を用いて字幕番組、解説番組の放送も開始された。
総務省は、これまで、視聴覚障害者等が放送を通して情報を取得し、社会参加をしていく上で必要な字幕番組、手話番組、解説番組の普及策を、以下の取り組みによって実施し、各放送局の自主的な取り組みを促進してきた。 

総務省の取り組み

1字幕番組・解説番組等制作費の一部助成
・字幕番組・解説番組の助成制度を創設(1993年)
・助成対象に手話番組を追加(1999年)
2視聴覚障害者向け番組の放送努力義務化
・視聴覚障害者向け番組の放送努力義務の創設等を内容とする放送法等の一部改正(1997年)
3字幕放送普及目標の策定、進捗状況の公表
・「2007年までに字幕付与可能な放送番組について字幕を付す」ことを目標とする行政上の指針「字幕放送普及目標」を策定(1997年)

以上の取り組みを通して、各放送局の自主的な取組みの促進を図ってきた。
字幕拡充計画の策定
  2001年  NHK・民放キー5局
  2003年  在阪準キー4局
  2004年  テレビ大阪、在名広域4局、テレビ愛知

3の1の1 字幕番組・解説番組等制作費の一部助成
  視聴覚障害者向け放送の充実を図ることによって、放送を通じた情報アクセス機会の均等化を実現するために、字幕番組、手話番組、解説番組を制作する者に対し、その制作費の2分の1を上限(注釈1)として、独立行政法人情報通信研究機構が助成をおこなっている。
  これは、平成5年度から、「身体障害者の利便の増進に資する通信・放送身体障害者利用円滑化事業の推進に関する法律」に基づき、衛星放送受信対策基金運用益を原資として助成を開始したもので、平成9年度予算より一般会計補助金を追加して助成をおこなっている。平成11年度からは、手話番組も助成の対象としている。
注釈1 平成19年度は、在京キー局の字幕番組については6分の1、在阪準キー局の字幕番組については4分の1、それ以外については2分の1を予定。

【予算額の推移】(以下、棒グラフの説明。)

平成9年度1.1億円
平成10年度 1.1億円
平成11年度 4.4億円
平成12年度 5.1億円
平成13年度 5.1億円
平成14年度 6億円
平成15年度 6億円
平成16年度 7.5億円
平成17年度 4.6億円
平成18年度 4.6億円
平成19年度 4.1億円(平成19年度は予算案)

3の1の2 視聴覚障害者向け番組の放送努力義務化等
  郵政省(当時)は字幕放送及び解説放送の拡充に向けて、平成9年に、字幕・解説放送に関する放送制度の制度改正をおこなった。
  放送事業者の字幕放送及び解説放送の取組み促進のために、テレビジョン放送事業者は、字幕番組・解説番組をできる限り多く放送するようにしなければならないこととする放送努力義務が規定された。
  また、免許制度については、テレビジョン放送の定義を改め、テレビジョン放送事業者は、テレビジョン多重放送の免許なしで字幕放送、解説放送等テレビジョン放送を補完する放送を行えるようになった。
 
【平成9年改正 放送法第3条の2 第4項】
国内放送の放送番組の編集等
第3条の2  
4  放送事業者は、テレビジョン放送による国内放送の放送番組の編集に当たっては、静止し、又は移動する事物の瞬間的影像を視覚障害者に対して説明するための音声その他の音響を聴くことができる放送番組及び音声その他の音響を聴覚障害者に対して説明するための文字又は図形を見ることができる放送番組をできる限り多く設けるようにしなければならない。

3の1の3「字幕放送普及行政の指針」策定
郵政省は、平成9年の放送法改正の趣旨を踏まえ、放送事業者の字幕放送の充実に向けた取組みを促進するとともに、目標達成に向けて行政としても必要な措置を講じ、官民一体となって字幕放送の着実な充実を推進することを目的に、平成9年11月、「字幕放送普及行政の指針」を策定した。同指針では、日本放送協会、地上系一般放送事業者等について、午前7時から午後12時まで、新たに放送する字幕付与可能な全ての放送番組を対象に、平成19年(2007年)までに対象の放送番組の全てに字幕付与すること等が目標とされた。

なお、行政として字幕放送の実施状況のフォローアップを行うととともに、その結果を放送事業者、国民に周知し、字幕放送、手話放送、解説放送の充実への認識を高めることを目的に、平成9年度から実態調査をおこなってきた。 
また、平成12年度調査からは、視聴覚障害者向け放送普及への機運の醸成を図るため、前年度に放送事業者が実施した字幕放送、手話放送、解説放送の放送時間数を公表している。

3の1の4 放送事業者への要請
平成15年10月、放送局の一斉再免許に際し、「字幕放送、解説放送については、総務省が定めた字幕放送の普及目標等の達成に向けて、視聴覚障害をもつかたに
 十分配慮した放送番組をできる限り多く設けるよう努めること。」について、総務大臣からテレビジョン放送事業者に対して要請がなされた。

3の2 字幕放送の現状
3の2の1 放送事業者による字幕拡充計画の策定
平成13年10月、日本放送協会及び関東広域圏を放送対象地域とするテレビジョン放送事業者が、字幕放送の普及目標のための計画を策定した。また、平成15年3月には、近畿広域圏を放送対象地域とするテレビジョン放送事業者が、平成16年7月には、中京広域圏を放送対象地域とするテレビジョン放送事業者、テレビ愛知及びテレビ大阪が、字幕拡充計画を策定した。字幕拡充計画を提出した放送事業者においては、各自の目標を達成すべく、努力がなされている。

3の2の2 字幕放送時間の推移
総務省の実績調査によると、平成17年度の字幕付与可能な放送時間に占める字幕放送時間の割合(系列局が制作する番組を含む)は、NHK(総合)が98.2%、民放キー5局の平均が65.9%、準キー4局の平均が72.1%となっている。なお、地上民放テレビ放送事業者127社中、115社が字幕放送を実施している。
平成9年度以降のNHK(総合)及び民放キー5局の平均は、次の表のとおりであり、放送事業者が作成した字幕拡充計画を上回るペースで推移している。

【字幕付与可能な放送時間に占める字幕放送時間の割合】(以下、折れ線グラフの説明。NHK及び民放キー5局の字幕拡充計画(2001年10月策定)及び実績を示したもの)

NHK(総合テレビ) 1997年実績32.5%、1998年実績35.7%、1999年実績55.6%、2000年計画67.6% 実績67.6%、2001年計画71.3% 実績73.4%、2002年計画75% 実績77.9%、2003年計画82% 実績92.4%、2004年計画88% 実績89.5%、2005年計画94% 実績98.2%、2006年計画100%
民放(キー5局平均)1997年実績3.5%、1998年実績5.3%、1999年実績7.1%、2000年計画8.96% 実績8.6%、2001年計画17.62% 実績16.1%、2002年計画24.34% 実績28.9%、2003年計画31.54% 実績38.7%、2004年計画41.66% 実績55.0%、2005年計画53.14% 実績65.9%、2006年計画65.88%、2007年計画85.64%

また、平成17年度の総放送時間に占める字幕放送時間の割合は、NHK(総合)が40.8%、民放キー5局の平均が27.5%、準キー4局の平均23.1%となっている。平成13年度(2001年度)以降のNHK(総合)及び民放キー5局の平均の推移は、以下のとおりである。

【総放送時間に占める字幕放送時間の割合の推移】(以下、折れ線グラフの説明。総放送時間に占める字幕放送時間の割合の推移を示したもの。)

NHK(総合)
平成13年度 22.9%
平成14年度 27.1%
平成15年度 33.8%
平成16年度 35.5%
平成17年度 40.8%

民放キー5局
平成13年度 6.3%
平成14年度 11.7%
平成15年度 16.9%
平成16年度 22.3%
平成17年度 27.5%

3の2の3 字幕放送の利用状況と要望 
総務省は、聴覚障害者によるテレビジョン放送の利用状況と要望等の字幕放送を巡る実態を把握するため、財団法人全日本聾唖連盟、社団法人全日本難聴者・中途失聴しゃ 団体連合会の協力を得て、委託調査を実施した。調査の実施期間は、2006年2月28日から2006年3月10日まで、札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡の全国7大都市圏の、聾唖者150名及び中途失聴・難聴者300名の合計450名の聴覚障害者を対象に調査を行った。主な調査結果は、次のとおりである。なお、回答数は213(回収率47.3%)であった。

(1)テレビの視聴時間帯
  テレビの視聴時間帯については、「午後6時から午前0時」が平日で79%、休日で83%と圧倒的に高い割合となり、続いて「午前7時から午後0時」が平日で38%、休日で39%と高い割合を示していた。現行の字幕放送普及行政指針の対象時間である「午前7時から午後12時」に集中していることが判った。
                            
(以下、棒グラフの説明。平日及び休日のテレビの視聴時間帯について、グラフで示している。)
平日
午前0時から午前2時 3%
午前2時から午前4時 1%
午前5時から午前7時 10% 
午前7時から午後0時 38%
午後0時から午後6時 18%
午後6時から午前0時 79%
無回答 1%

休日
午前0時から午前2時 2%
午前2時から午前4時 2%
午前5時から午前7時 6%
午前7時から午後0時 39%
午後0時から午後6時 24%
午後6時から午前0時 83%
無回答 3%

(2)字幕と手話のどちらを付与すべきか
字幕か手話を付与してほしい番組ジャンルについて、字幕と手話のどちらを付与してほしいかという点については、以下のように各ジャンルとも、字幕を要望する割合が高かった。

(以下、表の説明)
ニュース・天気予報 字幕77%、手話16%、無回答8%
ニュース以外の報道番組 字幕90%、手話6%、無回答5%
教育・教養番組 字幕88%、手話6%、無回答7%
スポーツ中継 字幕79%、手話13%、無回答8%
映画番組 字幕92%、手話2%、無回答6%
バラエティ番組 字幕90%、手話5%、無回答4%
上記以外の娯楽番組 字幕95%、手話2%、無回答3%
その他 字幕86%、手話14%、無回答0%

(3)字幕における要約
字幕を要約せずにそのまま表示する場合と、ある程度要約してから表示する場合のどちらが望ましいかという調査については、「要約なし」、「どちらかというと要約なし」が合計28%、「要約付き」、「どちらかというと要約付き」が合計30%、「どちらとも言えない」が31%となっており、それぞれがほぼ並ぶ結果となった。

(以下、表の説明)      
要約なし 10%
どちらかというと要約なし 18%
どちらともいえない 31%
どちらかというと要約付き 24%
要約付き 6%
無回答 10%

(4)オープンキャプション・テロップ
オープンキャプション・テロップについて、ニュースや情報番組で、番組内容説明のために利用される文字情報(テロップ)により、番組内容をどの程度理解できるようになっているかという問いに対し、「ほぼ理解できていると感じる」、「ある程度理解できていると感じる」が合計64%となった。

(以下、表の説明)        
ほぼ理解できていると感じる 13%
ある程度理解できていると感じる 51%
どちらともいえない 19%
あまり理解できていないと感じる 6%
全く理解できていないと感じる 2%
無回答 8%

次に、娯楽やバラエティー番組について、演出効果や番組内容説明のために利用される文字情報(テロップ)により、聴覚障害者が番組内容をどの程度理解できるようになっているかという問いに対し、「ほぼ理解できていると感じる」、「ある程度理解できていると感じる」が合計54%となった。
        
(以下、表の説明)
ほぼ理解できていると感じる 9%
ある程度理解できていると感じる 45%
どちらともいえない 24%
あまり理解できていないと感じる 8%
全く理解できていないと感じる 2%
無回答 11%

(5)緊急放送について
テレビ放送中に災害等の緊急ニュースをテロップで見た後、より詳しい情報を知りたいと思ったとき、どのような対応を行っているかという点については、そのままテレビを見て(字幕なしでも)情報を得るという回答が56%に上っており、緊急時でもテレビが重要な情報源として利用されている傾向が伺える。

(以下、表の説明)
そのままテレビを見て(字幕なしでも)情報を得る 58%
インターネットで情報を得る 7%
健常者(同居者等)にテレビを見てもらい、健常者から情報を得る 20%
その他 2%
無回答 15%

        
3の3 手話放送の現状
3の3の1 手話放送時間の割合の推移
総務省の実績調査によると、平成17年度の総放送時間に占める手話放送の割合は、NHK(教育)が2.2%、民放キー5局平均が0.1%、在阪準キー4局平均が0.1%と、低い水準で横ばいの状況となっている。平成13年度以降のNHK(総合・教育)及び民放キー5局の平均の推移は、次の表のとおりである。
なお、平成17年度の手話放送実施事業者は、地上民放テレビ放送事業者127社中87社となっている。ローカル局においては、自治体広報番組を中心に、手話番組の実施が行われている。
 
【総放送時間に占める手話放送時間の割合】(以下、表の説明)
NHK総合
平成13年度 空欄
平成14年度 0.01%
平成15年度 0.01%
平成16年度 0.01%
平成17年度 0.01%

NHK教育
平成13年度 2.1%
平成14年度 2.1%
平成15年度 2.1%
平成16年度 2.1%
平成17年度 2.2%

民放キー5局
平成13年度 0.2%
平成14年度 0.1%
平成15年度 0.1%
平成16年度 0.1%
平成17年度 0.1%

3の3の2 手話放送の利用状況と現状
(1)聴覚障害者と手話
先天性聾者にとっては、聴覚を用いないで獲得した手話が基盤の言語で、手話が重要なコミュニケーション手段となっていることが多い。
そのため、日本語を獲得してから聴覚障害を負い、日本語を第一言語としている中途失聴しゃ や難聴者とは異なり、手話を第一言語としている先天性聾者は、テレビを視聴するにあたって、手話付き番組の方が理解しやすいという背景がある。

(2)手話付き番組と今後のテレビ視聴の関係
前述、総務省の調査において、聴覚障害者が予想する手話付き番組と今後のテレビ視聴の関係については、「かなり増えると思う」、「多少は増えると思う」が合計25%であり、「あまり増えないと思う」、「全く増えないと思う」が合計30%とほぼ同様の割合となっていた。

(以下、表の説明)       
かなり増えると思う 5%
多少は増えると思う 20%
どちらともいえない 28%
あまり増えないと思う 16%
全く増えないと思う 14%
無回答 17%

なお、「かなり増えると思う」及び「多少は増えると思う」と回答した理由としては、「字幕放送は、字が速く消えて読めないときがある。字が小さい。」、「手話は瞬間的には助かるが、長い番組になると的確に読み取りについて行けず、疲れて見落とし、理解が不十分になる。手話もありがたいが、文字をつけてもらえれば確認できて内容理解がアップする。」等の意見が挙げられていた。

次に、「どちらとも言えない」と回答した理由としては、「通訳者の使う手話表現が見易ければよいが、その人によってバラツキがあると思うので増えるとは言えない。」、「手話通訳の画面が小さくて見にくい。どうにも見る気が起こらない。」、「手話をみていると番組の方を見落とすのであまり見ない。」等の意見が挙げられていた。
 
また、「あまり増えないと思う」、「全く増えないと思う」と回答した理由としては、「手話は完全にマスターしないと理解はムリ。新しい手話なども知っていないとわからない。その時事にあった手話も理解していないとよめない、わからない。」、「地域によって手話が違うのでよく分からない事もあるが、手話にばかり目が行くと周りの状況がよく分からなくなるのでおもしろくないから。」、「手話(ワイプ)を見ていると画面が見られない。複数の人の話は手話では理解しにくい。」、「手話は個人差があり、意訳されている。伝達度字幕90%、手話60%といわれている。」、「手話のスピードが速くて分からない。」等の意見が挙げられていた。

(3)手話付き番組における手話の見易さ・判り易さ
手話付き番組における手話の見易さ・判り易さについては、「ほぼ満足している」、「概ね満足している」が合計15%であり、「あまり満足していない」、「全く満足していない」の合計25%を下回っていた。

(以下、表の説明)
ほぼ満足している 3%
おおむね満足している 12%
どちらともいえない 37%
あまり満足していない 19%
全く満足していない 6%
無回答 23%

なお、満足しない理由としては、「言葉を早く言われると手話も早くなり単語だけ読み取るしかできず、何を言っているの となります。」、「手話の表現が地方の表現と違うときがあり読み取りが難しい。」、「手話の画面小さすぎ。」、「口語もつけてほしい。黙ったままの手話は判断できないことが多い。」、「要約しすぎて内容が十分伝わらない。」等の意見が挙げられていた。

3の4 解説放送の現状
3の4の1 解説放送時間の割合の推移
総務省の実績調査によると、平成17年度の総放送時間に占める解説放送の割合は、NHK(総合)が3.5%、NHK(教育)が8.1%、民放キー5局平均が0.2%、在阪準キー4局平均が0.5%となっている。NHKにおいては、若干ではあるものの増加傾向にあるが、民間放送事業者においては、低い水準で横ばいの状況となっている。なお、平成17年度の解説放送実施事業者は、地上民放テレビ放送事業者127社中62社となっている。
平成13年度以降のNHK(総合・教育)及び民放キー5局の平均の推移は、以下のとおりである。

【総放送時間に占める解説放送の割合】(以下、表の説明)
NHK総合
平成13年度 2.7%
平成14年度 2.6%
平成15年度 2.9%
平成16年度 3.2%
平成17年度 3.5%

NHK教育
平成13年度 5.9%
平成14年度 6.9%
平成15年度 7.3%
平成16年度 7.9%
平成17年度 8.1%

民放キー5局
平成13年度 0.2%
平成14年度 0.2%
平成15年度 0.2%
平成16年度 0.2%
平成17年度 0.2%

なお、NHKは、これまで、NHK教育テレビ「ETVワイド ともに生きる2005 働く」(平成17年12月3日(土)19時から22時)及びNHK総合「トリノパラリンピック(競技速報)」(平成18年3月11日(土)から20日(月)14時台、15時台の23分)、また、「トリノパラリンピックの10日間」(平成18年3月21日(火)8時35分から9時30分)において、生放送番組での解説放送を実施した。

3の4の2 解説放送の利用状況と要望
総務省は、視覚障害者についても聴覚障害者と同様に、実態を把握するため社会福祉法人日本盲人会連合の協力を得て、委託調査を実施した。調査の実施期間は、2006年2月28日から2006年3月10日まで、全国47都道府県の、視覚障害者600名の視覚障害者を対象に調査を行った。回収数は267(回収率44.5%)であった。
また、社会福祉法人日本盲人会連合は、平成16年度から平成18年度にかけて、特定非営利活動法人CS障害者放送統一機構と全国視覚障害者情報提供施設協会との連携のもと、独立行政法人福祉医療機構の助成を受けて、視覚障害者向け解説放送開発に関する調査研究を実施し、平成16年度に、視覚障害者約600人を対象としたアンケートを実施した。有効回答数は584であった。
それらの主な結果は、次のとおりである。

(1)テレビの視聴時間帯
総務省の調査では、テレビの視聴時間帯については、「午後6時から午前0時」が平日で68%、休日で67%と高い割合となり、続いて「午前7時から午後0時」が平日で50%、休日で52%と高い割合を示していた。

(以下、表の説明)

平日
午前0時から午前2時 4%
午前2時から午前4時 3%
午前5時から午前7時 18% 
午前7時から午後0時 50%
午後0時から午後6時 27%
午後6時から午前0時 68%
無回答 3%

休日
午前0時から午前2時 4%
午前2時から午前4時 2%
午前5時から午前7時 12%
午前7時から午後0時 52%
午後0時から午後6時 29%
午後6時から午前0時 67%
無回答 6%

(2)解説放送と今後のテレビ利用の関係
総務省の調査では、解説放送付きの番組が増えれば、テレビ利用が増えるかという問いに対し、「かなり増えると思う」、「多少は増えると思う」が合計69%、「あまり増えないと思う」、「全く増えないと思う」が合計14%となっており、解説放送の要望が高いことが判った。

(以下、表の説明)
かなり増えると思う 33%
多少は増えると思う 36%
どちらともいえない 14%
あまり増えないと思う 8%
全く増えないと思う 6%
無回答 8%       

また、社会福祉法人日本盲人会連合の調査においても、92.1%がテレビから情報を入手しており、87.4%が解説放送を充実してほしいと要望していた。

解説放送の充実要望(以下、円グラフの説明)
解説放送を
充実して欲しい 87.4%
今のままでよい 4.7%
あまり必要としていない 7.9%

(3)解説放送を増やして欲しい番組ジャンル
総務省の調査では、解説放送を増やして欲しい番組ジャンルについては、ニュース・天気予報の割合が55%と最も高くなっており、続いて映画番組37%、教育・教養番組33%となっていた。

(以下、表の説明)

ニュース・天気予報 55%
ニュース以外の報道番組 31%
教育・教養番組 33%
スポーツ中継 28%
映画番組 37%
バラエティ番組 4%
上記以外の娯楽番組 26%
その他 4%
無回答 13%

ニュース・天気予報番組は、通常、アナウンサーが原稿を読み上げる形式のものが多く、ニュース画像が流されている間も、原稿読み上げや現場レポートが音声として送出されているケースが多い。しかしながら、これらの原稿読み上げ、現場レポートの中での指示語の多用や外国語を原語のまま放送することに対する不満が、ニュース・天気予報番組に解説放送を増やしてほしい背景となっていると考えられる。
なお、健常者向けの番組において、指示語の多用および外国語が訳されないことを改善して欲しいか?という設問には「よくそう思う」「ややそう思う」の合計が82%という高い結果となっていた。

(以下、表の説明)

よくそう思う 61%
ややそう思う 21%
どちらともいえない 7%
あまりそう思ったことはない 3%
全くそう思ったことはない 1%
無回答 7%

また、社会福祉法人日本盲人会連合の調査においても、優先的に解説放送を付けてほしい番組として、「ニュース・報道番組」の割合が63.7%と最も高く、続いて、ドラマ、映画が挙げられている。社会福祉法人日本盲人会連合からは、外国語の放送については、日本語吹き替えの要望が高いと報告されていた。

(4)緊急放送について
総務省の調査では、緊急放送については、テレビ利用中に、警告音によって緊急放送が入ったことが判っても、どのような内容の緊急放送か判断できずに「不便に思ったことがあるか」という問いに対して、「そう思う」、「ややそう思う」の合計88%が不便と思っていることが判った。

(以下、表の説明)
よくそう思う 76%
ややそう思う 12%
どちらともいえない 1%
あまりそう思ったことはない 4%
全くそう思ったことはない 3%
無回答 4%       
 

また、社会福祉法人日本盲人会連合の調査においても、「ニュース速報に音声をつけてほしい」が90.4%にも上っており、緊急放送に関する要望が非常に高かった。

テレビ番組にどのような改善を望んでいるか(以下、表の説明)

ニュース番組に音声をつけて欲しい 男女ともに90%以上
天気予報や台風情報に音声をつけて欲しい 男性68% 女性 66%
外国人のインタビューに音声をつけて欲しい 男性81% 女性75%
スポーツ番組に音声をつけて欲しい 男性46% 女性35%
宛先等に音声をつけて欲しい 男性67% 女性80%
その他 男女ともに約12%

3の5 障害者団体による取組み
阪神淡路大震災の体験に基づき、緊急災害時の情報保障を含む障害者独自の情報発信システムとネットワークを構築するために、平成10年に、財団法人全日本聾唖連盟、社団法人全日本難聴者・中途失聴者連合会を中心に設立されたCS障害者統一機構は(平成13年に特定非営利活動法人に認定された)、聴覚障害者を対象に、通信衛星を介して聴覚障害者向けの番組「目で聴くテレビ」を配信している。厚生労働省は、「目で聴くテレビ」の受信装置を「聴覚障害者用情報受信装置」として、身体障害者日常生活用具に認定している。
また、社会福祉法人日本盲人会連合が実施している、視覚障害者向け解説放送開発に関する調査研究についても、特定非営利活動法人CS障害者放送統一機構との連携のもとに実施している。

4 海外の視聴覚障害者向け放送の現状
4の1 米国の現状
4の1の1 制度概要
  米国では、1990年にAmericans with Disabilities Act(ADA法)が制定されて以来、障害者差別は厳しく禁じられるようになった。例えば、病院、バー、ショッピングセンター、美術館等の公共の場(映画館は除く)で、テレビ、映画、スライドショーに字幕、解説、手話を付けることが義務付けられた。ただし、プログラムが根本的に変化してしまう場合や過度な負担になる場合は、例外とした。また、政府による公共サービス発表に対する字幕付与を義務付けた。

 字幕放送については、Telecommunications Act of 1996の第303条、第330条で13インチ以上のテレビへの字幕放送受信機能組み込みを義務付け、第713条で字幕放送の確保について規定している。
  また、字幕については、1996年通信法に基づき、連邦通信委員会(FCC)が1998年に制定した規制によって、次のとおり義務付けがなされている。

【字幕付与義務】
・新番組(1998年1月1日以後初放送)四半期毎の字幕付与義務時間 2000年1月1日から2001年12月31日 最低450時間、2002年1月1日から2003年12月31日 最低900時間、2004年1月1日〜2005年12月31日 最低1350時間、2006年1月1日から 100%
・古い番組(1997年12月31日以前初放送) 四半期毎の字幕付与義務時間 2003年1月1日から2007年12月31日 30%、2008年1月1日から 75%

※ 以下の場合は字幕を付与しなくてよい。
1) 1996年2月8日以前に効力を発した契約上、字幕を付与することが契約違反となる場合。
2) 字幕付与が膨大な負担となることを理由にFCCに例外措置申請をし、承認された場合。
3) 英語、スペイン語以外の番組。ただしElectronic News Room(ENR)技術を利用して字幕付与できる脚本がある番組は例外措置対象にはならない。
4) 番組予定表や地域社会掲示板のように、音声が視覚的に文字やグラフィックで表示されている番組。
5) 夜間午前2時から6時に放送される番組。
6) 10分以下のプロモーション発表、公共サービス発表。
7) Instructional Television Fixed Service ライセンシー発信の番組。
8) 再放送の価値がない地元で制作され、配給されたノンニュース番組。
9) ニュース局の番組。また放送局開局後、最初の4年。ただし1998年1月1日時点で開局から4年以下の局については2002年1月1日まで例外措置。
10) 歌詞のない音楽番組。
11) 字幕付与費用が前年総収入の2%を超えた場合。
12) 年間総収入が300万ドル以下の局。ただし、すでに字幕が付与された番組を放送する場合はそのまま字幕を付ける義務はある。
13) 地域社会制作の教育番組。小中高校向けに公共TV局が地域社会で制作した教育番組。

 手話放送と解説放送については、具体的な法制度は存在しない。
  解説放送については、2000年に連邦通信委員会(FCC)が、1996年通信法に基づき、目の不自由な人たちのTV番組へのアクセスを増やし緊急情報を提供することを目的に、解説放送規定を制定した。これは、全米TV市場トップ25地域の4大ネットワークに対し、ゴールデンアワーと子供番組について四半期ごとに最低50時間の解説番組の実施を求めること等を内容とするものだった。
  しかし、全米放送事業者協会や米国映画協会等放送界を代表する業界団体は、字幕とは異なり、1996年通信法上、FCCに解説放送を制定する権限はない、とFCCを提訴した。
  2002年11月、連邦裁判所は、FCC規定が違法であるとの判決を下した。
  現在、米国盲人協議会は、放送局が自主的に解説放送を付与することを期待するだけでは不十分であるとし、FCCによる規定を求めている。
  なお、米国のテレビ番組で解説放送を実施しているものはわずかであるものの、公共放送の他、大手放送局でも人気番組に解説放送を実施しているものもあるようである。

4の1の2 視聴覚障害者向け放送の実施率
  現在の米国における字幕放送、手話放送、解説放送の実施状況は、次のとおりである。

【実施状況】
字幕放送の実施状況 100%(英語放送で1998年1月1日以降に初放送の番組)
解説放送の実施状況 2006年3月1日の解説付き番組は全放送局で約50番組
手話放送の実施状況 大統領公共演説やシンポジウム等、イベント主催者側が用意する場合の他、地域社会ニュース番組及びセサミストリートで取り上げられる場合のみ。

4の1の3 その他
  教育省は、1997年にIndividuals with Disabilities Education Act(IDEA)を制定し、教育番組、ニュース情報提供番組等への字幕付与についての助成を実施している。2004年には解説放送を追加し、2011年まで、助成支援のための予算が付けられている。2003年から2005年の字幕放送と解説放送に対するDOEの助成金額の推移は次のとおりである。
 
【助成金額】
字幕と解説に対するDOEの助成金額(US$)
2003年度 12,657,566
2004年度 13,802,395
2005年度 11,517,318
※ 字幕・解説へのそれぞれの配分は不明

4の2 英国の現状
4の2の1 制度概要
  英国では、Communications Act 2003において、商業放送における字幕放送、解説放送、手話放送の目標値を規定し、放送事業者に対し、目標値達成について義務付けがなされている。

字幕放送 5年目から 60% 10年目から(チャンネル3,4)90% (その他)80% 
手話放送 10年目から 5%
解説放送 10年目から 10%

英国情報通信庁(OFCOM)は、 2005年3月、コードオンテレビジョンアクセスサービシズの中で、字幕放送、解説放送、手話放送に関する10年間の普及目標(義務)を公表した。

1年目 字幕 10% 手話 1% 解説 2%
2年目 字幕 10% 手話 1% 解説 4%
3年目 字幕 35% 手話 2% 解説 6% 
4年目 字幕 35% 手話 2% 解説 8%
5から6年目 字幕 60% 手話 3% 解説 10%
7から9年目 字幕 70% 手話 4% 解説 10%
10年目 字幕 80% 手話 5% 解説 10%
※開始基準年度は放送局によって異なる。BBC1やBBC2については1997年が0年目、ITV2やITV Newsは、地上デジタル放送を開始した2002年が初年度とされている。

さらに、BBCはOFCOMとBBC Agreementを締結し、自主目標を公表した。
 
BBC1、2
2004年 字幕85% 手話3% 解説6%
2005年 字幕90% 手話3% 解説6%
2006年 字幕95% 手話4% 解説8%
2007年 字幕97% 手話4% 解説8%
2008年 字幕100% 手話5% 解説10%

その他BBC
2004年 字幕60% 手話3% 解説6%
2005年 字幕70% 手話3% 解説6%
2006年 字幕80% 手話4% 解説8%
2007年 字幕90% 手話4% 解説8%
2008年 字幕100% 手話5% 解説10%

※番組が対象除外番組か否かという点は、以下のような基準で決定される。
  1) 字幕等の付与がもたらす視聴覚障害者のベネフィットの度合い
  2) 想定対象視聴者の数(年間で視聴シェア0.05%未満は除外対象)
  3) 字幕等の付与がベネフィットをもたらす視聴覚障害者の数
  4) 想定対象視聴者が英国以外に居住している割合
  5) 字幕等の付与が技術的に困難な度合い
  6) 字幕等の付与のために必要なコスト
 
  なお、以下の番組については、最初から対象除外と認められている。
  1) 広告により構成される番組(ショッピングチャンネル等)
  2) EPG
  3) 他国で認可されているテレビ放送

 また、技術的な困難さという観点からは、以下の番組・サービスについては対象除外であることが明記されている。
1) 音楽番組及びニュース番組に対する解説の付与(音声トラックの余裕が少なく、ニーズも少ない)(但し、OFCOMでは、ニュースにおける映像の意味合い等について視覚障害者でも十分に理解できるような放送内容にするために、プロデューサー・編集者・キャスターが訓練を受けることを義務付けている)
2) 中国語など、市販のセットトップボックスで表示できない字幕の付与
3) 多言語番組における字幕や手話の付与(どの言語を字幕化または手話通訳すべきか判断が困難な場合)

 コストの面からは、OFCOMでは字幕等の付与コストを算出し、これを基に、各放送事業者に対し、英国で得た収入の1%を字幕等の付与に支出することを求めている。これにより、「年間の字幕等の付与目標の100%」(レベル1)、「年間の字幕の付与目標の66%及び手話と解説の付与目標の100%」(レベル2)、「年間の字幕の付与目標の33%及び手話と解説の付与目標の100%」(レベル3)のどれかを達成することを定めている。しかし、収入の1%ではレベル3の達成も困難な事業者については、コスト面から対象除外とすることを認めている。

4の2の2 視聴覚障害者向け放送の実施率
主な放送事業者の2004年度の字幕放送、解説放送、手話放送の目標値達成度は、次のとおりであり、すべて目標を達成していることが分かる。

以下、表の説明。2004年における、主な放送事業者の字幕放送等目標値の達成度を示したもの。)
BBC1「字幕」目標値85% 達成値90.4%、「音声解説」目標値6% 達成値6.7%、「手話」目標値3% 達成値3.1%
BBC2「字幕」目標値85% 達成値92.1%、「音声解説」目標値6% 達成値6.2%、「手話」目標値3% 達成値3.1%
BBC3「字幕」目標値60% 達成値70.6%、「音声解説」目標値6% 達成値13.0%、「手話」目標値3% 達成値3.7%
BBC4「字幕」目標値60% 達成値62.9%、「音声解説」目標値6% 達成値7.3%、「手話」目標値3% 達成値3.6%
CBBC「字幕」目標値60% 達成値67.6%、「音声解説」目標値6% 達成値5.3%、「手話」目標値3% 達成値3.3%
CBeebies「字幕」目標値60% 達成値77.7%、「音声解説」目標値6% 達成値7.6%、「手話」目標値3% 達成値3.8%
BBC News 24「字幕」目標値60% 達成値60.6%、「音声解説」適用除外、「手話」目標値3% 達成値3.0%

民放(民放の目標は改定前の旧目標値)
ITV1(excl.GMTV)「字幕」目標値83% 達成値92.2%、「音声解説」目標値6% 達成値6.5%、「手話」目標値3% 達成値3.2%
ITV2 「字幕」目標値39% 達成値44.0%、「音声解説」目標値6% 達成値7.9%、「手話」目標値3% 達成値3.6%
GMTV1「字幕」目標値58% 達成値91.1%、「音声解説」適用除外、「手話」目標値3% 達成値3.1%
GMTV2「字幕」目標値39% 達成値40.2%、「音声解説」目標値6% 達成値13.1%、「手話」目標値3% 達成値5.2%
Channel4「字幕」目標値80% 達成値82.0%、「音声解説」目標値6% 達成値9.6%、「手話」目標値3% 達成値3.2%
Five「字幕」目標値60% 達成値62.2%、「音声解説」目標値6% 達成値6.1%、「手話」目標値3% 達成値3.1%

4の2の3 その他
OFCOMは、字幕番組、手話番組、解説番組の品質について、ガイドラインを制定している。
また、字幕放送及び解説放送については、プライムタイムに放送されることを奨励しているが、手話放送については、プライムタイム以外での放送を許容しており、深夜の時間帯かつ再放送番組で実施されている。BBCでは、深夜0時以降の再放送番組で手話放送を実施している。
なお、政府による番組制作に対する助成支援は行われてない。

4の3 韓国の現状
4の3の1 制度概要
韓国では、2000年3月に放送委員会が立ち上げられ、放送法が施行される等、障害者向け放送について、本格的な制度整備が行われた。現行の関係法令は次のとおりである。

【放送法】
第69条第7項
  放送事業者は大統領令の定めるところにより障害者の視聴を助けることができるように努力しなければならない。必要な場合、放送委員会は基金から経費の一部を支援することができる。

【放送法施行令】
第52条
  法律第69条第7項の規定によって放送事業者は障害者の視聴を助けるために以下の各号に該当する放送番組に対しては手話・字幕・解説等を利用した放送をするよう努力しなければならない。
  1.法律第75条の規定による災難放送番組
  2.障害者福祉法施行令第11条の規定による放送番組
  3.障害者の放送視聴が必要と認められ、放送委員会の規則で定めた放送番組
  4.その他、障害者の福祉を目的として編成された放送番組

【放送法施行に関する放送委員会規則】
第14条(障害者の視聴支援)
令第52条第3号での「放送委員会の規則で定めた放送番組」は以下のとおりである。
  1.政府政策発表など国民的に関心事が高いと判断される放送番組
  2.障害者視聴者の情報にアクセスする際、必要だと判断して放送委員会が要請する放送番組

4の3の2 視聴覚障害者向け放送の実施率
韓国における、2006年1月末での、字幕放送、手話放送及び解説放送の放送割合は次のとおりである。

2006年度週間放送時間(比率)
KBS1 字幕57.4% 手話1.2% 解説3.5%
KBS2 字幕27.9% 手話1.2% 解説5.5%
MBC 字幕50.3% 手話0.5% 解説5.5%
SBS 字幕39.5% 手話0.2% 解説3.2%
EBS 字幕16.9% 手話1.1%

4の3の3 その他
韓国放送委員会では、障害者関連団体や事業に対する放送発展基金からの支援、制作インフラの支援等を行っている。放送法第69条第7項には、「放送事業者は大統領令の定めるところにより障害者の視聴を助けることができるように努力しなければならない。必要な場合、放送委員会は基金から経費の一部を支援することができる。」と規定されている。
なお、韓国放送委員会による2005年の支援実績であるが、8つの団体の11の事業に対して約13億600万ウォン(約1.7億円)が支援された。その事業の内容は、主に字幕放送や解説放送、難聴向けの受信機の普及や関連番組制作、障害者のためのメディア教育となっている。

4の4 我が国と諸外国との比較
4の4の1言語と入力の特徴
米国及び英国において字幕番組の普及が進んでいる背景としては、一つに言語の違いによる入力の難易が考えられる。
文字入力に当たっては、英語はアルファベット26文字の入力のみで足りるが、日本語は、文字入力に加えて、「仮名漢字変換」というステップを挟むことが必要となり、入力に手間と時間を要することになる。また、生放送において仮名漢字変換を挟むことによる字幕表示への遅れといった制作上の問題にもつながる。これらの理由から、米国、英国、我が国の字幕番組制作費を比較すると、日本の字幕制作費は米英の約5倍かかっており、入力の手間が字幕番組制作費の差につながっていると言われている。このように、使用言語が英語であることは、字幕制作に大きなメリットを与えている。

1時間あたりの字幕番組制作費
米国 450ドルから700ドル(5.4万円〜8.4万円)
英国 平均300ポンド(6.3万円)
日本 25万円程度
※日本の在京民放キー局の平成18年度の各字幕制作費は5〜8億円でBBC1に匹敵(約5億7千万/年と試算)。来年度は各局10億円程度となりBBC1を上回る見通し。

4の4の2生放送番組の比率
字幕付与が最も難しいとされる生放送番組について、米国、英国、我が国の割合を比較する。
NHK(総合)では64%が生放送番組であり、民放キー5局も含めた平均は46%が生放送番組であるのに対し、BBC1では34%が生放送番組となっている等、次のグラフに示すとおり、我が国は、米国、英国に比べて生放送番組の比率が非常に高い。
このことは、米国、英国に比較して字幕放送を拡大することの困難性や、字幕制作に対する費用負担が大きいという問題につながっている。
 
英国 リアルタイム字幕制作費 1時間当たり5.25万円 
    制作体制 2名

日本 リアルタイム字幕制作費 1時間当たり15万から20万円
    制作体制(入力者+校正者)×3組 計6名 
 
 
【米英日における生放送番組の比率の比較】
米国
CBS 36%
ABC 32%
NBC 34%
フォックス 28%
平均33%

英国
BBC1 34%
ITV1 29%
チャンネル4 7%
ファイブ 6%
平均 19%

日本
日本テレビ 49%
TBS 52%
フジテレビ 46%
テレビ朝日 41%
テレビ東京 26%
NHK総合 64%
平均 46%

※米国はニューヨークにおける系列局の2006年11月27日から12月3日の番組表から概算。英国及び日本の民放は2006年10から11月の番組表から概算。NHKは2005年度の実績値。

4の4の3 再放送番組の比率
初回放送時に、字幕、手話、解説を付与すれば、再放送時には、当該制作を省略することができる。
米国、英国、我が国の再放送の割合を比較すると、米国の再放送率の平均は、我が国の2.1倍、BBC1の再放送率は、我が国の3倍である等、我が国の再放送比率は非常に低くなっており、字幕制作に当たって不利な要件となっている。

【米国、英国、日本の再放送比率】
米国
CBS 21%
ABC 17%
NBC 10%
フォックス 38%
平均 21%

英国
BBC1 31%

日本 
NHK総合 19%
日本テレビ 3%
TBS 7%
フジテレビ 10%
テレビ朝日 14%
テレビ東京 8%
平均 10%

※米国は、ニューヨークにおける系列局の2006年11月27日から12月3日の番組表から概算。日本の民放は2006年10から11月の基本番組表から概算。NHK、BBCは2005年度の実績値。

5 視聴覚障害者向け放送における課題
5の1 字幕放送における課題
5の1の1 字幕放送番組制作上の課題
現行の「字幕放送普及行政の指針」において、生放送番組は、技術的に字幕を付すことができない放送番組として字幕付与可能な番組から除かれている。しかし、高速入力方式、リスピーク※・音声自動認識装置の活用等により技術的な問題を克服しつつあり、着実にリアルタイム字幕制作の取組が進められつつある。NHK(総合)では、総放送時間に占める生放送番組の割合は64%であり、総放送時間に占めるリアルタイム字幕放送番組の割合は14%となっている。
リアルタイム字幕の対応について、放送中のテレビ番組を視聴しながら高速入力した字幕データを放送局に送出し放送を行う株式会社スピードワープロ研究所等の高速入力方式では、事前に原稿が用意されており、話し手が限られている形式のニュースでは対応可能となっている一方で、複数の話し手が同時に会話を行う番組では、発言が重なるため画面音声と字幕のずれにより情報が混乱する可能性が高く、字幕制作は極めて困難とされている。
その他、スポーツ中継、特に大相撲やプロ野球中継等では、リスピーク・音声自動認識装置によって字幕制作が行われている。これらの方式では、音声自動認識のための専門的な変換辞書が必要となるが、競技によっては音声自動認識の辞書が蓄積されつつあり、字幕の対応可能な競技の拡大の可能性はある。
しかしながら、リアルタイム字幕は、未だに誤字脱字が避けられない恐れがあり、録画番組への字幕と異なり字幕の品質が落ち、番組の品質の確保が困難であるといった指摘もある。
なお、放送法第4条では、放送事業者は真実でないことを放送した場合に、訂正放送の義務が規定されている。不特定多数の人を対象にしている放送での間違いは社会的影響が大きく、特に正確さを求められるニュース番組へのリアルタイム字幕制作については十分な検証が必要といえる。
※字幕制作専用アナウンサーが、番組音声を聞きながら要約して発話し、文字に変換する方式
 
また、録画番組については、放送の直前に搬入される番組が増えてきており、次のような放送局の現状が一例として報告されている。
1時間番組の場合、放送3日前に納品されれば2名で字幕の制作は可能であるが、納品が放送の5時間前であれば、字幕用コピーで1時間、10名が2時間で字幕制作、チェックで1時間半という、放送30分前に登録というぎりぎりの作業で字幕を制作している。このため、直前搬入番組に備えたスタッフの休日出勤や深夜早朝勤務が、コスト増の要因にもなっている。
 
なお、平成9年以降、字幕放送は着実に拡充されてきており、初回放送時に字幕が付与されていれば、再放送時にも字幕を付与する必要がある。すでに字幕が付与されている番組であれば、新たに字幕を作成する手間がかからず、字幕番組制作上の大きな課題はないからである。

5の1の2 人材育成
各放送局は、リアルタイム字幕実施にあたって、リアルタイム字幕の入力オペレーターを確保することが必要となるが、各放送局のニュース番組の放送時間帯は集中していることから、一度に多数のオペレーターが必要となる。
一方で、株式会社スピードワープロ研究所によると、リアルタイム字幕の入力オペレーター育成には、2年から3年以上かかるとされており、オペレーターの育成が急務の課題となっている。

5の1の3 緊急放送
災害発生時の緊急放送における字幕制作は、地名・人名等を正確に伝えることが求められ、聞き間違え、変換間違えが許されないという事情がある。このような背景から、緊急放送に字幕を付与するためには、予測不可能な事態に対応するため24時間高度な技術を有する字幕制作要員を確保する必要があり、放送体制確保に伴う経費負担の増加が課題となっている。

5の1の4 ローカル局における課題
県域を放送対象地域とする放送局(以下、「ローカル局」という。)の番組は、系列からのネット番組、購入番組、自社制作番組がある。このうち系列からのネット番組については、番組に字幕が付与されていればそのまま送出することが可能であるが、購入番組や自社制作番組に字幕を付与して放送するためには、新たに設備の構築が必要になる(字幕放送に必要な設備については下図を参照)。
また、自社内で字幕制作を行う場合には、字幕制作要員の育成が課題であり、特に、自社制作の生放送番組に字幕を付与するためには、熟練した技術を持つ字幕制作要員が必要となるが、地方でこのような字幕制作要員の確保は非常に困難であると予想される。
地上放送のデジタル化に取組んでいる現状において、経営的に脆弱なローカル局では、字幕放送設備の構築、その運用に多額の経費を要することが課題となっている。

【字幕放送に必要な設備】
放送番組の形態※1 自主 生放送番組、字幕制作者 自社(外注可)、字幕放送のために新たに必要な設備 送出装置+制作装置(高速入力)+本線映像への重畳装置※2
放送番組の形態 自主/録画番組、字幕制作者 自社(外注可)、字幕放送のために新たに必要な設備 送出装置+制作装置+本線映像への重畳装置
放送番組の形態 購入番組、字幕制作者 他社、字幕放送のために新たに必要な設備 送出装置+本線映像への重畳装置【字幕データが番組に焼き付けられている場合は不要】

放送番組の形態 ネット配信番組、字幕制作者 他社、字幕放送のために新たに必要な設備 なし

※1 「自主」とは、自局(自社)が字幕番組を発注制作した番組、「購入番組」とは、他局(系列局等)が発注制作した字幕番組を購入した番組及びネット時差番組、「ネット配信番組」とは、系列局等の発局がネット配信した字幕番組を受信して自局から同時に放送する番組のこと。
※2 字幕デコーダの制御情報送出機能を含む。

5の2 手話放送番組における課題
5の2の1 手話放送番組制作上の課題
現在では、NHK(教育)を中心に、手話付き番組が実施されている。新しい言葉の登場により、手話で表現することが困難なニュース番組についても、図表を用いる等の工夫をしながら内容面の充実が図られ、また、時間枠の段階的な拡充も図られている。一方、他の放送局では、手話放送の実施割合は、非常に低い状況となっている。
NHKによると、手話放送番組には、一般の番組に手話映像を付与する手話放送と、番組そのものを手話で構成する手話番組の2種類がある。
広く一般の番組に手話を付すためには、字幕放送のように、視聴者が手話をつけるかどうか選択できる技術が開発されることが望まれが、手話映像の送出量は、字幕データ送出情報量に比べて非常に大きく、開発には課題が多い。
また、効率的な技術開発にあたっても、課題が多い状況となっており、手話放送番組は、一部の番組に限定せざるを得ない状況となっている。
手話映像を付与する番組の場合は、画面の一部に手話映像を付与するため、その部分の映像を視聴することが不可能となり、また、番組そのものを手話で構成する番組の場合は、一から番組を作る必要が生ずるという問題がある。

5の2の2 人材育成
社会福祉法人聴力障害者情報文化センターが実施している厚生労働省認定の手話通訳士試験における合格者数は、現在のところ合計1561名となっている。その約23%が東京都で登録されているが、一方で、手話通訳士数が10名以下の県もあり、手話放送番組拡大のためには、より高度な技術を身につけた人材の育成が必要である。特に、新しい言葉が登場するニュース番組では、限られた時間の中で正確にその内容を手話で表現しなければならず、非常に高度な技術が要請されている。

5の2の3 緊急放送
災害時の緊急放送における手話放送番組の実施については、前述の通常時の放送の際と同様に、番組制作及び人材育成における課題を解決する必要がある。

5の3 解説放送における課題
5の3の1 解説番組の制作上の課題
解説番組制作は、番組本体をもとに新たに脚本を書く作業が必要であり、少なくとも放送日の1週間前に番組本体が完成していなければならない。このため、現在、解説放送をおこなっている番組は、ドラマが中心となっている。ただし、ドラマや映画の中には、原作者等の了解が必要な場合もあり、権利処理上の理由から、解説放送が行うことができない場合もある。
NHKでは、NHK教育テレビ「ETVワイド ともに生きる2005 働く!」(2005年12月3日(土曜日)19時から22時)及びNHK総合「トリノパラリンピック<競技速報>」の(平成18年3月11日(土曜日)から20日(月曜日)14時台、15時台の23分)、「トリノパラリンピックの10日間」(2006年3月21日(火曜日)8時35分から9時30分)において、生放送番組での解説放送を実施したが、効率的な放送体制の確保等の課題があげられている。

5の3の2 人材育成
解説放送は、視覚障害者の障害の度合い、感性によって求めるものが違うことがあり、完璧な番組を制作することは非常に困難であるが、その中でも完成度の高い番組を制作するためには、その制作に当たって、経験のある専門家に頼らざるを得ない状況になっている。また、生放送番組における解説放送では、目で見た情報を的確に言葉にして伝える技術を有するアナウンサーが必要となっている。

5の3の3 緊急放送
緊急時の際のニュース速報は、テロップで表示されるだけで読み上げが行われないため、視覚障害者にとっては、何が起こっているのか把握できない状況となっており、ニュース速報の音声化については、視覚障害者からの要望が強い。
後述(6 研究開発の現状」)、NHK放送技術研究所では、地震、気象情報、ニュース等の字幕スーパーを合成音声化し、デジタル放送の副音声チャンネルで自動送出する研究開発を実施している。
また、総務省の委託研究では、L字型画面やデータ放送のニュース画面の文字情報を音声で読み上げたり、点字表示するといった研究が進められている状況である。

5の3の4 デジタル放送のユーザーインターフェース
最近のデジタルテレビは多機能で、リモコンにはたくさんのボタンがついており、視覚障害者にとっては、非常に使い難いものとなっている。そこで、必要最低限の機能を有したボタンの少ないリモコンや、視覚障害者のニーズに合わせた音声対応のリモコン等の開発が課題となっている。

6 研究開発の現状
6の1 視覚障害者XML及び視覚障害者用受信端末の開発(マルチメディアブラウジング)
総務省では、平成17年度から平成19年度にかけて、独立行政法人情報通信研究機構の委託研究として、「視覚障害者XML及び視覚障害者用受信端末の開発」を実施している。
この研究は、デジタル放送で提供されるデータ放送やEPG(電子番組ガイド)、放送コンテンツについて、共通の基盤(視覚障害者XML)を介することで、視覚障害者向けの音声、点字、指点字や弱視者のための拡大反転表示、触覚提示など多様な形態での出力を可能とするもので、これによって、弱視者から盲聾者までの幅広い視覚障害者が、視覚に障害のない方と同様に、デジタル放送を楽しむことができるようになる。早期実用化に向けて、引き続き研究開発が推進されることが望まれる。

6の2 解説放送的サービスの充実に資する研究
NHK放送技術研究所では、文字情報から音声合成を行い、その音声をデジタル放送の副音声チャンネルで自動送出したり、テキストデータを送出したりすることで、視覚障害者用受信機での読み上げや点字出力も可能となる技術の研究開発を実施している。
この技術が実現すれば、視覚障害者からの要望が高い事項である、外国語放送での日本語吹き替え、テロップで表示されるニュース速報の読み上げについて、合成音声での対応が実現されることになる。
さらに、台本や字幕を利用して、補完情報を自動生成する解説放送的情報の制作技術の研究も行われている。
これらの研究についても、早期実用化に向けて、研究開発が推進されることが望まれる。

6の3 視覚障害者向け放送ソフト制作技術
平成8年度から平成15年度にかけて、総務省は、通信・放送機構を通じて、音声処理技術や自然言語処理技術などのコンピュータ技術を活用して字幕制作工程の多くを自動化し、字幕番組を効率的に制作するシステムの開発を実施した。
この8年間の研究を通じて構築したシステムによって、ドラマ、バラエティー、情報番組等の録画番組について、従来の3分の1から3分の2の時間で字幕を制作することが可能となった。
本システムは、平成16年度には実用化され、平成17年度には、合計11社の放送事業者や字幕制作会社で導入され、現在も活用されている。

6の4 生字幕遅延補正方式
生放送番組における字幕は、生放送の音声をもとに字幕を制作するため、映像・音声に対して字幕が遅れて表示される。この遅延を目立たなくする送受信方式の開発が、平成17年度の独立行政法人情報通信研究機構の高齢者・障害者向け通信放送サービス充実研究開発助成事業の一つとして行われた。
この方式は、放送側において遅延制御情報の送出を行い、テレビ受信機側で映像・音声と字幕の表示時間軸を調整し、両者のタイミングを一致させて映し出すものであり、現在、デジタル放送用の試作機開発に取り組んでいるところである。
同研究の今後の課題としては、放送規格への追加、生字幕入力装置の変更・改修、テレビ受信機への機能追加等が挙げられているが、これらの点については、既存の規格との関係もあり、慎重に検討していくことが必要と考えられる。

7 今後の視聴覚障害向け放送の推進にあたっての提言
7の1 行政の役割
7の1の1 視聴覚障害者向け放送の推進に向けた枠組み
総務省では、視聴覚障害者向け放送普及に向けて、字幕番組・解説番組等制作費の一部助成、字幕番組・解説番組の放送努力義務化、さらに字幕放送については、「字幕放送普及行政の指針」の策定という取り組みを実施してきた。 また、各放送事業者は、「字幕放送普及行政の指針」達成に向け、自主的に字幕拡充計画を作成し、行政においてその進捗状況を把握・公表してきた。
この結果、平成9年度にNHK(総合)32.5%、民放キー5局平均3.5%であった字幕付与可能な総放送時間に占める字幕放送時間の割合は、平成17年度には、字幕拡充計画の計画値(NHK(総合)94.0%、民放キー5局平均53.1%)に対して、NHK(総合)98.2%、民放キー5局平均65.9%と目標値を達成し、着実に拡充されてきている。
このように字幕付与率が各局の拡充計画以上に伸びていることは、総務省及び放送事業者による複合的アプローチの結果であると考えられる。この10年の経験や、現状と課題を踏まえ、字幕付与可能な放送番組を拡大しつつ、今後も同様の枠組みを維持し、字幕放送の拡充を推進していくことが求められる。また、データ放送やオープンキャプションにより番組の大部分を説明している場合を字幕放送に含めることについても、検討が求められる。
なお、指針の期間については、現行指針や諸外国の状況を踏まえて10年で設定し、設定後は、2011年のアナログテレビジョン放送の終了や、近年の急速な技術進展を考慮して適時に見直しを行うことが求められる。
手話放送、解説放送については、それらの実施割合は低い状態であるが、技術的課題や米国や英国の状況を考慮しながら、字幕放送と同様の枠組みを設けるのが適当であるか検討していく必要がある。

7の1の2 字幕番組・解説番組等の制作費促進のための助成スキームのあり方
字幕番組・解説番組等の制作促進のための助成金は、字幕、解説、手話番組については多額の制作コストが必要となる一方で広告収入が見込めず、経営採算性を重視する民放事業者にとっては、当該番組導入のインセンティブが働きにくい構造になっていることから、字幕制作等の円滑な立ち上がりを支援する目的で創設されたものであり、これまで、視聴覚障害者向け放送の拡充に大きな効果をあげてきた。
今後、字幕制作費助成対象については、字幕付与が困難だとされる生放送番組を中心とすることや、普及が遅れている解説番組及び手話番組制作費について重点的に助成する等、視聴覚障害者向け放送番組の制作を巡る状況をみながら、効率的な助成方策を検討し、助成していくことが求められる。
また、総務省では、平成13年度から、情報通信分野における専門的な知識・技能を有する創造的な人材の育成を図ることを目的に、情報通信人材研修事業の助成も行っており、情報通信人材研修事業には、放送番組を制作する業務等が含まれている。平成14年度からは障害者を対象とする情報通信人材研修事業を行う場合に助成対象経費の3分の2を限度に助成を行っている。
近年の急激な視聴覚障害者向け放送の普及により、視聴覚障害者向け放送番組制作者の人材育成は実態に追いついていないとも言われており、この状況が続くようであれば、人材育成の支援制度を検討することが望まれる。

7の1の3 研究開発
総務省は、平成8年から平成15年にかけて、視聴覚障害者向け放送ソフト制作技術の研究開発を実施し、ドラマ、バラエティー、情報番組等の録画番組について、従来の3分の1から3分の2の時間で字幕を制作することが可能となり、平成16年度に実用化された。
また、総務省は、平成17年度から独立行政法人情報通信研究機構の委託研究で、視覚障害者XML及び視覚障害者用受信端末を開発しており、早期実用化に向けて研究開発を推進することが求められる。この研究開発には、視覚障害者が携わっており、視覚障害者のニーズを踏まえた研究成果が期待される。
一方、手話放送の拡充に向けては、字幕放送のように、視聴者が手話をつけるかどうか選択できる技術が開発されることが望まれており、研究開発実施の可能性を検討することが求められる。
なお、今後の研究開発の実施にあたっては、視聴覚障害者や放送事業者等の関係者の意見を広く聞きつつ、研究開発を進めていくことが求められる。

7の1の4 高齢者への周知
高齢化の進展に伴い、中途視聴覚障害者の増加が予想されるが、視聴覚障害者向け放送は、視聴覚が不自由となった高齢者にとっても有益であると考えられる。
総務省が、平成18年2月28日から3月3日にかけて、50歳以上の中高年層の男女に対して実施した委託調査によると(回収数219)、字幕放送を知らない人が12%、解説放送を知らない人が53%であった。また、老テク研究会が、平成18年10月23日から11月1日にかけて、65歳以上の男女100名に対して実施した視聴覚障害者向け放送の認知度調査によると、字幕放送を知らない人が19%、聞いたことはあるが見方が分からない人が23%であり、解説放送を知っている人が35%、聞いたことはあるが見方が分からない人が24%であった。
このように、視聴覚障害者向け放送は、高齢者にあまり知られていない状況となっており、行政は、高齢者への周知についても取組んでいく必要がある。

7の1の5 世論の喚起
視聴覚障害者向け放送の拡大には、間接または直接に一般国民の負担が発生するため、国民が視聴覚障害者向け放送の必要性を理解することが重要である。そのため、広く国民全体に対し、政府広報等による情報提供等積極的な周知を行うことが求められる。
また、障害者団体、高齢者団体等の利用者に対しては、テレビの利用方法等について、パンフレット等を用いて情報提供を行うことが求められる。

7の2 今後の視聴覚障害者向け放送の普及に向けて
7の2の1 字幕放送、手話放送、解説放送
字幕放送については、平成9年に、平成19年までに字幕付与可能な放送番組の全てに字幕を付与するという「字幕放送普及行政の指針」が策定された。放送事業者は、自主的に字幕拡充計画を作成し取組んできた結果、字幕放送は着実に拡充されてきており、今後も拡充計画の策定が求められる。
手話放送、解説放送については、実施割合は低い状態であり、技術的課題や米国や英国の状況を考慮しながら、検討していく必要がある。

7の2の2 意見交換の機会の検討
視聴覚障害者向け放送を効果的に拡大していくためには、放送事業者、電機メーカー、視聴覚障害者等の関係者が意見交換を行い、それぞれの要望や事情を踏まえて、お互いに協力しながら取組んでいくことが必要である。そのため、関係者が定期的に集まって意見交換をする場を設けることが求められる。
なお、財団法人全日本聾唖連盟からは、CS障害者放送統一機構が有している視聴覚障害者のニーズを踏まえた番組制作等の技術の活用についても、意見交換を行うことが有益ではないかという提案があった。
このような意見交換の場の一例としては、情報通信アクセス協議会があげられる。情報通信アクセス協議会は、障害者・高齢者を含むすべての者に対する電気通信アクセシビリティの確保・向上を目的とした活動を実施している団体であり、電気通信関連団体、障害者・高齢者団体、学識経験者から構成され、総務省はオブザーバーとして参加している。事務局は、情報通信ネットワーク産業協会に置かれている。

7の2の3 広報の充実
7の1の4で述べたとおり、視聴覚障害者向け放送の拡大には、一般国民の理解が必要である。そのため、行政の他、放送事業者等も放送アクセシビリティの確保について社会的合意を得るための周知広報をすることが求められる。老テク研究会からは、地上デジタル放送の理解促進のための、視聴覚障害者向け放送の活用を含む地上デジタル放送に関する勉強会の開催という提案があった。
また、電機メーカーは家電販売にあたって、バリアフリー対応商品であることをPRする等、視聴覚障害者向け放送が社会に必要なものであることを広報していくことが求められる。
 
7の2の4 利用者側の情報リテラシーの向上に向けて
視聴覚障害者向け放送の拡充のためには、関係者の今後の努力が期待されるものの、現時点で克服困難な課題もある。
放送サービス提供側は、視聴覚障害者のニーズを的確に把握し、効果的な視聴覚障害者放送の推進に努めることが求められる一方、利用者側は、デジタル放送化により提供可能となったデータ放送を活用する等、ユニバーサル化を考慮して、現状の放送サービス全体の中から積極的に放送の効用を享受するよう意識改革を行う必要がある。

視聴覚障害者向け放送の拡大に向けては、行政の取組み、放送事業者、電機メーカー等のサービス提供側の取組みのほか、利用者側も放送のデジタル化を大きな転換点と捉え、積極的に情報リテラシーを向上させることが求められる。

 

資料 1
「デジタル放送時代の視聴覚障害者向け放送に関する研究会」開催要綱

1 背景・目的 
   平成9年に字幕放送へのアクセス機会の拡大に向けて、郵政省(当時)は字幕放送普及行政の指針として、「2007年までに字幕付与可能な放送番組の全てに字幕を付与する」という目標を策定した。その後、NHK及び民間放送事業者(関東広域圏を放送対象地域とする放送事業者等)が字幕拡充計画を作成して字幕放送の普及・推進に取り組んできたところである。
  本研究会は、デジタル放送の進展、高齢化の進展、字幕放送の受信可能な端末の普及により、字幕放送、解説放送及び手話放送(以下「字幕放送・解説放送等」とする。)の利用者が増加することが予想されるところ、今後の技術・サービスの進展を踏まえた、字幕放送・解説放送等拡充の推進に向けた施策の立案に資することを主たる目的とするものである。

2 名称 
  本会の名称は「デジタル放送時代の視聴覚障害者向け放送に関する研究会」と称する。

3 検討事項 
(1)字幕放送・解説放送等の現状及び課題の把握について
(2)デジタル放送の進展、高齢化の進展を踏まえた字幕放送・解説放送等の普及方策について
(3)字幕放送・解説放送等の普及のための官民の役割について
(4)その他必要な事項

4 構成・運営 
(1)本会は、政策統括官(情報通信担当)の研究会として開催する。
(2)本会の構成員は、資料2のとおりとする。
(3)本会には、座長及び座長代理を置く。
(4)座長は、構成員の互選により定め、座長代理は座長が指名する。
(5)座長は、本会を招集し、主宰する。
(6)座長代理は、座長を補佐し、座長不在のときには、座長に代わって本会を招集し、主宰する。
(7)座長は、必要に応じ、外部の関係者の出席を求め意見を聞くことができる。
(8)座長は、上記の他、本会の運営に必要な事項を定める。

5 庶務  
   本会の庶務は、情報通信政策局情報通信利用促進課が行う。

6 開催期間 
   平成18年10月から平成19年3月頃を目途に計5回程度の開催を予定。

資料2

構成員
 (敬称略、五十音順)
 浅原 重夫  松下電器産業株式会社 コーポレートR&D戦略室
 ユニバーサルデザイン推進グループ グループマネージャー
 荒井 清実  株式会社東京放送 メディア推進局デジタル放送企画部担当部長
 岩下 恭士  毎日新聞社 デジタルメディア局 ユニバーサロン編集長
 大戸 正彦  日本テレビ放送網株式会社 メディア戦略局次長
 音  好宏  上智大学 文学部新聞学科 助教授
 倉野 公嗣  社団法人 地上デジタル放送推進協会 技術部長
 近藤 則子  老テク研究会 事務局長
 笹川 吉彦  社会福祉法人 日本盲人会連合 会長
 指川  正  株式会社 毎日放送メディア局次長
 高岡  正  社団法人 全日本難聴者中途失聴者団体連合会 理事長
 橋 紘士  立教大学 コミュニティ福祉学部 教授
 多田  暁  株式会社テレビ東京 編成局次長
 堤  靖芳  株式会社フジテレビジョン 編成制作局知財情報センター室長
 鶴渕 哲男  日本電気株式会社 放送・制御販売本部 統括マネージャー
 寺島  彰  浦和大学 総合福祉学部 教授
 畠山 経彦  日本放送協会 編成局 計画管理部 統括担当部長
 藤原 一史  株式会社テレビ静岡 東京支社 編成業務部 部長
 古川 柳子  株式会社テレビ朝日 編成制作局クロスメディア編成専任局長
 宮本 一郎  財団法人 全日本聾唖連盟 理事

資料3
研究会開催の経緯

第1回 平成18年10月23日(月)
(1)字幕放送・手話放送の取組み紹介
(説明者:日本放送協会、株式会社テレビ朝日、株式会社テレビ静岡、株式会社テレビ和歌山、?衛星放送協会)
(2)利用者の視点からの要望
    (説明者:全日本聾唖連盟、全日本難聴者中途失聴者団体連合会)

第2回 平成18年11月16日(木)
(1)解説放送の取組み紹介
(説明者:日本放送協会、株式会社日本テレビ放送網)
(2)視聴覚障害者向け放送番組制作技術の研究開発の紹介
    (説明者:日本放送協会放送技術研究所、NHK放送研修センター、
         株式会社スピードワープロ研究所、株式会社テレビ朝日データビジョン、
         エル・エス・アイ・ジャパン株式会社)
(3)利用者の視点からの要望
    (説明者:笹川構成員、近藤構成員)

第3回 平成18年12月11日(月)
(1)利用者の視点からの要望
(説明者:近藤構成員)
(2)障害者団体の取組
    (説明者:特定非営利活動法人CS障害者放送統一機構)
(3)放送事業者からの意見
    (説明者:日本放送協会、日本民間放送連盟)
(4)報告書骨子(案)について
    (説明者:事務局)

第4回 平成19年2月8日(金)
(1)デジタル放送時代の視聴覚障害者向け放送に関する研究会報告書(案)
について

第5回 平成19年

資料4

視聴覚障害者向け放送の充実に向けた取組「字幕普及目標の行政指針」
1997年11月、総務省(旧郵政省) は、字幕放送の普及促進を図るため字幕放送普及行政の指針を策定

(以下、表の説明。指針の内容)
NHK 普及目標の対象(1)放送時間 午前7時から午後12時まで(2)放送番組 新たに放送する字幕付与可能な全ての放送番組 目標 2007年までに対象の放送番組のすべてに字幕付与(現状)NHK総合30% 備考 教育放送については、聴覚障害者等のニーズの実態を踏まえ、できる限り多く字幕付与する。
放送大学学園 普及目標の対象 NHKと同様 目標 聴覚障害者等のニーズを踏まえ、できる限り多く字幕付与 備考 空欄
地上民放 放送衛星による放送(NHKの放送を除く)普及目標の対象 NHKと同様
 2007年までに対象の放送番組の全てに字幕付与(現状)東京キー局4%   備考 独立U局については目標年次を弾力的に捉えることとする。
通信衛星による放送 有線テレビジョン放送 普及目標の対象 NHKと同様 目標 当面は、できる限り多くの放送番組に字幕付与 備考 空欄

注釈(1)現状とは、平成9年7月末時点を示す
(2)「字幕付与可能な総放番組」とは次に掲げる放送番組を除くすべての放送番組とは、
・技術的に字幕を付すことができない放送番組(例 現在のところのニュース、スポーツ中継等の生番組)
・オープンキャプション、手話等により音声を説明している放送番組(例 字幕付き映画、手話ニュース)
・外国語の番組
・大部分が歌唱や器楽演奏の音楽番組
・権利処理上の理由等により字幕を付すことができない放送番組

資料5
NHK及び民放キー5局の字幕拡充計画(平成13年10月策定)

字幕付与可能な総放送時間に占める字幕放送時間の割合(系列局が制作する番組を除く)
NHK 平成12年 67.6% 平成13年 71.3% 平成14年 75% 平成15年 82% 平成16年 88% 平成17年 94% 平成18年 100%
日本テレビ 平成12年 9.9% 平成13年 15.0% 平成14年 17.6% 平成15年 25.3% 平成16年 33% 平成17年 45.8% 平成18 58.6% 平成19年 84.3%
TBS 平成12年 13.9% 平成13年 22% 平成14年 28.1% 平成15年 34.6% 平成16年 46.8% 平成17年 59% 平成18年 71.1% 平成19年 85.3%
フジテレビ 平成12年 8.9% 平成13年 20.6% 平成14年 29.4% 平成15年 36.6% 平成16年 47.8% 平成17年 58.1% 平成18年 66.8% 平成19年 88.3%
テレビ朝日 平成12年 6.1% 平成13年 20.8% 平成14年 33.3% 平成15年 46.3% 平成16年 60% 平成17年 70% 平成18年 80% 平成19年 90%
テレビ東京 平成12年 6.0% 平成13年 9.7% 平成14年 13.3% 平成15年 14.9% 平成16年 20.7% 平成17年 32.8% 平成18年 59.2% 平成19年 80.4%

注 平成12年は実績値。平成13年以降の計画値は、平成13年10月現在のレギュラー番組編成表案をもとにすることを前提として作成。