鳥取県南部町教委が07年度の全国学力テストの学校別成績を開示していたことが分かった。町内の男性からの情報公開請求に応じた。文部科学省は、学校の序列化を招くとして学校別成績を公表しないよう市町村教委に求めており、同省学力調査室は「市町村教委が学校ごとの成績を一括開示した例は聞いたことがない」としている。
開示したのは、児童数が少なく個人が特定されるおそれがある小学校1校を除く、小学校と中学校各2校の平均点。9月16日に男性が開示請求し、10月2日に開示した。
永江多輝夫教育長らが男性と面談し、むやみにデータを公表しないことを確認。9月30日の定例教育委員会で「教育は地域とともに考えるべきだ」とし全会一致で開示を決めた。永江教育長は「町情報公開条例に沿って判断した。隠す情報ではない」としている。
文科省の実施要領は学校が自校のデータを公表することは認めており、同県三朝町では対象児童が少ない1校を除き、小学校2校と中学校1校が学校便りで公開している。宇都宮市でもほぼ全小中学校が平均正答率を学校のホームページで公表。公表を基に住民が「学校ランキング」を作ることも可能だが、こうした公表をする自治体は少数派にとどまる。
最近では大阪や秋田など一部の知事が、市町村教委に対して成績公表を迫る動きも出ているが、求めているのは各学校別ではなく市町村別の成績。南部町の公表は、かなり踏み込んだ対応といえる。
鳥取県では、県情報公開審議会が7月、市町村別と学校別の成績を「開示すべきだ」と答申したが、県教委は非開示を決定。市民団体が決定の取り消しを求める行政訴訟を起こしている。【武内彩】
南部町教委が全国学力テストの学校別成績を開示したことに文部科学省には動揺が広がった。他の自治体でも、情報公開条例に基づく請求があれば、開示される可能性があるためだ。文科省は「今後のテスト実施に支障が出る可能性もある。他教委に広がるのは防ぎたい」と説明している。
文科省は、都道府県教委に市町村別・学校別の成績を公表しないことや、市町村教委に学校別成績を公表しないことを求めてきた。理由は(1)序列化や過度な競争が生じる恐れがある(2)市町村教委の協力や国民的理解が得られなくなり、参加校が減って全国的状況を把握できなくなる恐れがある--の2点。教育関係者には、学校選択制を実施する地域で開示された場合「成績下位の学校への通学を回避する動きが出かねない」との懸念もある。
大阪や岩手では自治体が独自に実施している学力テストの結果公表を求める訴訟も起きているが、司法判断は分かれている。個々の自治体の情報公開条例が、不開示判断の基準などをどう設定しているかも異なる。他の自治体に同様の動きが広がる可能性は残ったままだ。【加藤隆寛】
毎日新聞 2008年10月4日 東京朝刊