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1泊1500円、漂った孤独 ビデオ店放火の犠牲者(1/2ページ)

2008年10月3日18時31分

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 大阪の個室ビデオ店の放火事件の犠牲者は、男性15人にのぼった。3日までに身元が判明したのは20代から60代までの12人。未明の大都会の片隅。1晩1500円の「宿」。なぜ、彼らはひとり時を過ごしていたのか。

 原大次郎さん(40)の住所は、京セラドームに近い大阪市西区のワンルームマンション5階だった。その部屋には人が住んでいる気配がない。部屋の契約者は女性名で、入居者名簿にも原さんの名は見当たらない。

 だが、同じ階の30代の女性は、原さんと同じ年ごろの男性が暮らしていたことを知っていた。

 その男性は数年前から、女性と一緒に暮らしていた。朝出勤する女性を、男性は玄関先で見送っていた。いつもTシャツにジーンズ姿。「女の人が生活を支えていたのかな」と思っていた。

 部屋からは話し声もテレビや掃除機の音もしない。「息を潜めて生きているのか」と思った。時々けんかする声が聞こえてきたが、数カ月前から女性の姿を見かけなくなっていた。

 隣の部屋の60代の女性は、火災の前日の夕方、男性が部屋から荷物を運び出している姿を見かけた。「引っ越すの?」と尋ねると、「長いことお世話になりました」と笑顔で外階段を下りていった。

 その半日後の1日未明、個室ビデオ店が猛煙に包まれ、原さんの遺体が見つかった。

 府警が明らかにした住所は、犠牲者の所持品の記載からたどったものも少なくない。実際はそこに住んでいない人もいる。

 平川隼人(はやと)さん(31)の住所は堺市西区のワンルームマンションの一室。しかし、そこに暮らすのは、平川さんと面識のないという70代の男性だった。7月に引っ越してきたという。マンションの隣の家の住人は「マンションの人は自治会に入ってないし、出入りも頻繁だから覚えてないね」と言った。

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