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【社会】

校長、自閉症児の入学を拒否 本人前に「この子では無理」

2008年10月3日 朝刊

 愛知県知多市立旭北小学校(舟橋佳延校長)で、来春の就学相談に訪れた同市の発達障害の自閉症の子ども(6つ)と母親(40)に、舟橋校長が「この子ではうちの学校は無理」と事実上、門前払いしていたことが分かった。

 障害がある児童の就学は本来、外部の専門家も交えた「就学指導委員会」が保護者や幼稚園の意見も聞きながら半年近く調査、議論し、市教育委員会が決定する。知多市教委は1日、対応が不適切だったとして舟橋校長に口頭で指導した。

 母親は、中度の自閉症と診断されている子どもと一緒に9月25日、同校を訪ねた。15分ほど校内の特別支援学級などを視察した後、舟橋校長は子どもも同席した場で「無理」と断定。母親によると「小学校に来る状態ではない」「特別支援学校に行くべきだ」などと発言した。

 子どもは保護者の付き添いなしで保育園に通っている。両親は「支援学校も含め、子どもに適した学校はどこか、考え始めた直後だった。本人の前での暴言も教育者として許せない。子どもが小学校に行く権利はないのか」と憤る。

 舟橋校長は、「わが校の態勢では十分な支援ができない現状をお伝えしたかった。心に傷を与えたことをおわびしたい」とし、戸谷肇教育長は「校長の表現は不適切。入学の是非を校長が独断で判断することもできない。同じようなケースがないよう、各校長に徹底したい」と話している。

◆専門医師「氷山の一角」 障害者支援現場の理解進まず

 発達障害の子を持つ親や専門医師は、入学拒否は各地で恒常的に行われており、今回明るみに出たのは「氷山の一角にすぎない」と強調する。発達障害者支援法や改正学校教育法は、適切な教育的支援や指導、体制の整備を義務づけているが、現場の理解は進んでいない。

 「また起きたかという感じ」。発達障害の専門医である東海市民病院(愛知県東海市)の早川星朗小児科医長は「学校側は『お子さんに合った教育ができない』『安全が確保できない』と、もっともらしい理由をつけて面倒を避けようとする」と指摘する。

 同様に発達障害児の小学校入学を拒否された同県半田市のある保護者は「知人の親は、この子の状態ではとても通学は無理。(普通の学校にも通えるとの)医師の診断書を持ってきたら、入学を考えてもよいとまで校長に言われた」という。

 早川医師は実際の相談例として、就学は認めても「児童が動き回らないよう、教師が机の回りに画びょうを置いた」「行事の日は学校に来ないでくれと言われた」などの例も挙げる。

 こうした明らかな人権侵害でも、保護者は学校に預けている子どもが不利な扱いを受けることを心配し、泣き寝入りしているのが大半という。

 名古屋市の学校関係者は「保護者の希望が普通学級に通わせたいならば、何とか実現できるように体制を整え、最大限の努力をするのが学校の役目。今回のケースは信じられない」と話している。

 

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