県立三室病院(三郷町)が8月から、新規のお産の受け付けを停止していることが分かった。来年4月以降の医師確保にめどがたたないためで、4月以降、産科が休止となる可能性もある。県内では県立五條病院(五條市)も06年4月から産科を休止したまま。人口当たり産婦人科医師数が全国最低水準という深刻な医師不足が、地域の医療拠点の県立病院にまで影を落としている。
三室病院の年間分娩(ぶんべん)数は約200件。同病院や県によると、産科常勤医2人のうち、50代の1人が勤務の過酷さなどを理由に来年3月で退職の意向。常勤医1人での産科継続は困難なため、来年4月以降に出産予定を迎える新規のお産の受け付けを、8月中旬から停止している。
医師は昨年度も退職の意向を示して県などが今年度まで慰留した経緯があり、更に引き延ばすのは難しい状況。病院では、民間診療所の医師を招いて診療してもらう方式も検討し、近隣の医師らに打診したが、協力は得られなかった。県医療管理課は「産科継続に向け、最大限の努力をしている」とするが、人材獲得の見通しは立っていない。
厚生労働省の調査(06年12月時点)によると、15~49歳の女性10万人当たりの産科・産婦人科医師数は、奈良県は31・9人で全国43位。県内では昨年以降、大淀町立大淀病院(大淀町)が産科を休止。済生会中和病院(桜井市)でも分娩の取り扱いをやめている。【中村敦茂】
毎日新聞 2008年10月1日 地方版