子どもと教育を考える
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第7回】「カデナ米軍基地」と「1あたり量」

前回は、「マジッククロス」を使って、

「全体量(ぜんたいりょう)」を
 求(もと)める計算(けいさん)
「かけ算」
「1あたり量」を求める計算 「ニコニコわり算」
「いくつ分」を求める計算 「ドキドキわり算」

…というように、3つのかけ算とわり算の種類(しゅるい)を見分(みわ)けられることを学習(がくしゅう)したね。

 今回は、身につけた「かけ算」、「ニコニコわり算」、「ドキドキわり算」を使って、沖縄(おきなわ)のカデナ米軍基地(べいぐんきち)と嘉手納町(かでなちょう)のことを勉強(べんきょう)するよ。地理(ちり)や歴史(れきし)、そして平和(へいわ)を考(かんが)える勉強も盛(も)りこんでいるので、それもいっしょに楽しみながら、「かけ算」と「わり算」の世界を広(ひろ)げてみよう。

Q.1 
地図帳(ちずちょう)やテレビニュースで、「人口密度(じんこうみつど)」という言葉(ことば)を見(み)たことないかな?
「人口密度」って何だか知ってる? これが問題だよ。
A.
「人口密度」は「1の広さに、何人の人が住(す)んでいるか」の混(こ)み具合(ぐあい)を表した数字なんだ。だから、「1あたり量」の意味で考えると、1あたり?人の「1あたり量」といえるね。


⇒ 1あたり520人

⇒ 520人/
  (520人パー


Q.2
わたしたちが住んでいる、“日本”全体の「人口密度」はどれだけかな?
A.
 2003年10月1日の調査(ちょうさ)で、イラストのようなデータが出ているよ。
「マジッククロス」で考えると、「人口密度」は「1あたり何人か」を求める計算なので、
「1あたり量」が?だから、
「ニコニコわり算」だね。よって、こういう式(しき)が考えられるよ。

(式) 1,27708050人 ÷ 3,728,5690 ?人/

この式を電卓(でんたく)で計算すると、答えは約342人/になるよ。

Q.3
日本のいちばん南にある、沖縄県本島(おきなわけんほんとう)のちょうど中ほどに嘉手納町(かでなちょう)という町があるんだ。
この町の人口は13766人で、面積(めんせき)は15だよ。(2003年10月1日調査)
Q.1とQ.2で学んだことを生かして、この町の「人口密度」を計算してみよう。
A.
「マジッククロス」で考えると、「人口密度」は「1あたり何人か」を求める計算なので、
「1あたり量」が?だから、
「ニコニコわり算」だね。よって、こういう式が考えられるよ。

(式) 13766人 × 15 ?人/

よって、答えは約918人/になるよ。

嘉手納町(かでなちょう)は日本全体より、ずっと混み合っているということが、Q2とQ3の答えをくらべるとよくわかるね。でも本当の嘉手納町の「人口密度(じんこうみつど)」の数字(すうじ)は全然(ぜんぜん)違うんだよ。どうしてかな?
それには、歴史(れきし)や社会(しゃかい)などの事情(じじょう)も関係(かんけい)してくるんだ。次のCHAPTER2から、その秘密(ひみつ)を解(と)き明(あ)かしていこう!



Q.4
この嘉手納町(かでなちょう)には、住民が絶対(ぜったい)に入れない場所があるんだ。それはどこかわかるかな?
A.
カデナ
米軍基地(べいぐんきち)

〜住民が入れないカデナ米軍基地〜

 この町の中には、フェンスで囲(かこ)まれた土地(とち)があるんだ。それが、答えに出てきた“カデナ米軍基地”なんだね。ここは、嘉手納の人たちの土地だけど、自由(じゆう)に入ることができない決まりになっているんだよ。
 住民は自分たちの土地に入るために、わざわざパスポートが必要(ひつよう)で、無断(むだん)で入るとアメリカ軍の警察(けいさつ)に捕(つか)まってしまうんだ。


Q.5
いま、嘉手納町の面積(めんせき)のどれくらいが、米軍基地になっていると思う?  次の3つの中から選んでみよう。
(1)3分の1
(2)半分くらい
(3)4分の3以上
A.

正解は(3)だよ。図で表したように、なんと町の面積の83%が、フェンスで囲まれた米軍基地なんだ。

Q.6
Q.5の答えを参考にして、嘉手納の人たちが、実際に住んでいる町の面積を求めてみよう。
A.
83%が米軍基地だから、残りの「100%−83%」で、残りの17%に町民が住んでいることになるね。そして、%は百分率(ひゃくぶんりつ)といって、小数倍(しょうすうばい)のことなんだ。百分率は「100%」を「1」とみることなんだ。すると、

100% ⇒ 1.00
17% ⇒ 0.17

つまり、17%は0.17倍と考えられるよ。

「マジッククロス」で考えると、
「全体量」が?だから、
かけ算になるね。よって、こんな式が考えられるよ。

(式) 15 × 0.17 2.55

Q.7
では、“本当の”嘉手納町の「人口密度」はどれだけかな?
A.
「マジッククロス」で考えると、
1あたり量が?だから、
「ニコニコわり算」だね。よって、こういう式が考えられるよ。

(式) 13766 ÷ 2.55 ?人/

よって、答えは5398人/になるよ。

嘉手納町(かでなちょう)は、Q3でふつうに人口密度を求めたときよりも、もっともっと人口が混み合っている町だということがわかったね。すごい人口密度だと思わない? どうして、こんな町になってしまったかは、次のミニ知識2で紹介するよ。

〜嘉手納町(かでなちょう)の
 人口密度(じんこうみつど)が増えたわけ〜


 今から59年前まで、嘉手納町(かでなちょう)の土地(とち)は全部、住民のもので、自由に出入りできたんだ。
 ところが、1945年4月に、太平洋戦争(たいへいようせんそう)で、たくさんのアメリカ軍が沖縄の島に攻(せ)めこんで来て、嘉手納町を占領(せんりょう)したんだ。戦争が終わった後、住民をみんな遠くの収容所(しゅうようじょ)に閉じこめて、その間に勝手にフェンスで囲(かこ)んで、広大なアメリカの軍事基地(=“カデナ米軍基地”のことだね)をつくってしまったんだ。
 戦争が終わって59年もの月日がたった現在(げんざい)も、自分たちの土地をぜんぜん返してもらえないし、自分の土地に入ることもできないんだ。太平洋戦争(たいへいようせんそう)が起きたのはすいぶん前なので、今は平和な国だと、ほとんどの人は思っているかもしれないね。でも、沖縄では、完全に戦争が終わったとはいえないんだ。みんな、自分の住んでいる町が嘉手納町みたいだったら、どう思う?



「人口密度」は「人口÷面積」で1あたりの人口を求める「1あたり量」なんだ。「マジッククロス」を使ったニコニコわり算で求めることができるよ。


百分率(%)は小数倍のことなんだ。たとえば、Q6にも出てきたように「100%」を「1」とみると「17%」は「0.17倍」と考えられるよ。


今回の勉強は、「1あたり量」「人口密度」を計算することで、沖縄にあるアメリカの軍事基地の問題を考えることができたね。このように、“計算した数字から、何を考えるか”ということも、算数にとって大切な勉強なんだ。


次回は、カデナ米軍基地の「F15イーグル」という戦闘機(せんとうき)が飛(と)ぶ“速度(そくど)の「1あたり量」 を、引(ひ)き続(つづ)き「マジッククロス」を使って考えていくよ。お楽しみに!

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