女性の健康 50話

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続・女性の健康50話:第27話 仕事を続ける難しさ

 この10年間で、男性の就業率は横ばいですが、女性では増加の一途にあります。これは喜ばしい変化なのですが、男性と同じように仕事をすることを求められるようになり、女性の心身の不調も増えてきました。働く意欲・能力のある女性が増え、社会の女性に対する期待が高まる一方で、旧来の女性観や制度の不備が女性に余分なストレスを生じさせているようです。

 年齢別労働力率のグラフを例に挙げます。これは15歳以降を年齢別に、労働可能人口を人口で割り算したものです。欧米の女性は、既に男性と同じように、逆U字形(勤労できる年齢以降は、高齢になり仕事を離れる時期まで、ほとんど年齢に特異的な落ち込みはない)を描きます。日本の女性では、30~34歳を谷底とするM字形を示しています。M字の落ち込みの原因は、結婚、育児のためですが、特に育児のところの落ち込みが大きいのです。この理由として、日本では、男性の長時間労働と極めて短い家事時間、また、多くの保育所待機児童の存在があります。

 時代は変化したと言っても、「男は外で働き、女はうちを守るべき」「家庭、職場でも女性は男性を補佐すべき」というような旧来の女性観はまだ根強くあります。就業、結婚、出産などについて、多様な選択肢が与えられるようになりましたが、自由を得る一方で、選択が困難である、自分の希望と異なる周囲とのあつれきが生じるといったプラス、マイナスの両側面を抱えるようになったのです。そのような中で、仕事を続けるということは女性にとって大きなストレス要因の一つとなるのでしょう。(関西医科大学付属枚方病院女性心療内科、杉本貴美子)

毎日新聞 2008年9月28日 大阪朝刊

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