米国では、女性の約25%に尿失禁、便失禁、骨盤臓器脱などの骨盤底障害があることが新しい研究により判明した。この研究により、女性の骨盤底障害が極めてありふれたものであることが明らかにされたと、報告を行った米ユタ大学医学部(ソルトレークシティー)産科婦人科教授Ingrid Nygaard博士は述べている。
しかし、高い有病率とは裏腹に、医師に相談しない女性も多いという。米ニューヨーク大学ランゴンLangoneメディカルセンター泌尿器科のVictor Nitti博士は「骨盤底疾患の報告例が実際より少ないことは間違いない。恥ずかしさや正常な加齢現象の一部だという思い込みもあるが、いずれにせよ女性が自発的には報告しにくい障害である」としている。
米国医師会誌「JAMA」9月17日号に掲載された今回の研究では、2005〜2006年の米国民健康栄養調査(NHNES)に参加した20歳以上の女性約2,000人のデータを分析。妊娠中の女性は含まれていなかった。対象者には問診および身体検査を実施。尿失禁の診断基準は失禁重症度指数(ISI)のスコアが3を超える場合とし、便失禁は月1回以上便の漏れがあること、骨盤臓器脱は膣の内側ないし外側に隆起を感じることを診断基準とした。
その結果、23.7%の女性に1つ以上の骨盤底障害があることが判明。尿失禁があるとした女性は16%、便失禁は9%、骨盤臓器脱は2.9%であった。Nygaard氏によると、今回の研究では中等度から重度の失禁に着目しており、笑ったときやくしゃみをしたときによくみられる少量の失禁は対象としていないという。高齢女性は特に骨盤底障害が多くみられ、80歳以上では約50%に尿失禁があったが、20〜39歳では10%であった。妊娠経験があると骨盤底障害の比率が高く、妊娠回数が増えるごとに増加がみられた。過体重や肥満でもリスクが増大することがわかった。
Nygaard氏によると、骨盤底障害の治療にはまず、骨盤筋の強化や行動療法などの簡単な方法から始めることが勧められており、外科手術などは最終手段になるという。「女性に知ってほしい最も重要なことは、悩んでいるのは自分1人ではないということ。骨盤底障害は危険なものではなく、治療できる」とNygaard氏はいう。Nitti氏も、「症状があったら、恥ずかしがらずに医師の診察を受けるべき。初期段階であれば必ず治療できる」と述べている。
原文
[2008年9月16日/HealthDay News]
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