東京都:「塾代」支援事業 申し込み0.1%満たず

区役所などに置かれているパンフレット。「一見して、対象者が分からない」という声も。
区役所などに置かれているパンフレット。「一見して、対象者が分からない」という声も。

 東京都が低所得者を対象に今年度から始めた「生活安定化総合対策事業」への申し込みが、当初見込み(17万人)の0.1%にも満たない140人足らずにとどまっている。塾の代金支援と就職支援の2本立てで、国も手をつけていない画期的な事業と評価されているが、過去の福祉施策で外れていた層が対象のため、周知が難しいという。

 塾代支援は、中学3年と高校3年の受験生を抱える世帯主に学習塾代や受験料を無利子で貸し、入学できれば返さなくてもいい制度。就職支援は、非正規雇用などで雇用保険を受給していない求職者に職業訓練を行い、月額15万円の奨励金を最長6カ月間支給する。

 対象は生活保護を受けていない低所得者。例えば扶養者2人の3人世帯の場合、年収320万円未満であることなどが要件となる。都は3年間で17万人の申し込みがあると見込み、今年度は塾代支援に約5億円、就職支援に約23億円の予算をつけた。

 申し込み受け付けは各区市町村の窓口で8月から始まり、都は各自治体広報誌に事業を紹介する記事を掲載、公民館や図書館にパンフレットを置いた。8月半ばから1カ月間、都営地下鉄に異例の広告まで出した。

 しかし、都生活支援課によると、所得要件などをクリアして申請まで至ったケースは塾代支援21人(9月20日現在)、就職支援115人(同16日現在)の計136人で、対象見込みの0.08%だった。多田菜穂課長は「どうすれば17万世帯に届くのか。コンビニエンスストアなどにチラシを置ければいいのだが」と予想外の結果に戸惑っている。

 生活困窮者を支援する「自立生活サポートセンターもやい」(新宿区)の湯浅誠事務局長は「学習塾に通わせたくても学費を出せない家庭は多く、ぜひ成功させてほしい。福祉事務所の窓口などで門前払いを受けてきた人が多く、対象者は行政に期待を抱いていない。地域のNPO(非営利組織)や市民団体と協力するなど丁寧な周知が必要だ」と指摘している。【市川明代】

毎日新聞 2008年9月25日 15時00分(最終更新 9月25日 15時00分)

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