アメリカ伝来のハンバーガーが日本各地で進化を遂げ、「ご当地バーガー」が活気づいている。
23日、神奈川県小田原市の城址公園で「ODAWARA AJIなバーガー」(500円)が発売される。小田原漁港のアジを名産のかまぼこ風に加工。それをフライにしてバンズに挟んだ一品だ。先月、中華の鉄人・陳建一氏はじめ料理関係者らが審査する「小田原食ブランドコンテスト」でグランプリに輝いた。
「小田原の地域色がおいしく表現されているうえ、バーガーは調理法がシンプルで今後さまざまな店やイベントでの展開が可能。アレンジの幅も広く各店の個性が出しやすい」とは、主催の小田原青年会議所の田代守孝さん(33)。バンズには町おこしの夢も挟まれているのだ。
一方、東京・神楽坂の「モスバーガークラシック」がこの夏から売り出している「神楽坂バーガー」(950円)。ビーフの香ばしさを引き立てるのは白髪ネギにみそである。
展開するモスフードサービスの広報は「神楽坂といえば和の情緒。そして、照り焼きバーガーなど日本ならではのハンバーガーを培ってきた当社の技術が込められています。そもそも神楽坂は創業間もない昭和54年から昨年まで本社があった町で、神楽坂に愛着を持つ社員から、ご当地バーガー待望論が起きていた」。
同社は全国930店のファストフードを展開するが、この店は一線を画した大人向けのレストラン。1日約100人が来店するなか、神楽坂バーガーは一、二を争う人気商品に躍り出た。「3種のみそにバルサミコ酢なども加えた個性的な味わい。万人ウケはしないと思うが、予想外の人気です。昨年の神楽坂を舞台にしたドラマをきっかけに一帯が観光地化しており、遠方からのお客さんが『せっかく来たんだから』と注文されるケースも目立ちますね」と川口直哉店長(34)。ブランド化した地名が販促効果を生んでいる。
ご当地バーガーの先駆けは故郷の「佐世保バーガー」(レギュラー690円、ジャンボ1380円)をひっさげ、都に乗り込んだザッツエンタープライズの吉村裕社長(37)だろう。5年前に東京・中野に1号店を開店。「米海軍伝来の佐世保(長崎県)の味を東京の人に食べてほしかった。ファストフードの『早い、安い』とは対極の『遅い、高い』。だけど、食べれば許してもらえた」
国産牛100%の本格派を提供する「ザッツバーガーカフェ」は昨年までに5店舗に拡大。昨年の年商は約4億5000万円で、新規3店舗を出店する今年は年商7億円を見込む。
立地により深夜まで営業。100種以上あるお酒のなかでも相性抜群というベルギーの白ビール「ヒューガルデン」が生で飲めるのもうれしい。ゆったりしたソファのくつろげる雰囲気が、また一杯を誘う。「お酒を充実させることで効率的に利益を確保できる。提案次第で食べてもらうチャンスは広がります」と吉村さん。やり手の経営者はニューヨーク進出を計画し、日本から米国へのバーガー逆輸入を夢見ている。
舶来品を繊細にアレンジし、自動車など多様な分野で本国をしのぐ製品を作り出してきた技術立国ニッポン。ハンバーガーにも大和魂が炸裂(さくれつ)している。(重松明子)
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