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ルポ・腐女子の愛は国境を越えて(1)

婦人公論9月 2日(火) 17時54分配信 / エンターテインメント - エンタメ総合
 それは、韓国・ソウルに暮らすメル友の何気ない一言から始まった。
「私は“腐女子”です。素敵な男たちがラブ・アフェアを繰り広げる、日本のボーイズラブ(以下BL)が大好きです!」
 彼女、スヨンさん(25歳)は、ソウルの大学院で経済を学ぶ学生だ。流暢に日本語を使いこなし、日本のドラマやマンガにも詳しい。とはいえ、日本人でも知らない人が多い「腐女子」という言葉を、よもや韓国の女子大生の口から聞く日が来ようとは……。まさに「好き」に国境なし、である。

〈BLを読むため日本語を習得〉
 まず最初に、「“腐女子”って何?」という方のために説明しておくと、腐女子とは、男性同士の恋愛を女性向けに描いた「やおい・BL作品」に“萌える”女性を指し、彼女たちが自身のことを自嘲的に称したことから生まれた言葉だと言われている。既存の創作物(アニメ、マンガなど)をパロディ化したものを「やおい」、商業的要素の強いオリジナル作品を「BL」と分ける考え方もあるが、今回は便宜上まとめて「BL」としたいと思う。
 さて、スヨンさんがBLの世界に出会ったのは今から6年前。「年齢的には遅いほうだった」そうだが、『はじめの一歩』『テニスの王子様』『アイシールド21』などを元ネタとした同人誌に夢中になり、その後、日本のBLコミックスの翻訳版を読むようになっていったのだという。
「韓国でも日本のBL作品の翻訳版が数多く出版されていますが、熱心なファンほど、日本語を勉強し原書で読むことを目指すようです」
 かく言う彼女も、BLを読むために独学で日本語を習得したファンのひとり。当初、テキストとして活用していたのは『テニスの王子様』だったとか。
「日本語ができる人たちは皆、日本からお目当ての本や関連グッズを通販で取り寄せたり、ネットオークションで落札したりしています。それをしたいがために、必死で日本語を学ぶ人も多いんですよ。仲間のなかには、日本でスーツケースいっぱいにBL作品を買い込んで重量オーバーになり、空港で超過料金を取られた人もいます。もちろん、専門店が立ち並び腐女子の聖地と言われる東京・池袋の“乙女ロード”は、私たちの憧れの場所。ちなみに韓国では、腐女子のことを“同人女”もしくは“やお女”と呼びます(笑)」
 そんなスヨンさんは、日本のBLの何に魅力を感じているのだろう?
「ストーリー展開の豊富さと、ファンタジー性ですね。韓国にも、少ないながらオリジナルのBLコミックスや小説があり、2〜3年前からはドラマCDも制作・発売されるようになりました。でも登場人物が韓国人だと現実味が強まり、どうしても気恥ずかしさが先に立ってしまうんです。その点、外国人であれば、こちらも傍観者としてファンタジーの世界に浸ることができますから」
 彼女は「韓国オリジナルのBL界は完全なる不毛地帯です」と言うが、現地で販売されているコミックスを見た限りでは、絵も繊細で美しく、独特の雰囲気を持つ作品が少なくない。最近では、韓国のBLコミックスが翻訳され、日本で販売されるようにもなった。日本に比べるとさすがにラブシーンの描写は抑え気味だが、発展途上の分野だけに今後が楽しみだ。

ルポ・腐女子の愛は国境を越えて(2)へ続く
取材・文◎上田神楽(ライター)

【関連情報】
『婦人公論』2008年8月7日号目次
  • 最終更新:9月 2日(火) 17時54分
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