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2006-05-14

脳の三次元画像の精神科医療への応用

精神病患者は脳に目に見える形で変化をきたしていることがある。画像診断をおこなうことでより適切な治療が可能となる。SPECT (Single Photon Emission Computer Tomography) 技術による脳の三次元画像が一般化すれば精神科医療に大きな変革が訪れる。IT Conversationで配信されているSPECT and the Future of Mental Healthと題する講演の中でダニエル・アーメン氏(Daniel Amen)はそのように述べている。

  • 長年夫婦カウンセリングを受けていて改善されなかった夫婦のSPECT画像を見たところ、夫に薬物による脳の障害が見受けられた。夫に聞いても妻に聞いても夫は薬物乱用はしていないという。夫の仕事は家具の仕上げだった。そこで有機溶剤を長年吸っていたのである。夫婦仲が悪くなったのは夫がその仕事に就いて1年ほど経ってからだった。
  • 注意欠陥障害(ADD: Attension Deficit Disorder)の治療を受けていたが改善されない患者のSPECT画像を見たところ小脳(cerebellum)にメロン大の腫瘍が見つかった。腫瘍に有効な治療を施したところ症状は改善され、画像で見ても脳の状態は大きく改善された。
  • 脳の成長は25歳まで続く。神経線維はミエリン鞘を持つことで信号の伝達が早くなるが、前頭葉のミエリン形成(myelinazationと講演中では言っているが、通常はmyelinationと言うようだ)は25歳まで続くのである。保険会社はそのことをずっと以前から知っており、25歳から保険料が安くなる。
  • アルツハイマー病は症状が表れる9年前から画像診断で兆候を見ることができる。早期に兆候を見つけて治療を施すことで大きな効果が期待できる。
  • 脳は豆腐のようなやわらかさで、それが頭蓋骨という硬い殻に覆われているので、怪我で脳が傷つくことは稀ではない。子供にサッカーのヘディングや、フットボールは問題である。
  • 子供は、フットボールで3.5ゲームに1回の割合で脳震盪(concussion)を起こしている。1ゲーム中に30回頭を打ち、中には交通事故並みの衝撃を受けていることもある。
  • 多くの場合、患者は頭部に衝撃を受けたことを忘れている。脳に損傷が見られるトゥーレット症候群(Tourette syndrome)の患者に、損傷を受けるようなことをしていないか聞いても、そういうことはないという。スポーツをしていないか、交通事故に遭っていないか、など何度も繰り返し聞いたところ、やっと、オートバイ事故のことを思い出したことがあった。
  • 講演者の病院では、SPECT画像撮影には1000ドルかかる。画像をもとに診断を行うと合計で3200ドルかかる。