目 次
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■プラーク・コントロールとは・・・ ■中学生!ブラッシングして! ■ミニマル・インターベーション ■歯周病とブラッシング ■親知らず ■知覚過敏症 ■顎関節症とかみ合わせ ■マウスガード |
■プラーク・コントロールとは・・・ |
■中学生!ブラッシングして! |
■ミニマル・インターベーション |
■歯周病とブラッシング |
■いのした歯科親知らずの処置における基本方針六箇条 酷いムシ歯で抜くほかなくなった奥歯の後釜に、それまで無用だった親知らずを起用する移植をたまにやります。なにしろ、親知らずといっても完全な自分の分身、異物ではないからまず間違いなく生着します。まあ、根のかたちは違うから、抜いたアナの骨整形することはありますが、けっこううまく収まるものです。かつてやった症例で幸い失敗は一例もありませんでした。5年もてば十分と習いましたが、10年軽く超えたケースもざらです。皆さん、当たり前のように普通に噛んで使ってらっしゃいます。迅速に手際よくやると、神経も生かしたままでいけます。 ですから、レントゲン見て、将来歯を喪失するリスクのある患者さんの親知らずは、移植用のドナーとして抜かずに保存を励行しています。といっても、化膿したり腫れたりするような悪い親知らずはとるしかないのですが。 業界雑誌を読んでいたら、将来的な移植を見据えた親知らずの保存は、先進国でもメジャーな考えになりつつあるらしいとありました。べつに人がそういっていたからではなく、僕は開業当初からそうしてます。何気に世界の先端を行ってました。 インプラントの有用性、確実性がかなり認知されてきていますが、その前に奥に埋まってる親知らずは最高の自家製インプラントになりえます。隣の歯を削ってブリッジにしたり、違和感ある有床義歯にしなくてもすみますし、なにより普通の歯が復活するわけなんですから嬉しすぎる話です。 親知らずと聞いて、ああいやだと抜歯するのではなく、今はベンチでも将来レギュラーに昇格する可能性のある期待の星として、とりあえずそのままにしておくという手もありです。そういうことにならないのがベストなんですがね。 ※とはいえ、抜歯穴の状態、大きさ、位置、上の歯の状態、そして同じく入れる親知らずの健全度、大きさ、根の状態が申し分なく、歯周病もなく、安全に移植できる要件を満たさないとまずやりませんので、意外とハードルは高いかも・・・。 ですから、さすがにそう滅多にはないのですが、ここ一発移植行けるぞ!という選ばれた患者さんにはお勧めしています。親知らずも、そうそう捨てたものじゃないのですぜ。 |
■知覚過敏症−研磨剤非配合の歯磨き粉をお薦めします。 キーン!と歯頚部(付け根)が電撃的に滲みる象牙質知覚過敏症(Hys)。あまりの痛さに深い虫歯だと勘違いされてる方が多く、虫歯じゃないですと言うと意外そうである。 知覚過敏はかなり痛い。冷たいAIRや水、歯ブラシの接触で引き起こされ、疼痛の余韻がしばらく脳天に残ってつらい。ただ知覚過敏は、歯の硬組織疾患では唯一といっていいが、歯自体を削らないでもいじらないでも治せることが多い。それは患者さんも僕も嬉しいこと。僕はやたらに有限資源の天然歯を削りたくない。いきなり神経抜くなんて言語道断。神経殺せば一発で楽になるが、死んだ歯は脆くなり割れやすくなり変色する。将来の喪失リスクが増大する。実際そんなことしないでも治ることがほとんど。 結局アレは歯の歯肉との境目付近に象牙質が露出してしまい、C2症状を出しているわけで、その原因は歯磨剤を着けすぎた上での横磨きによる歯質の物理的磨耗というのが多い。歯磨粉に研磨剤が入っているタイプは、その効果で歯面がツルツルピカピカするが、あれは表面を削り取ってるんだから心したほうがよい。絶対に研磨剤非配合がお勧め。クリーム状でジャリジャリせず、違いは分かりやすい。ま、正しい方法でやれば、何もつけなくてもブラシング効果は同じですが、つけるんだったら研磨剤非配合をほんの少々で。 当院では長年知覚過敏の治しかたをあれこれ研究し、とりあえずたいがいのケースにおいて症状を何とか軽快させるメソッドはあります。まあケースバイケースではありますが。あの鋭い痛みから何とか脱出したいと願っていらっしゃる方に少しでも力になれれば、THE PAIN-BASTERS.INOSHITAにとって何より幸甚なことです。 |
■顎関節症とかみ合わせ 両方や片方の顎が痛くなったり、カクカク鳴ったり、口が開かなくなったりするいわゆる顎関節症という困った病気があります。これに関しては過去に歯医者が”悪いかみ合わせ”が原因だとして、さんざんいろんな治療法をまるで百鬼夜行のように試した時期がありました。いや、今でも懲りずにやっているところがあるかもしれない。 しかし、米国などでの研究により、TDM(顎関節の障害)の原因に”かみ合わせ”は関係ないよ、という学説が主流になるに至りました。あると思ったのは歯科医の一方的なる幻想だと。原因だと信じて疑らなかったものが、海の向こうでまったく関係ないということにされちゃったというコペルニクス的転回。かつて自信満々にかみ合わせが原因と言い切って、顎の不調で悩む患者さんの健康な歯を削りまくったり、超高額な治療を行って、かえって治るどころか悪化させ、口の中を取り返しのつかない状態にして、訴えられた同業者の風上にもおけないヤカラは枚挙に暇がありません。かみ合わせと関係ないのならば、やたらに歯をいじるべきではないでしょう。 もちろん、明らかに調和の取れていない銀歯とかがあれば、とりあえずはずしてみたりはするでしょうし、入れ歯が高すぎたり低すぎたりすれば調整するでしょう。しかしその程度の可逆的侵襲に限ります。健康で虫歯でもない歯の神経を抜いたり、そこまでいかなくても滲みるまで削ったり、どういった学問的裏づけや自信があるのか知りませんが、これはほとんど医療にかこつけた傷害に等しいのではないでしょうか。ましてや手術なんてことを言い出す怖い人たちも未だにいるようですが、顎関節のオペだけは絶対にしてはいけません。あそこは手をつけてはいけない聖域なのです。 オリジナルの天然の白い歯は、患者さんの宝です。可能な限り手をつけず保存すべきでしょう。 さらに、悪い咬合が、種々の病気や、慢性疾患、体の歪みや痛みの原因であるという、論理的にまったく弁証できない、非科学的なことを堂々と主張しているセンセイも未だ多くいらっしゃいますね。たしかに少しは関係あるかもしれません、が、まったくないかもしれない。医学的に論理的に証明できないのなら、それはもう民間療法、信仰と一緒です。よく合った入れ歯を作ったら、肩こりが治った、耳鳴りがしなくなった、以前より元気になった・・・これはよくあることです。でもそれは、結果そうなっただけ。逆に肩こり、耳鳴りの原因はすべて噛み合わせだった・・とは絶対に証明できないのです。 ですから体の不調は噛み合わせを治せば改善する!なんて本がよくありますが、じゃあもしそれでよくならなかったら著者はどう責任とるのでしょうか?現場のリハビリや整形の先生を相手に、学会で論破できるだけの実証性を示して欲しいものですよ。つまり、そういうのは週刊誌の広告によくある、癌が消えるアガリクス、ほとんど香具師レベルのまったく医学的には実証されていない蝦蟇の油のようなものですからご注意を。 なら当院を訪れる、顎関節症の方にはどう対処してるか・・・そういう方にはご足労様ですが母校の顎関節専門外来に行って診ていただいています。ここは顎の関節のみを扱うプロの集団で、不具合の原因を歯ではなくさまざまな方向から綿密にアプローチして調べ上げ、改善策を立ててくれます。週1〜2人は紹介していますが、ほとんどは日常行っている生活習慣やクセ、姿勢、仕事や趣味の中に何か顎にストレスのある行為があるようで、それを改善していくことで大方症状が軽快していくようです。通院もそう頻繁ではないようです。うちとしても大切な患者さんを紹介するのですから、確実に治せる能力がないところには送れません。最近は長期のデンマーク留学から戻った、同期のクソ真面目で優秀なH先生がこの科に配属されたので、ますます大きな力を得た思いです。 |
■マウスガード 歯科医師会主催の学術講演・演題=スポーツ歯学の講演会を聞いた。演者はこのジャンルでの第一人者、東京歯科大学の教授(なぜか日大卒)。運動時・・とくにコンタクト・スポ−ツにおけるマウスガードについての必要性を述べておられた。驚愕したのは、その教室で試行錯誤を重ね、理論的に最善とされたマウスガードは、何と自分がいのした歯科で東芝府中のラグビー選手のために鋭意改良し完成、彼等に提供していたものとほとんど同じだったからで、自分の視点にたいへんな自信がついた。 なんといっても、僕はリング上でプロボクサーのパンチをさんざん被弾し、サッカーで頭部にヘディングや激しいチャージを受けてきた、いわばコンタクト・スポーツにおける半端じゃない衝撃を身をもって味わってきた男である。その体験を生かし、考え抜いて作られたマウスガードは、絶対に疑似体験では得られない、実戦で威力を発揮するものであると自負している。器械も作り方もプレートも調整もまったく理にかなっていたし、何より装着感が秀逸でプレーにマイナスの影響を極力与えないようにしてある。 スポーツマウスガードは、下顎から上顎への衝撃の伝達を緩衝し、脳震盪を予防することが、最大の存在理由である。格闘技における、パンチなどの衝撃や、ラグビーのモール、ラックにおける頭部への衝撃、サッカーのヘディングなどは、勝利のために闘う選手にとっては当然避けられぬもので、当然反復して脳はダメージを受けるため後遺症は深刻で、現役時や引退後に神経心理学的に病的状態に至る可能性がきわめて高いという。いちばんいいのは、そんな危険なスポーツはやめることだが、危険なスポーツ、カラダに悪いスポーツほどやってるほうも見てるほうも面白くてやめられないものなのだ(そういう意味では今、旬の本気系格闘技=K1、プライドなんかはマジでヤバすぎる!)。 そしてさらにマウスガードの効用として、精密器械のような顎の関節を衝撃から守り、また顎の骨折を予防する。さらに歯の外傷(折れたり、抜けたり)を防止し、そして口腔軟組織(唇、頬粘膜、舌、歯肉等)を保護できる。こうなると、マウスガードをしないで、頭部に衝撃を受ける可能性のあるスポーツをすることは、絶対に避けなければいけないという結論が導かれる。そして最近の研究では、そういうプロテクト関連の利点に加え、適切なマウスガードを入れることにより、最大筋力がアップし、精神的にもリラックスできて集中力も高まり、さらにバランスも向上するという一応まだ理論付けは解明されてはいないが、ほぼ確実に有意の差があるらしい。 実際、その医局では、スピードスケートの清水選手、岡崎選手。スプリント自転車競技。千葉ロッテマリーンズ、リコー・ラグビー部、市立船橋高校サッカー部、協栄ボクシングジム等とタイアップして彼等にマウスガードを提供しているということだ。(清水が世界記録を出したときに、そこのスペシャル・マウスガードを装着していたそうだ。) 使ってもらうマウスガードはキチッと噛み合って、違和感は最小限に抑えておかねば選手のパフォーマンスの障害になるし、もし入れることで少しでも精神的に乱れれば選手やコーチの信頼も失ってしまう。しかし、歯科医師がきちんどしたものをこしらえて、その有用性が一流選手によって証明されれば、マウスガードというものは一気に世間で当たり前のように使われていく、非常に将来性のある分野だ。しかも歯の治療に比べ、製作はそんなにむずかしいものではない。 脳や顎、歯を守り、さらにプレーのクオリティが上がるとなれば、どんなスポーツでも生かせるはずだ。なぜなら、ここ一番、食いしばらないスポーツはないはずだからだ。卓球、テニス、ゴルフ、投擲競技、射撃、アーチェリー、ソリ・・思いつくまま挙げたがすべてに使えるじゃないか!これから、マウスガード、絶対に来る!!間違いない!(講義で先生は、小学生のサッカーこそ絶対にマウスガードしたほうがいいとおっしゃっていました。お子さんがサッカーされている親御さん、力になりますよ!) 日本はまだまだスポーツマウスガードに対する意識が低いらしい。しかし、そのへんが向上していけば日本のアスリートたちのパフォーマンスアップに多大な貢献間違いなしで、アテネに続く北京五輪でも、日本選手の躍進の起爆剤となれるファクターとして将来性十分である。献金汚職問題で地に堕ちた歯科界のイメージを何とか失地回復できる可能性のある明るい分野なので、歯科医師はいつもの如くこれを軽薄にカネモウケの手段と考えず、有用性を慎重かつ上手に世に広汎流布していって欲しい。 |