原告側は原告本人2名及び代理人弁護士1名、被告側は被告本人が出廷した。被告は開廷時刻より少し遅れて入廷した。被告は本人訴訟である。
原告は訴状を陳述し、証拠(甲第1号証〜甲第3号証)を提出した。被告は答弁書を陳述した。但し、答弁書では認否を「追って主張する」としたのみで、明らかにしていなかった。裁判長は口頭での陳述が可能か尋ねたが、被告は「難しい」と回答した。このため、準備書面で認否と反論を提出することになる。被告は甲第3号証について裁判官に質問した。次回期日は10月22日13時20分からである。
被告の応訴態度として最悪の事例を挙げるならば東急不動産消費者契約法違反訴訟アルス東陽町301号室事件(平成17年(ワ)3018号)がある。
第一に東急不動産は弁護士を三人(井口寛二、野村幸代、上嶋法雄)も付していながら、第1回口頭弁論を欠席した。
第二に東急不動産の答弁書では認否を「追って主張する」とする。これは原告からすると肩透かしの印象を免れない。
東急不動産の裁判は消費者契約についての問題である。契約関係にあった当事者間の争いであり、相対的に事実認識の隔たりは少ない筈である。少なくとも不動産売買契約が存在したことや物件が引き渡されたことなどは争うような問題ではない。それらの認否さえ明らかにしなかった東急不動産は悪質である。
第三に認否は「請求の趣旨」に対して行うものだが、東急不動産の答弁書では何故か「請求の原因に対する認否」になっている。弁護士を三人も付している東急不動産の答弁書が、本人訴訟の被告作成の答弁書よりも、いい加減な形式であることは情けない限りである。
閉廷後に被告は傍聴人数名に「マスコミのみなさんへ」と題するA4版1枚のペーパーを配布した。このペーパーでは事件の概要及び取材の連絡先、被告の反論を掲載している。被告は第一回口頭弁論で認否を留保したが、本ペーパーから被告の主張を推測できる。
先ず問題の書き込みは被告本人ではなく、「私の事務所に来ていた人物が行った」と主張する。一方で「回線責任者」として全責任を負うと主張する。
被告の反論は3点である。簡略化された記述のため、真意を理解することは難しい。事件の当事者が陥りがちな罠だが、本人にとっては当然のことを省略しているため、他人からは分かりにくい。以下のように理解した。
第一に本件訴訟が原告の売名を目的としたものと主張する。原告がウェブサイトで「著名なインターネットプランナー「御堂岡啓昭」氏を訴えました」と殊更、著名な人物を訴えたと強調していることを根拠とする。
第二に書き込みに名誉毀損は存在しないと主張する。問題の書き込みはスレッドタイトルに対する返答だからとする。これは2通りの意味に解釈できる。
1、問題の書き込みはスレッドのタイトルを受けて「○○しているようですが、……」と書いたものであり、事実を断定していない。よって原告の社会的評価を低下させるものではない。
2、問題の書き込みは親スレッドを受けてのもので、親スレッドの記述を「○○しているようですが、……」となぞっただけである。原告の社会的評価が低下するとすれば、親スレッドが立てられた時点に低下している(当該スレッドは2008年9月17日も閲覧可能である)。よって、問題の書き込みは原告の社会的評価を低下させるものではない。但し、この主張は親スレッド自体を被告側の人間が立てていないことが前提である。
第三に問題の書き込みで書かれたのは原告吉本氏の氏名と、X2及び訴外第三者の氏名・住所である。このうち、訴外第三者の氏名・住所については原告が権利行使する性質のものではないと主張したいものと思われる。一方、原告吉本氏の氏名と、X2の氏名・住所については「私生活上の秘密ではなく、そもそも、前回の募金活動からと思われるが、広く流布していた情報」と主張する。
これらの主張が被告の準備書面に盛り込まれるならば、原告側としても再反論することになる筈で、これらが本訴訟の争点となると推測される。