北佐久郡軽井沢町立軽井沢病院で2003年10月、鈴木良恵さん=当時(32)=が出産後に大量出血し、転院先の病院で死亡した医療事故をめぐり、佐久検察審査会は19日までに、業務上過失致死容疑で書類送付され、地検佐久支部が嫌疑不十分で不起訴処分にした軽井沢病院の70代の担当医師(当時)について「不起訴不当」を議決した。
検察審査会は無作為で選ばれた市民で構成。佐久検察審査会の議決は16日付で、「出血原因の究明がされていない」「(検察官による)担当医師の供述録取がされていない」と指摘した上で、「起訴を相当とするまでの結論には達しがたいが、検察官の不起訴処分には納得できない」と結論づけた。
長野地検の高森高徳次席検事は19日、「検察審査会の指摘を受け再捜査をしている」と説明。来月5日午前零時で業務上過失致死罪の公訴時効(5年)が成立するため、再検討を急ぐ考えを示した。
良恵さんは03年10月4日、軽井沢病院で帝王切開手術を受けて長男を出産後、腹腔(ふくくう)内の出血により容体が急変、翌日未明に転院先で死亡した。遺族が担当医と町を相手に起こした民事訴訟では、担当医が出血の可能性を検討する注意義務を怠ったと認定され、町などに計約7200万円の賠償を命じた二審東京高裁判決が確定している。
一方、遺族は担当医と病院長、佐藤雅義・軽井沢町長に刑事責任があるとして告発。地検佐久支部は7月、「帝王切開後の縫合が不十分だったり、誤診による不適切な処置をしたりした証拠はない。異常な出血を予見できた可能性も認められない」などとして担当医を嫌疑不十分、同病院長と佐藤町長を嫌疑なしでそれぞれ不起訴処分とした。
今月上旬、同審査会に担当医の審査を申し立てた良恵さんの母美津子さんは、「民事訴訟を起こした時は『産婦人科医のなり手がなくなる』と批判され、(不起訴で)捜査機関も同調するのかと絶望していた。あきらめかけていたが、頑張ったかいがあった」と話した。
佐藤町長は「誠意をもって対応した上で起きてしまったことなので、(病院側に)問題はないと思っている」と話した。