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<大分教員汚職>処分教諭「申し訳ない」 記者の子の担任

9月13日20時23分配信 毎日新聞


 大分県の教員採用汚職事件で、今春採用された小中高校の教員のうち、県教委が不正合格と認定して退職や取り消し処分となった20人(既に退職した1人を除く)のうち1人は、佐伯市内の小学校に通う私の次男の担任だった。「申し訳ありません。ただ、信じてほしい。私は(不正を)一切知らない」。学校での保護者会でそう声を絞り出した担任を見て、事件の引き起こした罪深さを改めて感じた。【佐伯通信部・古田健治】

 次男が通う小学校では6日夜、学級の緊急保護者会があり、私も出席した。県教委職員、校長、そして担任の20代男性の姿もあった。担任は精神的に参り、疲れ切った様子で、終始うつむいていた。

 「このような事態になり申し訳ありません。ただ、信じてほしい。私は一切知らない」

 父親は大工。母親は祖父母の介護をしているという。「(周囲に)教育関係者はいない。私に身に覚えはないし、家族にも親類にもない」

 8月29日夕に校長から呼び出しを受け「不正」の話を聞いた。「何がなんだか、どうなったのか」。頭が混乱した。「小さいころからなりたいと思っていた天職を奪われ、死ぬしかない」と思った。翌日、父母に会った。「学校に迷惑かけたらいかんぞ」。父母は泣きながら叫んだ。2人に手を握られたまま、翌朝を迎えたという。

 一方、保護者会で県教委職員は「(採用試験の点数を改ざんした)県教委事務局職員に100%瑕疵(かし)がある。人生をもてあそんだ教育行政を反省している」と話した。ならば、なぜ今回の処分となったのか。

 この職員は「誰がどの段階で口利きしたかのルートは解明されていないが、試験の結果に公平、公正さが欠け、本来通っていた者が落ち、落ちていた者が受かったならば、口利きルートにかかわらず無効になる」と説明した。一方、ルートの解明は、4日始まった事件の公判でも焦点の一つとなっている。担任と県教委の言い分を聞いていて、私には「県教委の説明は筋が通っていない」と思えた。

 担任は「こんな中途半端なところで子どもたちと離れるのが悔しい」と、学年末まで臨時講師として残る道を選んだ。退職願を出さず、採用取り消し処分となったのは、県教委へのせめてもの「反抗」の意思表示だろう。

 保護者会では「普段通り(教壇に)立てるか自信がない」と話していた担任。だが、取り消し処分の辞令交付があった8日の授業前には、息子の学級で「こんなことに巻き込ませてごめんなさい」とわびた上、こう話したという。「みんなが先生として迎えてくれるのなら頑張る」。帰宅後「先生は大きな声で、いつも通り元気だった」と言った次男の言葉が救いだ。

 20人もの「犠牲者」を出した汚職事件。事件の舞台となった佐伯市では起訴や懲戒免職で一時5人の校長や教頭が不在となった。学校現場では当分の間、本人と子どもたち、そして保護者らの間で、ぎくしゃくとした状態が続くかもしれない。現場を混乱に陥れた県教委の罪は深い。

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最終更新:9月13日20時34分

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