社 説

「汚染米」問題/農水省の姿勢厳しく検証を

 汚染米の転売問題で、農林水産省はおととい、流通先リストの公表に踏み切るとともに、再発防止策をまとめた。
 リストの公表は消費者保護の観点から当然だろう。ただ、いきなりの公表に風評被害を恐れる流通先の業者からは「こちらは被害者。汚染米転売業者の不正を見抜けなかった政府の責任は棚に上げて…」といった怒りの声が上がる。これも当然だ。

 汚染米転売業者の行為は言語道断だ。が、不正を見逃し、食の根幹であるコメの安全性を揺るがす事態を招いた農水省の責任は厳しく問われるべきだ。
 政府は法曹関係者や消費者団体代表らによる第三者委員会を設け、汚染米に関する業務全般について検証するという。不正を摘発できず結果的に被害を拡大させた農水省の体質を徹底的に点検してもらいたい。

 再発防止策には、政府による汚染米の販売を中止すること、輸入検疫で基準値を超す農薬が検出されたコメは輸出国に返却するか焼却・廃棄処分にすることが盛り込まれた。いまさら、ではある。が、これで汚染米の流通は元から絶たれる。
 農薬やカビ毒による汚染米はウルグアイ・ラウンド合意で輸入が義務づけられた「ミニマムアクセス米」の一部だ。それが輸出国に返送されず廃棄もされず、なぜ工業用などという用途名目で売却されてきたのか。

 想像するに「非食用とはいえ、これで輸入枠を消化でき義務を果たせる」「税金で買ったのだから、廃棄すれば批判を浴びかねない」といった思惑からか。
 いずれにしても、汚染米という「厄介もの」を引き取ってくれる米穀関連業者は、農水省にとって都合のよい存在だったに違いない。そこに業者寄りの姿勢、もたれ合いが生まれたとしても不思議はない。

 既に明らかなように、不正転売業者に対し農水省はあらかじめ日時を連絡して立ち入り調査していた。検査は形骸(けいがい)化し、長く不正を把握できなかった。汚染米の売買を担当する大阪農政事務所の元課長は、転売業者から飲食店で接待を受けていた。
 そうした業者との癒着ぶりも、あぶり出してほしい。そこからは「消費者重視」を掲げながら、依然として「業者重視」から抜け出せない農水省の姿勢も浮き彫りとなろう。

 確かに食の安全を確立するためには縦割り行政の弊害をなくすことも必要だ。今回も輸入検疫や食品衛生法を所管する厚生労働省などとの連携が不十分で、対応も後手に回った。
 福田康夫首相は消費者庁設置に向けたテストケースとして、この問題に迅速に対応するよう、野田聖子消費者行政担当相に情報を一元化するよう命じた。農水省は頼りにならないと首相自らが認めたようなものだ。

 国会はきょう、参院で閉会中審査を行い、不正転売問題を集中審議する。この議論も踏まえ、政府は総力を挙げて、農水省の責任を明らかにし、食の安全を脅かす事態の再発防止を抜本的に図らなければ、消費者から信頼は得られないだろう。
2008年09月18日木曜日